上 下
50 / 138

13-1・映像と記憶

しおりを挟む

 写真という単語ではあまりピンとこなかったらしいシェラが告げた、映像記録用の魔導具というのはつまり、前世で言う所のビデオカメラとその再生機のようなものと言える。
 当然、写真のような静止画も記録できるし、音声だけの記録なども可能だった。
 いくつかの種類があって、それぞれ用途によって使い分けていたのだったと記憶している。
 一般に広く普及しているとまでは言わないが、魔導具自体は、それほど高価な物ではなかったはずだ。
 問題は使用するのに必要な魔力量の方なので。
 つまり同じ魔導具を使用しても、魔力量によって記録できる状態が変化するのが、多くの映像記録用の魔導具だった。
 具体的に言うと、静止画なのか、音声のみなのか、動画なのかは使用する際の魔力量によって変わるということ。
 そして王宮で保管されているような映像記録用の魔導具は、当然のように音声付きの動画だった。
 なお、監視カメラ? に近い機能を持つ魔導具なども存在していたように覚えているが、それは今回は割愛する。
 とにかく、シェラが用意させたと言って目の前に並べた魔導具は動画なのである。

「その時々に必要があって残していたものなので、そう多くはないのですが……」

 言いながら幾つかを再生してくれる。
 そこには広報活動の一環などなのか、インタビューか何かを受けてでもいるかのようなルニアが映っていた。
 学生時代の、制服を身に着けたルニアが、後ろから声をかけられて振り返る。

『ルニア殿下、そちらの方は?』

 そう訊ねられているのはルニアの隣にいたシェラのこと。
 今より心持ち幼いだろうか。
 とは言え、そこまで変わっているわけではない。
 考えてみれば当たり前の話。
 学園を卒業してから、まだたったの一年しか経っていない。
 それでも少し幼く見えるということは、この映像の中のルニアとシェラはおそらく二年の時ぐらいか。
 思い返してみる。
 うっすらと思い出せなくもないような気がした。
 映像の中のルニアがやんわりと笑む。
 どこまでも穏やかで、そしてやはりどこか気弱そうな表情。
 そこにはBL小説に出てきた悪役・・のような雰囲気などまるでない。
 思い返した記憶の中のルニア俺自身とも、全く齟齬などありはしなかった。

『彼? ノムリエト子爵家のご令息だよ。少し前から親しくしていて』

 どうやら知り合って間もない頃であるらしい。
 シェラからは少しだけ、なんだか恐縮しているというような雰囲気が見て取れた。
 映像を撮っていた者は、

『そうなんですね』

 なんて頷いていて、その後もしばらく、ルニアやシェラの様子を撮っていたようだった。
 非常に仲が良さそうに見える。
 否、これはどちらかと言えば、ルニアがシェラに構いに行っていた、のだろうか。
 シェラからはやはり遠慮が見て取れた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

オメガ転生。

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:504

クラッシュゼリー

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:859

毒を喰らわば皿まで

BL / 完結 24h.ポイント:2,543pt お気に入り:12,955

全てを諦めた公爵令息の開き直り

key
BL / 連載中 24h.ポイント:397pt お気に入り:1,526

【R18】執着ドS彼氏のお仕置がトラウマ級

BL / 完結 24h.ポイント:312pt お気に入り:205

英雄の息子が俺のこと孕ませようとしてくる!

BL / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:2,392

【完結】俺が一目惚れをした人は、血の繋がった父親でした。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,100pt お気に入り:360

薔薇の寵妃〜女装令嬢は国王陛下代理に溺愛される〜完結

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:709

処理中です...