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しおりを挟む俺は小さく苦笑する。
ラティと閨を共にしなくなってから今日で5日。
ラティの言った1週間にはまだ少し時間があった。
今はもうじき夕飯になるという時間。
俺は変わらず、いつもの寝室の横の部屋で、応接スペースのソファにだらりと腰かけ、ほんのつい今までまた、映像を眺めていた所だった。
そして、ラティはどんな時もかっこいいなぁ、なんて、現実逃避気味に考えていた所である。
シェラの目に、いったい俺の様子はどう映ったのだろうか。
シェラが静かに口を開く。
「僕も詳しくは知りませんが、殿下は執務室のソファでお過ごしだとのことですよ」
「はっ?!」
返ってきた思ってもみなかった言葉に、俺はあまりに驚いて思わず身を乗り出していた。
え、今シェラはなんと言っただろうか。
執務室のソファ?
俺は夜のことを聞いたのだが、それはつまりまさか、寝台で眠っていないとでも言うのだろうか。
ラティが? この国の王太子なのに?
ここは王宮だ。
いくら俺もラティも他に寝室を持っていないとはいえ、寝室自体はいくらでもある。
俺はてっきり、客室の一つでも使用しているのかと思っていた。
と、言うか、それ以外ないだろうと思いながらも問いかけたというのに。
俺が驚くことなんて、全く予想外でも何でもなかったのか、シェラは何処か呆れたような顔をして、次いで小さく肩を竦めた。
「僕自身、初めてお聞きした時には自分の耳を疑いましたし、ルニア様の驚きもよくわかります。皆が止め、諫めたとも聞いています。ですが、殿下は、ルニア様と共に眠れないというのなら、しっかり眠る意味もなく、そうするのも落ち着かない、執務でもしていた方が気がまぎれると言って、そもそも仮眠程度しかとられていないそうです。こちらで夕飯を取られた後も、ご自身の執務室にお戻りになり、無駄に執務をお進めになられているのだとか……」
必要もないのにそんなことをしているのは、つまりそれだけなんだかんだと俺が気になって仕方がないからなのだそうだ。
あとは、自分が寝る場所は、僕の寝ている場所だとラティ自身が決めているのだとかなんだとか。
俺はどんな顔をすればいいのか全く分からなくなってしまった。
ラティは何を考えているのだろう。
前世ほどではなくとも、睡眠は重要だと俺は認識している。
なのにソファで過ごしているなど、まともに眠ってすらいないということではないか。
「……っなんだ、それ……」
そんな風、信じられない気持ちで呟くのみ。
シェラは俺に同意するよう、軽く目を伏せ頷くばかりだった。
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