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しおりを挟むシェラが目に入ったことで、ああそうだと思い至る。
色々と考えたいことがあったし、忘れていることがあるのなら、思い出したいとも思っていたし、そういう確認がしたかった。
だけどこのまま、鏡とにらめっこしていても、これ以上の進展があるとも考えられない。
ただ、自分の顔は、よくはあるんだよなぁとつくづく思うだけ。
少なくとも平凡な顔ではないし、シェラのような天使がごとくな可愛さやラティのような目がつぶれるんじゃないかと思うぐらい眩しいかっこよさなんかはまったくどこにも見当たらないけれど、それでもまぁ、多分、キレイ……な、顔、にはなる、のかなぁとは思うのだ。
先程の通信で改めて目にした母は美人だったし、父だってかっこよかった。
それで不細工になど成りようがない。
ルニアはそれを当たり前として育ってきているから、そう大したことだとは考えていなかったけれど、前世を思い出した今ならわかる。
(ルニアの周り、美形しかいねぇっ……!)
と。もっとも、それも当然と言えば当然で、なにせラティもルニアも王族なのだ。
ルニアの両親や兄弟だってもちろんそう。
この世界では魔力の多さが大変に重要だ。
そして王族や高位貴族であるほど、魔力が多い傾向にある。
何より魔力が多いと、自分の見た目さえ、ある程度思う通りに変えてしまえるのだ。
より、好まれやすい見た目に、などと考えるのは特におかしな心理などではない。
劇的に、などと言う変化はなくとも、多少、そういう風に変わっていく、ぐらいならば大いにあり得、それが代を重ねれば、自分や伴侶に似るといい、と望むだけでも、大いに見た目を損なうものなど生れなくなっていく。
もちろん、個々人の好みなどもあるので一概には言えないのだけれど。
あくまでも傾向の話である。
そういった願望のようなものは、魔力量によっては見た目にまで反映され、その結果どういうことになるかというと、つまり魔力量の多い王族や高位貴族ほど、必然的に見た目も良い者が多いということになっていった。
そんな、この世界ではある意味当然とも言える理由により、ラティやルニアは勿論見目が良く、身の回りの世話をしてくれる侍従や侍女、女官や護衛なども、貴族である可能性が高い関係上、顔で選んだのかな? と思う程、やたら整った容姿の者ばかりなどという現状が出来上がっていた。
ちなみに実際に重視されているのはあくまでも家柄と能力であるのだが。
ついでに、顔の造作そのものは元より魔力が多いとより魅力的に感じられるという特性もあったりする。
この世界では、魔力に惹かれるというのはごく当たり前に働く心理だから。
要は、見た目の印象に、魔力というバフがかかるのだ。
(何それ王族チートすぎだろ~……っ!)
王族に限らず、実は魔力量が多いということそのものがチートだ。
改めて考えると、全く持ってずるいと思ってしまう仕組みだった。
魔力が多いとそれだけでほとんどなんでもできてしまう。
それは他者に好感を持たれやすい容姿に生まれてくることさえも。
そんな中で、平民として育ったというシェラの天使っぷりは、特殊と言ってよかった。
もっとも、父親は間違いなく貴族であるようなので、当然と言えば当然なのだが。
子爵家の者と考えると、特におかしな魔力量でも容姿でもない。
平民の中だと目を見張るものがあるとは思う。
同時に貴族だと考えれば、決して突出しているというほどではない。
俺が、
(天使~~! くそかわぁ~~!)
なんて悶えてしまうのは、はっきり言うとただの好みでしかなかった。
否、シェラは勿論、ちゃんと可愛いんだけれども。
とにもかくにもそんな風、鏡とにらめっこしていたって、自分の容姿ぐらいしかわからないし、これ以上はどんどん思考がとっ散らかっていってしまいそうなのが自分でも分かった。
俺が今、考えたいのは自分の容姿についてなどではないのである。
いうならば、改めて、今までとこれからとを考えたいのだ。だから。
「なぁ、シェラ、聞きたいんだけど、写真とか、そう言うのってある?」
何かを思い出す、というのならこれだろう。
この世界にも、それに近いものはあったはず。
なんと言っただろうか、ルニアには全く馴染みがなかったのだけれど。
ただ、シェラは流石に優秀ですぐに理解してくれたらしい。
「写真……ああ、映像記録用の魔道具などで宜しいでしょうか? そういったものならございます。すぐに用意させましょう」
意図もおそらく汲んでくれたのだろう、シェラの返事に、俺は知らず小さく頷いていたのだった。
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