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しおりを挟む同時にそれを暴くことがいいことなのか、だとかそう言うことがわからない。
判断基準が俺の中で見当たらないのだ。
侍従と主人。
いくら俺の専属だと言っても、それは何処までも主従関係でしかなく、従者の事情を主人がある程度把握している必要はあれど、かと言ってプライベートまで全て詮索しなければならないようなものなのかというと、それはまた別の話で。
現に、見合い云々や件の男に対処するに至った理由、またどういう対処を取ったのかなどと言う報告は受けているとみていいのだろう。
なら、それで充分とも言えるのだ。だけど。
(なんでこんなに気になるんだ……? 俺は、知っているはずなのに……)
わからないわけがない。
俺は知っている、はずなのだ。
ただ思い出せないだけで。
そしてこれはおそらくラティも知っていることのはずだ。
シェラとラティが情報を共有しているようなのに俺は知らない。
その事実にもなんだかもやもやしてしまう。
(なんだか……仲間外れにされた気分だ……)
子供っぽい。
自分でもそう思った。
そして、ルニアなら、そんなことは気にせず、ラティの言うこともシェラの言うことも素直に飲み込んでいたのだろう、そうも思う。
だけど俺は変わってしまった。
前世の記憶を、思い出した。
一度思い出してしまった記憶は、余程のことでもない限り、失くなったりなんてしない。
以前のような、何も知らないままこれまで生きてきて、だからこそ素直で無垢だったルニアになんて戻れないのだ。
俺はもうすっかり『今』を、ほとんど受け入れられるようになってきていた。
前世の記憶に引きずられた意識の先で、思うことは勿論ある。
そもそも俺はもとより傍観者でいたいと思っていたはずなのだが、今となってはすっかり当事者だ。
少なくともラティとの関係においては。
ラティにはもともと好意を抱いていたし、その気持ちもすっかり大きく肥大してしまって、今更、相手がたとえシェラだとしても、ラティが自分以外を選ぶことなんて、耐えられるとは思えない。
この辺りの折り合いは、自分の中でも随分ついて来ていて、だからこそ自分の知らない何かを、あの二人は知っているという事実に、何も思わないままではいられなかった。
(……心が狭いと、思われるだろうか…………)
それは嫌だな、とそう思う。
俺は当たり前に、ラティによく思われたい、そういう気持ちを持っているから。
否、だけどきっとラティなら、俺の心の狭さを喜ぶことだろう。
(だったら余計に、だな……)
秘密が気になる。
俺の知らない何か。
俺はそれをどうすれば暴くことが出来るのか。
そのままシェラが戻るまで、ちっとも進まない本へと視線を落としたまま、考え込むことにしたのだった。
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