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09-1・朝になって改めて
しおりを挟む翌朝目覚めた時には、流石に体の不調など何処にもなかった。
(体が軽い……)
ぼんやりと目を覚ましながら驚く。
初めての、前日の行為などを引きずらない朝だ。
揺さぶられながら目を覚ますだとか言うわけでもない朝。
なのに何となくすっきりしない気分なのは、やはり寂しさ故なのだろうか。
よくわからないながらぼんやりする俺の意識を、現実に引き戻したのは気づかわしげなシェラの声だった。
「おはようございます、ルニア様。お目覚めでしたら身支度をなさいますか?」
起きる予定の時間を過ぎているのか、あるいはまだなのか、そう言ったことも告げないシェラの呼びかけに、俺はびくと体を揺らした。
「うん? ん、ああ……」
そう言えば今何時なのだろう。
確かラティが、朝食を一緒にと言っていたのではなかっただろうか。
思いながら体を起こすと、さっとシェラが近くに用意していたのだろう、顔を洗う用の、冷たすぎない水の張られた桶を差し出してきて、いつもの習慣の通りに顔を洗った。
すかさず別の侍従が差し出してくれたタオルで水を拭う。
顔を洗うと流石にすっきりするし目が覚める。
キレイにするというだけならば、洗浄魔法などで事足りるのだけれど、敢えて実際に顔に水をかけるのは、ただのルニアのこだわりだった。
「……ちょっとすっきりした。ああ、ごめんね、起きる起きる」
と、言うかだから、そもそも今は何時なのか。
なんとなくきょろと時計を探す俺に気付いたシェラが小さく頷いて教えてくれた。
「朝の八時、少し前ですね」
ルニアとしての記憶と照らし合わせても、遅すぎず早すぎない時間。
「ふぅん。なら、ラティ様のこともあまりお待たせせずに済む、かな……」
ここでは朝食はだいたい八時前後に取っていたはずだ。
呟く俺に、シェラも頷いた。
「ええ。まだいらしておりません。ですが、すぐにおいでになられるかと」
ならば余計に身支度は整えてしまうべきだろうと判断する。
そうでなくば、また、そのままでいいだとか言われかねない。
流石に寝間着で過ごし続けるのも抵抗があった。
幾人かの侍従が、比較的簡素な普段着に相当する服を着せかけてきてくれるのに逆らわずに身を任せていると、ラティの来訪が告げられる。
「おはようルニア。昨日はよく眠れた? 流石に落ち着いていればいいけど……ああ、なんだ着替えてしまったのか」
別にそのままでもよかったのに、なんて、案の定のことを言いながら、こちらの身支度が終わるのなんて待たずに現れたラティは、朝の光の中でも、やはり、かっこよくて眩しかった。
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