【完結】気がつけば推しと婚姻済みでかつ既に妊娠中だったけど前世腐男子だったので傍観者になりたい

愛早さくら

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34-1・安堵の理由

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「長くお時間を頂いて申し訳ございません、本日からまた、お傍に控えさせて頂きます」

 そんな風に折り目正しく礼を尽くしたシェラを前に、俺は変わらず、得も言われぬ安堵を覚えたことを、思い知るより他になかった。
 シェラと顔を合わせるのは実にだいたいおよそ三ヶ月ぶり。
 シェラを俺から遠ざける理由として、侍従としての再研修という名目があった為だろう、謝罪から入ったシェラの言葉を、俺は罪悪感に塗れながら聞いていた。
 なのに同時に胸に去来した安堵は三ヶ月ぐらい前とちっとも変わらなくて。

(どうしてっ……!)

 答えは出ない。
 ただ、シェラは変わらず天使みたいに可愛いし、三ヶ月、俺から離れていたことを申し訳なく思っていそうなところが、むしろ俺の方が申し訳ないし、だけど安堵した。

(ああ、シェラがいる。無事な姿で、今、の目の前に)

 たったそれだけのことに、涙が出そうなほど胸が安らぐ感覚を抱く。
 そうしていながらそのことこそが、俺には奇異に思えて仕方がなかった。
 以前はこうではなかったはずだ。
 少なくとも、前世を思い出してから、欠けていた記憶を全て取り戻すまでは。
 シェラは可愛くて俺の推しで、仲良くできるのが嬉しかった。
 シェラが近くにいて、立って動いて話している、ただそれだけでなんだか感動したりしていたのは、つまり例えば好きな芸能人とお近づきに慣れただとか、そう言った感覚に近かったように思う。
 もちろん、自分達の立場だとかそう言ったものは、忘れたわけではなかったので、出来るだけなんでもない顔はしていたつもりだけれども、でも多分おそらく、近くで控えてくれていた護衛やシェラ以外の侍従や侍女、それにラティにはバレバレだったことだろう。
 シェラ自身も、それまでとは様子の変わった俺からの好意を感じていたはずだとは思う。
 シェラは特別。
 俺の専属というだけじゃなく、他の侍従たちとは全く違う存在。
 近くにいるだけでなんだか嬉しくてウキウキする、でもそれはやっぱり、シェラが俺の推し・・だったから。
 もちろん、ラティの次ではあったけど、俺は主人公だったシェラも好きだったから。
 だけど、ただ、それだけだった。
 それだけだった、はずなのだ。
 少なくとも今感じているような、心の底からの安堵などとは、全く違う感情だったのは間違いない。
 そして、どちらがより強い感情なのかというと、それは今の安堵の方。
 だから戸惑う。
 理解できない。
 混乱する。
 シェラが目の前にいる、それだけで安心した。
 そんな自分が自覚できるからこそ、俺はどうすればいいのかわからなくなるのだ。
 シェラはあくまでも専属の、だけどいち侍従。
 それ以上でも以下でもない、俺に仕えて、身の回りの世話をしてくれる存在で。
 間違っても、偏った安堵を向けるような相手ではない。
 例えば周りに味方が誰もいなくて、彼ただ一人が自分に寄り添ってくれているだとか、そういう状況であるならばそんな風に、存在に安堵を覚えることもあるだろう。
 だけど、ここは何処よりも安全な王宮内の自室。
 俺に寄り添ってくれているのは当たり前だがシェラだけではなく、何人もいる。
 それこそ、俺が幼い頃から付いてくれている侍女や侍従、護衛もいた。
 なのにそんな彼らにも感じない慕わしさを、どうして俺はシェラに向けているのだろう。
 俺にはどこまでもわからなかった。
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