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しおりを挟む予想すらしていなかった言葉に、央樹が驚いて固まる。なんと答えたらいいのか分からず黙っていると、和翔が小さく笑った。
「突然の告白で驚かれるのは分かります。でも、これが私の本音です。自分には逆立ちしても敵わないような、可愛らしい女性ならばよかったのですが……」
「……と言っても、血の繋がった兄弟、ですよね……?」
兄弟をパートナーにしてはいけないということはない。ただ、そうする者はとても少ないだろう。
「そうです。ですが、暁翔が時折見せるDomの顔にぞくぞくしていました。でも、同時に叶わない願いだとも知っていました。同性だから、暁翔よりも年上だから、と色んな理由を付けて諦めていた。でも、あなたでいいなら、私でもいいのではないかと思ってしまったんです」
その気持ちは分からなくもない。確かに年齢も性別も和翔とはおなじだ。央樹が良くて、和翔がダメな理由が思い浮かばなくなったのだろう。
「そんなことは……」
「暁翔と離れて暮らしていたのは、そんな気持ちを捨てるためでした。なのに暁翔とあなたを見ていたら、気持ちがどんどん蘇ってきて……暁翔の為にも、暁翔とパートナーを解消してもらえませんか?」
何を言っているのか分からなかった。自分が暁翔から離れたからといって、和翔が受け入れられるなんて保証はない。それに、確かに和翔と自分は重なる部分があるが、絶対的に違うことがある。
「……パートナーになろうと言ったのは、暁翔くんの方です。暁翔くんの気持ちがあったからこそ、僕は彼のパートナーになれているんです。誰かに決められてなったわけではない……望んで、一緒に居るんです」
央樹を好きだと言ってくれた。パートナーになりたいと望んでくれた。だからこそ、今の自分がある。
「だったら……暁翔が解消しようと言ったら、あなたは暁翔から離れるんですか?」
和翔がまっすぐにこちらを見つめる。
「それは……」
央樹がそう口にした時だった。央樹さん、と名前を呼ばれ、央樹が振り返る。そこには、こちらに歩み寄る暁翔の姿があった。
「……結城……」
「いつの間にか兄さんが出掛けてて、なんとなく嫌な予感がしてアプリ開いたら央樹さんが移動してて……来てよかった」
傍に寄った暁翔が、和翔に眇めた目を向ける。その様子に、央樹は、待ってくれ、と暁翔を見上げた。
「お兄さんと話をしていただけだ。他には何もない」
「……本当ですか? 兄が、また『別れろ』とか言ってませんでしたか?」
「いや、それは……」
央樹が言葉を濁すと暁翔が察したのか、兄さん、と低い声で咎める。央樹は立ち上がると、結城、とその手を握った。
「少し、外で待っててくれないか。ちゃんと、お兄さんと話して、すぐに行く」
央樹が暁翔の目を見つめ言うと、暁翔はそれに静かに頷いた。
「……分かりました。待ってます」
暁翔が頷き、ゆっくりと央樹の手を離す。央樹はそれに頷き、微笑んだ。その場を離れる暁翔を見送ってから、央樹が椅子に座り直す。
「さっきの答えですけど……」
央樹が和翔に視線を合わせる。和翔の方がにわかに緊張した顔をしていた。
「もし、暁翔くんがパートナーを解消しようと言っても、僕は同意しません。常に、彼にとって最高のパートナーで居続けられるように、努力するだけです」
央樹ははっきりと告げると、そのまま席を立った。足早に店を出て、辺りを見回すと、傍の壁にもたれ、不機嫌に立っている暁翔を見つけた。目が合うと少し情けない顔になる。
「兄に、何を言われましたか?」
「……何も。ただ少し、話をしただけだ」
央樹が笑顔を向けると暁翔は疑うような目を向けたが、結局、そうですか、とだけ口にした。
「……央樹さん、部屋に、行ってもいいですか?」
「ああ、もちろん」
微笑むと、暁翔がようやくほっとしたような笑顔を向け、頷いた。
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