スパダリ伯爵様のため美少女となって魔界征服します

みずほ

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第4章 少女編 9才〜12才

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「結果は、この通りです。いずれは調べなくてはいけませんでした。それはレイン様、あなたにも分かっていたことでしょう」

「……なんてことだ」

「彼女を魔法学校へ入れるのはどうでしょう。魔法の基礎から教えてくれます。何より彼女は魔法を学びたがっている」

「だめだ、リリアは魔法や争いの類とは程遠い世界で生きていくんだ」

「しかし、これだけ魔法の素質があって、彼女もやる気があるのに。これじゃリリアが可哀想です!」

 珍しく声を荒げるルイスに、横からギルも口を挟む。

「レイン様、悪いが俺もそう思うぜ。彼女は魔法だけじゃなく、剣術も学びたがってる。誰かに嫁がされるのは絶対嫌なんだってよ」

 ここからは会話しか聞こえない。皆の表情も窺い知ることもできない。だけど不穏な雰囲気が更に悪化していることは声の変化から感じ取れた。

 2人に説得されて、レイン様の気持ちは変わってくれるか。どうしよう、私に何かできることは、

 その瞬間、ぐっと、更に重みを増す魔素。変わってくれる?私にできること?とんでもない。

 ーーめちゃくちゃ怒ってる……っ。

 思わず両手を床へついてその衝撃に耐える。酸素が薄い、嫌な汗が全身から吹き出す。すでに、ナンシーは気を失ってしまった。自分の体に溜め込んだ魔素を体内に覆ってバリアを張る。なんとかこれで凌げるだろうか。


「レイン様、いえ、レイン、それわざとですね。それ以上はやめて下さい。私やギルは良いが、他の皆の体に障る」

「なに、普段抑えているものを出しただけだ。城主の俺が窮屈な思いをしているのはおかしいだろう」

 何、一体広間で何が起きてるの?!はぁはぁと息を荒げながら、なんとか意識を繋ぎ止める。
 しかし、それも無駄な抵抗だと言わんばかりに、


「それに言うことを聞けない悪い子に育てた覚えはないんだがな、」

「「レイン!」」

 2人の叫び声が重なって、広間に響く。

「え?」

 与えられたのは一瞬。頭の中に疑問符だけ浮かばせることだけ許される。次の瞬間、自分の意識と体は恐怖に支配されることとなる。




「なぁ、リリア」

 ブワッと鳥肌が立つ。姿形はレイン様なのに、纏う雰囲気がいつもとはまるで違う。禍々しい何かが自分の目の前に現れる。

「い、いや、やめて近寄らないで」

 何をされた訳でもない、ただそこに存在しているだけで、まるで自分の命を掌握されているような感覚。全く未知で恐ろしい感覚に、涙がボロボロ溢れてきた。体ががくがくと震えて、魔素のバリアもどきもはれなくなる。

「リリアを怖がらせるな」

 ルイスとギルが、私を守るようにレイン様の前へ立ちはだかる。

「おかしいな、お前達は、もっと恐ろしい争いにリリアを巻き込もうとしているのに」

「そうですが、リリアはまだ9才ですよ!魔素の扱いを覚えてまだ間もない。あなたの素の姿にはとても耐えられない。一体そうまでして、リリアに何をしようと、」

 はっとしたようにルイスが更に大きな声を出す。

「まさか?!」

 そんなルイスの様子にギルももどかしいようで、口調が荒くなった。

「なんだよ、ルイス!はっきり言え!」

「この人は、リリアから魔法を奪うつもりだ」

「あぁ。魔法を奪い、魔法に関する記憶を全て消す」


 ……魔法を奪う、記憶を消す?
 いやだ、そんなの絶対嫌だ。

 遠くで、ルイスの叫ぶ声が聞こえる。あぁ、もうだめだ、とその場にへたり込もうとした時、



 真っ黒になったフィーが視界に飛び込んできた。


『ねぇ、リリア、こんなお城出て行っちゃいましょうよ』

 夢なんだろうか、フィーの声が聞こえる。それに苦しくないし、まとわりつく恐怖からも解放されてなんだか清々しい気分。

『フィー?あなた喋れるの?』

『そんなこと今はどうだっていいわ。あの人あなたのこと全然分かってないのね。こんなに素晴らしいものを持っているのに』

『そうなの、私は強い魔法を覚えてレイン様の役に立ちたいのに。分かってくれないの』

『あなたを理解してくれる人は、ちゃんと他にいる。ついてきて!』

 目の前に、ドンっと現れたキラキラした金属製のドア。ドアの縁には繊細な細工が施されている。赤色に輝いているのは宝石だろうか。

 ドアが開くと一本の光の線が奥へさぁーっと広がっていく。まるで道標のように。

 さぁ、おいで!と言うフィーの声に導かれるまま、ドアの中へ入ろうとする。

「いけない、リリア!」

 レイン様の叫び声が聞こえて振り向こうとした時、私はすでにドアの中の世界に入ってしまっていた。そして、ドアは勢い良くバタンと締め切られた。
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