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20・目覚めと
しおりを挟む目が覚めた時、目の前にはなぜかホセがいた。
「デュニナ」
「え?」
呼びかけられて、驚いてパチパチと目を瞬かせる。
ゆっくり上半身を起こそうとすると、気付いたホセが手を貸してくれて、ありがたくその助けを受け取った。
辺りを見る。
初めて見る景色。
だが、眠りに落ちる前のことをすぐに思い出して、多分ここはフォルが向かっていた奥の部屋なのだろうと納得した。
広々とした寝台、上からは天蓋で覆われていて、視界のどこもかしこもが幾重にも重なった布ばかり。
なんとなく薄暗く思えるのは、もしかして陽が落ちてしまっているからなのだろうか、否、それよりも。
「ホ、セ……さん?」
なぜ、ホセがいるのか。
呆然と呼び掛けた僕に、ホセは柔らかく、どこか安堵したように微笑んだ。
「うん、俺だよ。よかった、目が覚めて。聞けば寝てるっていうから……やっぱり移動なんて無理があったんだ」
そもそも大領主の所とやらに行くことそのものを反対していたホセは、むっと怒りも露わに吐き捨てた。
僕は小さく苦笑する。しかし、そうではない。そうではなく。
「えっと……あの、どうやってここへ……」
僕は半ば強制的に、フォルの背に乗せられ、空を飛んでここまで来た。
あの景色と、飛んでいた時間を思えば、すぐに追いかけてきたとして、こんなにも早く着けるとは全く思えない。
いったい何がどうなっているのか。
思わず眉根を寄せた僕に、ホセは小さく困ったように笑う。
「うーんと、まぁ、ちょっと、俺一人なら、取れる手段があってね……」
なにやら事情があるらしい。
しかし砂嵐も決して無くなっていたわけではないようだったのだ。
あの時は一時的に止んでいただけで、少なくとも上から見下ろした景色はどう見ても砂に埋もれていた。
そんな中を、本当にどうやって。
まさかホセも空を飛んできたとでも言うつもりなのか。
わけがわからなかった。だが。
「それより、体でどこかおかしいところはない? 一応、寝ている間に医師の診察を受けさせたってあいつは言っていたけど……」
それで目立った不調は見つからなかったとも教えてくれながら、僕の疑問には応えるつもりがないらしいホセは、ただただ気遣わしげに、僕の心配をしてくれていた。
僕は首を横に振る。
一応、自分の体調をわかる範囲で意識してみたけれど、特におかしな所など見つからない。
寝起きで少し気怠いぐらい、敢えて言うなら、一つ。
「えっと、あの、お腹が……」
「ん?」
途端、その先を示すかのよう、小さく微かにお腹が鳴った。
「ああ、お腹が空いてるのか。はは。すぐに何か用意させよう」
勿論、当たり前に気付いたホセが柔らかく笑んで振り返る。
視界の端、使用人らしき人影が見えて、その人が心得たとばかり、その場を離れるのが僕にもわかった。
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