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第4章 少女編 9才〜12才
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ルイスはなんだか複雑そうな顔をしていた。私に力があったことを信じたくないような。辛いような、悲しいような。
私は正直、嬉しいと思ってしまった。魔素の鍛錬は無駄じゃなかったって、私もこれで一緒に戦えるって。ルイスも心のどこかで喜んでくれるかも、なんて思ったがそれとは程遠い暗い表情。
「最後の一言は、どうかレイン様にはご内密に」
そう言うと静かに、城の中へ戻っていった。いつもみたいに別れ際に私の頭に手を置いたりしない。彼の中で私は、自分より年上の女性と認識され始めているのか。
真面目で礼儀を重んじるルイスらしいと思ったが、同時に少し寂しく感じた。
「なぜ、城内に闇魔法の痕跡がある?」
夜、レイン様が城へ帰ってきて早々に眉を顰める。
「ルイス!どういうことだ!」
闇魔法、といえば犯人は1人しかいない。ルイスはレイン様の前で膝まづいた。何も弁解の余地はないと、無言のまま。
慌てて、そんなルイスの元へ駆け寄っていく。
「違うの、私がルイスに魔法をおしえてとわがままをいったから。ルイスは、わるくないの」
今にも泣きそうな私だが、レイン様は怒りがおさまる様子はない。
「ナンシー、リリアを部屋へ連れて行って、盗み聞きしないよう見張っていろ」
「はい」
心配そうに様子を見ていたナンシーを呼びつけ、私をこの場から離そうとする。
ナンシーは指示通り、私の手を引っ張り部屋へ連れて行く。その途中、小さな声でナンシーにお願いした。
「ナンシー、お願い。ルイスに何かあったら、とめられるのはわたしだけ」
レイン様の指示とはいえ、怒られているルイスも心配なナンシーは動揺している。
「レイン様があれだけ怒るなんて、一体何があったんですか?幼い頃、リリアが属性魔法を見せた時以来……」
「また魔法を使ってしまったの、属性魔法とは他の」
「まさか、その闇魔法を使ったのあなただというのっ?」
驚いて大きな声を出すナンシーの声に、すかさず、しー!と自分の口元で人差し指をたてる。
これは只事ではない、とレイン様があれだけ怒る理由を理解したナンシー。
そのまま2人で部屋へ行き、ドアを開け閉めする音だけさせて、また広間の会話が聞こえるところで聞く耳をたてる。
「俺が怒ることを承知でやったのだろう。闇魔法の痕跡上手く隠してるつもりだろうが、匂いで分かる」
「はい、私もあなた相手に隠し通すのは無理だと思っていました。それを覚悟でリリアの適性を調べました」
「リリアが使ったのか!」
怒りに反応して辺り一帯の魔素がぐっと重みを増す。ある程度魔素を扱う私やルイスにはさほど影響はないが、ナンシーは具合が悪そうにその場へへたり込み壁へもたれかかった。
私もいつも魔素を扱う訓練をしているとはいえ、これだけの重苦しい魔素は初めてだ。結界外の森や魔素風呂とはまた違う。
身の毛がよだつような禍々しさに、思わず身震いする。そして、涙目で実感する。これがレイン様の魔素だ、と。自然の魔素は気持ち良くてぐんぐん吸収できたのに、これは違う。
まるで人から出てているものとは思えない。息が苦しい。
しかし、私達とは逆にイキイキとしているフィー。この状況にも関わらず、くるくる踊ってみせる。
息苦しそうなナンシーの手を掴んで、体内の魔素をフィーへ移す。いつもやってる魔素の循環の応用だ。ナンシーから、自分の手を介してフィーへ移動させるイメージ。
しかし、フィーの白い体がだんだん灰色になり、ピンク色のスカートが黒っぽく染まっていく。
「フィー、あなた大丈夫なの?」
心配になって尋ねると、いつもと変わらず、にこっと邪気のない笑みをむける。
しかし、今はこれしか方法はない。そのままナンシーを苦しめる魔素を取り除くことに集中した。
完全にレイン様の魔素にあてられて参っている私達だったが、広間での会話は続いている。
私は正直、嬉しいと思ってしまった。魔素の鍛錬は無駄じゃなかったって、私もこれで一緒に戦えるって。ルイスも心のどこかで喜んでくれるかも、なんて思ったがそれとは程遠い暗い表情。
「最後の一言は、どうかレイン様にはご内密に」
そう言うと静かに、城の中へ戻っていった。いつもみたいに別れ際に私の頭に手を置いたりしない。彼の中で私は、自分より年上の女性と認識され始めているのか。
真面目で礼儀を重んじるルイスらしいと思ったが、同時に少し寂しく感じた。
「なぜ、城内に闇魔法の痕跡がある?」
夜、レイン様が城へ帰ってきて早々に眉を顰める。
「ルイス!どういうことだ!」
闇魔法、といえば犯人は1人しかいない。ルイスはレイン様の前で膝まづいた。何も弁解の余地はないと、無言のまま。
慌てて、そんなルイスの元へ駆け寄っていく。
「違うの、私がルイスに魔法をおしえてとわがままをいったから。ルイスは、わるくないの」
今にも泣きそうな私だが、レイン様は怒りがおさまる様子はない。
「ナンシー、リリアを部屋へ連れて行って、盗み聞きしないよう見張っていろ」
「はい」
心配そうに様子を見ていたナンシーを呼びつけ、私をこの場から離そうとする。
ナンシーは指示通り、私の手を引っ張り部屋へ連れて行く。その途中、小さな声でナンシーにお願いした。
「ナンシー、お願い。ルイスに何かあったら、とめられるのはわたしだけ」
レイン様の指示とはいえ、怒られているルイスも心配なナンシーは動揺している。
「レイン様があれだけ怒るなんて、一体何があったんですか?幼い頃、リリアが属性魔法を見せた時以来……」
「また魔法を使ってしまったの、属性魔法とは他の」
「まさか、その闇魔法を使ったのあなただというのっ?」
驚いて大きな声を出すナンシーの声に、すかさず、しー!と自分の口元で人差し指をたてる。
これは只事ではない、とレイン様があれだけ怒る理由を理解したナンシー。
そのまま2人で部屋へ行き、ドアを開け閉めする音だけさせて、また広間の会話が聞こえるところで聞く耳をたてる。
「俺が怒ることを承知でやったのだろう。闇魔法の痕跡上手く隠してるつもりだろうが、匂いで分かる」
「はい、私もあなた相手に隠し通すのは無理だと思っていました。それを覚悟でリリアの適性を調べました」
「リリアが使ったのか!」
怒りに反応して辺り一帯の魔素がぐっと重みを増す。ある程度魔素を扱う私やルイスにはさほど影響はないが、ナンシーは具合が悪そうにその場へへたり込み壁へもたれかかった。
私もいつも魔素を扱う訓練をしているとはいえ、これだけの重苦しい魔素は初めてだ。結界外の森や魔素風呂とはまた違う。
身の毛がよだつような禍々しさに、思わず身震いする。そして、涙目で実感する。これがレイン様の魔素だ、と。自然の魔素は気持ち良くてぐんぐん吸収できたのに、これは違う。
まるで人から出てているものとは思えない。息が苦しい。
しかし、私達とは逆にイキイキとしているフィー。この状況にも関わらず、くるくる踊ってみせる。
息苦しそうなナンシーの手を掴んで、体内の魔素をフィーへ移す。いつもやってる魔素の循環の応用だ。ナンシーから、自分の手を介してフィーへ移動させるイメージ。
しかし、フィーの白い体がだんだん灰色になり、ピンク色のスカートが黒っぽく染まっていく。
「フィー、あなた大丈夫なの?」
心配になって尋ねると、いつもと変わらず、にこっと邪気のない笑みをむける。
しかし、今はこれしか方法はない。そのままナンシーを苦しめる魔素を取り除くことに集中した。
完全にレイン様の魔素にあてられて参っている私達だったが、広間での会話は続いている。
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