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ラブコメ短編バージョン(※長編版とは展開が異なります)

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 ひぅッ!?

 口内にヌルリと侵入してきた感触に驚いて、思わず目を見開いてしまった。
 すると目の前の近すぎる距離に、瞳を閉じた殿下の長い睫毛。

 殿下が、こんなに、そばに!

 ドキッと心臓が飛び出そうになり、慌てて目を閉じる。

 と、いうことは、これ……
 殿下の、舌、ですか……?
 どうしてですか、殿下、舌なんて……

「んン!?」

 し、舌先、レロレロされてる!?

 なんか、背中が、ゾクゾク、するっ

 殿下、舌は、味を感じたりして、食べ物を美味しく食べるためにある器官ですっ
 使い方、間違ってますっっ

 っ!?
 や、うそ、絡まってきた!?

「んン……ムぅ……ん……」

 や、ダメ、吸っちゃ、ダメ!
 美味しくありませんから、私の舌なんて、食べようとしないでください、殿下っ

 背中だけじゃなくて、身体中がゾクゾクして、寒くないのに、身体が小さく震えているような。

 未知の感覚で不安になり、自分のいる世界を確認したくてゆっくりと目を開ける。
 さっきは閉じていた殿下の瞳。
 それなのに今は開いていて、殿下と目が合ってしまった。

 あ……

 瞳しか見えないのに、目が合った瞬間、殿下が嬉しそうに微笑んだのがわかった。
 恥ずかしすぎて、反射的に目を閉じる。

 でも目を閉じたら、口内を余すところなく這っていく殿下の舌の動きを敏感に感じとってしまって。
 再び舌をヌルリと絡められると、舌とは遠いところの下腹部が、なぜかズクリと疼いた。

 私の舌を思う存分舐め回してから、ようやく遠ざかっていった殿下の舌。

 激しく動いたわけでもないのに、身体が熱くて、呼吸が苦しい。
 まるで息の仕方を忘れてしまったかのように、浅い呼吸しかできない。

 キスって、こんなに、凄いものなの……?

「ネイブルがするように、こんな感じで強引にされるのが好きなのか、ミーネ?」

 ネイブルがするように、も何も……。

「殿下、ネイブルとは、キスなんてしたこと、ありません……」
「ネイブルでは、ない……? では誰だ?」

 教えてくれミーネ、と殿下が顔のすぐそばで囁いた。
 殿下の吐く息がくすぐったくて、ドキドキしてしまう。

「あの、殿下、そんなに近くで話さないでください……」
「俺は近くで話してはダメなのか? 前にタジェロンとは顔を寄せ合って話していただろう?」

 前に、タジェロン様と……?
 もしかして、勉強を教えてもらっていた時のことですか、殿下?
 確か学園に一冊しかない貴重な文献をタジェロン様とふたりで見ながら勉強していたから、顔を寄せ合って話していたと言われればそう見えたのかもしれない。

 将来殿下のお役に立ちたくて、私が通っていた当時学園一の秀才でこの国の宰相のご子息でもあるタジェロン様に勉強を教わったことがある。
 学園に通っていた時に、たった一度だけ。

 その場を見た殿下に「将来のために俺も学ばなければ。ミーネには俺がタジェロンから学んだことを噛み砕いて教えよう、そうすれば俺も学んだことが身につくから」と言われ、それ以降はタジェロン様から直接勉強を教わったことはない。

 勉強熱心な殿下は、学園を卒業する頃にはタジェロン様と政治経済歴史などあらゆる分野で互角に語り合えるようになっていた。
 同級生だった殿下とタジェロン様は、今も切磋琢磨しあう仲であり友人でもある。




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