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しおりを挟む特に問題なく……――あ~ん、だとか言って食べさせられたり、口移しされたり、そういった余計なちょっかいをかけられることもなく、行儀よく朝食を済ませ、そのまま食後のお茶へと移行した。
このテラスは、サンルームになっているだけあって陽の光がよく入る。
ラティの金髪が、キラキラと輝くようだった。
眩しくてなんだかドキドキする。この胸の高鳴りは、多分、ラティへと寄せている好意ゆえに。
食事中も、ラティは時折、
「美味しい?」
なんて聞いてきたり、
「たまにはこういう食事もいいね」
なんて微笑んでみたりはしたけれどそれだけで、そう会話が多かったりもしなかった。
その度に俺は、
「そうだな」
なんて同意したり、
「うん」
なんて頷いたり、つまりなんだか気のない返事のような物しか返せなかったのだけれど、それでラティが不機嫌になるというようなこともなく、そして今も、改めて、眩しいなぁと見惚れてしまっている俺を咎めたりなんてしなくて。
そんなラティの寛容さにまた、じんと胸が温かくなる。
ラティは優しい。俺に対してだけでなく、誰が相手であっても。おまけに優秀で、それに優しいだけじゃなく、時には王族として非常な判断だってできる。
出来ないことなんてないんじゃないかって思ってしまうような人間だった。
でも俺に、隠すことなく執着していた。
いつもはなんだかふわふわしているルニアだって、それぐらいは自覚していた。
執着、というよりは、
(僕ってば、ラティ様に愛されてるなぁ……)
などと言う自覚だったけれど。
それを喜んでいたルニア。
初夜の時のどう考えても過剰としか思えない長い長い拘束も、愛ゆえの当たり前のこととして受け止めていたルニア。
そのまま子供が成って、そこまでの必要はないはずなのに毎晩毎晩執拗に求められて、苦しくって辛くて怖くって、でも、同時に喜んでいたルニア。
(今、この部屋から出してもらえてないことも、多分、ルニアなら仕方がないことなのだろうと受け止めた)
けどきっとだからこそ、閉じ込められたりなんてしなかったのだ。
ラティもラティでルニアからの好意を疑ったりなんてしていなかったから。
同じ熱量でなんかないことがわかっていても、行為であることだけは確かだったから、それで満足していたはずだ。だけど。
何度考えても、今の俺に、同じように出来るような気がしなかった。
ラティが、にこと微笑んでおもむろに口を開く。
「ルニア。私もね。昨夜一晩……ううん、昨日から今朝にかけて。色々と考えてみたんだよ。君ももうわかってはいると思うけど、昨日、昼食に誘おうと此処へ戻ってきたら、君たちの話が聞こえてきて。盗み聞きだなんて言わないでね。気になってはいたし、聞かずにはいられないだろう? それに、シェラにも言われたし。だから……」
(それって結局盗み聞き……)
ちらと思った俺に構わず、わかっては、いるんだ。
ラティは、ぽつりと、そう続けた。
その声は、どこか、少しだけやるせなさそうな響きを孕んでいて。なんだかぎゅっと、俺の胸が切なくなるようなのだった。
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