20 / 21
第4章 少女編 9才〜12才
5
しおりを挟む
眩しい位の白金の世界。時空が捻じ曲がるように、背景がグラグラ歪んで見える。様々な形をしたドアが無造作に空間へ浮かんでいる。
そこの一つのドアの上に腰掛け、私を見下ろす人物。薄い黄緑色の髪に、中世的な容姿。背格好から少年のようにも見える。
「初めまして、僕はリンクだよ。君に会えるのをずっと楽しみにしていたんだ」
にこっと笑って、乗っていたドアからすっと降りてくると私と同じ目線に立つ。
「は、初めまして、リリアと言います。ここはどこなんですか?」
「この空間はね、僕の宝箱みたいな空間で僕が気に入ったものしか入れないんだ。君をここにお招きしたのは、僕の知らない世界の匂いがするから。君が現れてから、ずっと狙っていたんだよ」
狙っていた?
物騒な物言いに不安になる。
逃げるように軽率にドアの中へ入ってきてしまったが、城にまた戻れるんだろうか?
そして、この人は一体誰なの?フィーはどこへ行ってしまったの?
きょろきょろ辺りを見渡す私に、リンクという人はお構いなく話し続ける。
「だけどさ、あいつってば君を上手にいつも隠すんだ。本当嫌になっちゃうよね。君が大事なのは分かるけど、独り占めしようなんてさ」
「それに君の希少な記憶を消しちゃうって言うじゃないか。だから、慌てて君を攫ってきたのさ。あのいざこざに便乗してね」
「僕に教えて欲しいな。君の知ってる世界のことを。僕、あそこと繋がるドアが欲しいんだ」
金色の瞳がギラっと光る。何か強い欲望をはらんだ目。
狼狽えていると白く戻ったフィーが、また私の目の前に戻ってきた。
「あぁ、良かった。フィー、白く戻ったんだね」
フィーに触れようとすると、それどころではないという様子で顔をブンブン振って私の手を一生懸命引っ張る。まるでここにいてはいけないと言っているみたいに。
「あれ?喋れなくなっちゃったの?」
フィーとやり取りしてると、リンクがフィーを見て言う。
「あぁ、ドアの鍵に使ったやつか」
「この妖精が見えるの?」
「もちろん!可愛い妖精さんだねぇ」
にこっとまた笑う。フィーが見えるということは、この人は悪い人ではないのかもしれない。いや、しかし。
とっても可愛らしい少年にしか見えないんだけど、溢れ出る隠しきれない薄っぺらい感じが警鐘を鳴らす。
直感で彼が欲する情報を与えてはいけない気がした。
しかし抵抗するにも、彼の力は未知数だし自分は無力過ぎる。ここはしらをきって、なんとしてでも城へ帰らなくては。
あ、そうだ!
「すいません、確かに異世界から来たようなのですが前の世界にいた時の記憶がさっぱりなくて。なので、私があなたに教えられるような特別な知識はありません。ということで、お城へ帰して下さい」
そう言ってぺこりと頭を下げる。うぅー、即興の嘘だが通用してくれー、と念じながら。
「ごめんね、この世界では嘘は通用しないんだ。ちゃんとそこにあることは、もう分かっているんだ」
私の頭を指してそう言う。あることは分かっても、私が言わない限りは知ることはできない。
つまり喋らない限りは、私の命は保証される。
頑なに口を割ろうとしない私に、はぁと深いため息をついた。
「彼らの助けを期待したって無駄だよ」
「え?」
「ここは僕が作り出した空間だと言ったろ?僕が許さない限り、なんぴとたりとも立ち入ることはできないし。逆も然り。つまり君が出たいと行っても、僕が許さない限り出られないってことだよ」
そこの一つのドアの上に腰掛け、私を見下ろす人物。薄い黄緑色の髪に、中世的な容姿。背格好から少年のようにも見える。
「初めまして、僕はリンクだよ。君に会えるのをずっと楽しみにしていたんだ」
にこっと笑って、乗っていたドアからすっと降りてくると私と同じ目線に立つ。
「は、初めまして、リリアと言います。ここはどこなんですか?」
「この空間はね、僕の宝箱みたいな空間で僕が気に入ったものしか入れないんだ。君をここにお招きしたのは、僕の知らない世界の匂いがするから。君が現れてから、ずっと狙っていたんだよ」
狙っていた?
物騒な物言いに不安になる。
逃げるように軽率にドアの中へ入ってきてしまったが、城にまた戻れるんだろうか?
そして、この人は一体誰なの?フィーはどこへ行ってしまったの?
きょろきょろ辺りを見渡す私に、リンクという人はお構いなく話し続ける。
「だけどさ、あいつってば君を上手にいつも隠すんだ。本当嫌になっちゃうよね。君が大事なのは分かるけど、独り占めしようなんてさ」
「それに君の希少な記憶を消しちゃうって言うじゃないか。だから、慌てて君を攫ってきたのさ。あのいざこざに便乗してね」
「僕に教えて欲しいな。君の知ってる世界のことを。僕、あそこと繋がるドアが欲しいんだ」
金色の瞳がギラっと光る。何か強い欲望をはらんだ目。
狼狽えていると白く戻ったフィーが、また私の目の前に戻ってきた。
「あぁ、良かった。フィー、白く戻ったんだね」
フィーに触れようとすると、それどころではないという様子で顔をブンブン振って私の手を一生懸命引っ張る。まるでここにいてはいけないと言っているみたいに。
「あれ?喋れなくなっちゃったの?」
フィーとやり取りしてると、リンクがフィーを見て言う。
「あぁ、ドアの鍵に使ったやつか」
「この妖精が見えるの?」
「もちろん!可愛い妖精さんだねぇ」
にこっとまた笑う。フィーが見えるということは、この人は悪い人ではないのかもしれない。いや、しかし。
とっても可愛らしい少年にしか見えないんだけど、溢れ出る隠しきれない薄っぺらい感じが警鐘を鳴らす。
直感で彼が欲する情報を与えてはいけない気がした。
しかし抵抗するにも、彼の力は未知数だし自分は無力過ぎる。ここはしらをきって、なんとしてでも城へ帰らなくては。
あ、そうだ!
「すいません、確かに異世界から来たようなのですが前の世界にいた時の記憶がさっぱりなくて。なので、私があなたに教えられるような特別な知識はありません。ということで、お城へ帰して下さい」
そう言ってぺこりと頭を下げる。うぅー、即興の嘘だが通用してくれー、と念じながら。
「ごめんね、この世界では嘘は通用しないんだ。ちゃんとそこにあることは、もう分かっているんだ」
私の頭を指してそう言う。あることは分かっても、私が言わない限りは知ることはできない。
つまり喋らない限りは、私の命は保証される。
頑なに口を割ろうとしない私に、はぁと深いため息をついた。
「彼らの助けを期待したって無駄だよ」
「え?」
「ここは僕が作り出した空間だと言ったろ?僕が許さない限り、なんぴとたりとも立ち入ることはできないし。逆も然り。つまり君が出たいと行っても、僕が許さない限り出られないってことだよ」
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】平民聖女の愛と夢
ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる