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27-1・向かった先に
しおりを挟む散歩に出る。
シェラが休憩を取るタイミングは、だいたいいつも決まっていた。
お昼前ぐらいになる、午前中の遅い時間と、午後のお茶の時間と夕食の間だ。
つまり夕方で、今はその夕方だった。
なんとなく、勿論意図的に、シェラが休憩に入ったのを見送ってから部屋を出た。
少し前、午後のお茶の時間に、休憩と称してラティが戻ってきて、共に摂った。
昨日と違い、今日は仕事が残っていると、どことなく残念そうに部屋を出るラティに続いて、シェラもしばらくしてから休憩に入って、そして……――敢えてその直後に、俺も部屋を出たのである。
俺の行動を咎める者など誰もいない。
もちろん、侍従やら護衛やらが何人も付いているので、おそらく報告ぐらいされているだろうけれども。
特に俺の行動を全て把握しているだろうラティには。
だけど口頭で、敢えて言葉にして止められることなどない。
否、侍従や護衛などは基本的にそのようなことなどしないのだ。
シェラは例外で、それはシェラが侍従でありながら同時に、俺のごく親しい友人でもあるが故のことだった。
そうでもなければ考えられないぐらいには、シェラの俺に対する態度は気安い。
自然、俺の行動を咎めたてたりするような所があった。
それがいいのか悪いのかだとかは俺には判断できない。
とにかく、俺が今散歩に出たのはシェラがいないが故であり、勿論それは意図してのこと。
シェラの目を盗むようで後ろめたいと何処かで思う。でも。
(多分、シェラは止めるだろうし……)
何故なら今から向かうのは、いつもの庭ではないからだ。
否、正しくはその先まで、足を延ばそうと思っている。
大きく膨らんだ腹をなんとなく撫でた。
子供のいるその場所。
俺は男で、なのに妊娠しているだなんて。
その事実に嫌悪を抱いたりだとかしていない自分自身がなんだかおかしい。
こういう部分で、いくら前世の意識が強くても、俺は何処までもルニアでしかないのだなと実感する。
俺がいつものガゼボを超えて、いつもなら止める足を進めることに、着いてきてくれている護衛や侍従が戸惑っている気配が感じられた。
そのうちの一人がさっと走っていった所を見ると、ラティにでも報告に向かったのだろうと思う。
(止めに来るかな……?)
止めに来たってかまわない。
(どのみち、確信があるわけでもないし)
止められたら止められた時のこと。
本当は子供が生まれてからの方がいいかもしれないとも思ったのだけれども、否、その前に、という焦燥があった。
(今度こそ取り返しのつかないことになるといけない)
自分の思考の違和感に気付かないまま、俺はただ足が赴くまま、先へと進み続けていた。
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