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09-2
しおりを挟む着替えなどもほとんど終わっていたので、そのまま続行して、髪型だとかまでは触らずに、
「準備が出来たんだったらおいで」
と誘われるまま、寝室の隣へと移動する。
昨日も過ごした、応接スペースなどがある部屋だ。
昨日と同じように、サンルーム部分のあるその部屋は大変に明るくて。
眩しさに一瞬、目が眩むかと思った。
勿論、すぐに慣れた視界の中で、昨日夕食を摂ったテラスのテーブルに、どうやら二人分と思わしき朝食が所狭しと並べられていることに気付く。
流石に狭そうだなとちらと思いながら、しかしそれでもソファセットよりは食事がとりやすそうなことは事実。
「さぁ、お姫様」
にやと何処か悪戯っぽく笑って椅子を引かれたので、なんとなくむっとしながら、だけど俺は素直に従って促された席へと腰を下ろした。
「お姫様って……」
性別が違う、なんて文句は勿論一言告げておく。
返事はひょいと肩を竦める仕草だけだったけれど。
今まではそんなこと言ったことなかった気がするけど、などと思えばつまりこの態度は、前世を思い出した俺だからこそのものだということなのだろう。
なにせおそらく今までの俺だと、不思議そうに首を傾げるだとかいう反応になっていただろうから。
それはそれでおそらくラティとしては、何も問題はなかったのだろうけど。
ただ、今の俺だからという事実は、ほんの少しだけなんだか、ありのままの俺自身を認められたような気持ちになった。
別に今までだって俺であることに変わりはなかったし、そこに何か思っていたことがあるわけではない。
でも何処かで、今までとは違うということも、きっと知らず意識してしまっていたのだろう。
そう思えば、なんだか妙に気安くなったように思えるシェラの態度も同じようなものなのかもしれない。
それらは決して悪い気分になるようなものではなく。
知らず、安堵の息を吐きながら、改めて目にしたテーブルの上の料理は、朝というには少しばかり豪勢だった。
だけど、昨日の夕食同様、いつものようなフルコースじみたものではないのはきっとこれも今の俺への配慮なのだろう。
(俺が、気負わずに食べやすいように……)
それにラティも付き合う必要はないのに、同じような朝食を摂ろうとしてくれている。
内容はありふれた、自由に取れるようカゴに入れられた数種類のパンの盛り合わせとスクランブルエッグの添えられたサラダ、それにスープとソーセージだ。
取り立てて珍しいものではないのだが、今までを考えるとあまりにも庶民的なメニューに、シェラの、あるいはラティの心遣いが感じられて、なんだか少し泣きたくなった。
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