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4・初めての国内視察

4-39・母と話す②

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 だからティアリィは特に断る理由もなく頷いた。
 たまにはいいか。そう思ったからだった。

「よかった! なら……そうねぇ、ここでは落ち着かないだろうし、応接室に移動しましょうか」

 華やかに提案されたので逆らわず、母の後に着いて移動する。
 母は身長もルーファとほぼ同じ。
 別に長身と言うわけではないけれど、流石にそれよりは背の高いティアリィからは、ほんの僅かだけ見降ろす形となった。
 一応、男性としておかしくない程度にはティアリィだって身長は高いのだ。……――周囲にティアリィより小柄な男性など、ほとんど存在していないけれども。周囲が皆、高身長なだけである。
 決して大柄ではなく細身と言える、ティアリィの伴侶であるミスティでさえ、ティアリィより背が高い。ちなみにティアリィ自身はミスティより更に細身で、細さだけなら女性と遜色ないぐらいだった。勿論、バランスが悪いだとかいうこともなく、絶妙な美しさを誇っている。
 ただ、骨格がミスティと比べると華奢と言えるだけなのだろう。
 何処か女性的なまでにほっそりとした肢体は儚く美しい。
 実はティアリィは容姿の良さで、それなりに周囲を惹きつけているのだが、恐ろしいことにそんな自覚は一切なかった。
 勿論、容姿は良い方なのだろうというぐらい、自覚はしている。ただ、その容姿が良い方どころではなく、並ぶ者がないほどの美を他者に与えているなどとは夢にも思っていない程度には鈍かった。
 これは周囲に同じく見目の良いアルフェスやミスティ、それにティアリィ自身とほとんど同じ顔をしてるルーファしかいなかった弊害と言えるだろう。
 ティアリィは自分を特別だなどとは思わずに育ったのである。
 そのような事実はさておき、前を歩く母は特に機嫌が良くも悪くもなく、非常に自然体な様子で、ティアリィの私室からもほど近い場所にある一室へとティアリィを案内した。
 部屋に入って、促されるまま向かい合わせになった席に腰掛ける。
 母は慣れた様子で侍女を呼び、お茶を用意させていた。
 この辺り、例えばティアリィなら自分で用意してしまうのだが、母の、人に指示して当たり前と言った様子は、貴族女性としては、何らおかしくなどないものだった。
 特に母は元々公爵家の生まれで、自分で用意するという発想自体がないに違いない。
 母には少しだけ、お嬢様育ちゆえの世間知らずな所があることをティアリィは知っていた。
 そこでティアリィはおそらく自分に、この母の影響がほとんどないことに気付く。
 思えば不思議な親子関係だ。そうも感じた。
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