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21・意外な人物達
しおりを挟むホセに支えられて寝台を降りる。
布をかき分け、天蓋から出ると案の定そこから見えた窓の外は暗い。
すっかり陽が落ちている。
だが室内はそれなりに明るく保たれているようだった。
そこかしこに配置されたランプは幻想的で美しい。
寝台があった部屋は、どうやら他にはほとんど何もないらしく、ホセはそのまま部屋を出て、隣の部屋らしき場所へと僕を促した。
そこは初めにフォルが僕を連れてきてくれた部屋で。
「ああ、起きたの」
僕が座らされていた、クッションなどが置かれている場所に同じように座り込んでいたフォルが、僕とホセに気付いて振り返る。
そしてそんなフォルの前にはなんと、シズとネアまで居て、僕はまたパチリ、目を瞬かせて驚いてしまった。
「え……どうして……」
ホセと言い、一体どういうことなのか。
もしや自分は何日も眠っていただとか、そういうことなのだろうか。
「ん? ああ、彼らは彼らで手段があるんだよ」
僕の驚愕に気付いたホセがにっこりと笑って教えてくれた。
ホセと同じなのだと、そう。
それでも納得しかねる気持ちになったのだが、そう言われては頷くより他にない。
何せ僕はホセのことも、シズのこともネアのことも何も知らない。
フォルが竜だったぐらいなのだ、もしかしたら彼らも、そういった事情があるのかもしれない。
少なくともネアは巨人であるようだし。
「デュニナがお腹を空かせているようだから、軽食を頼んだんだけど……君、何も食べさせていなかったってこと? どういうつもりだい?」
ホセが僕を支え、彼らの方へと近づきながら、少し怖い声を出してフォルを詰った。
フォルがひょいと肩を竦める。
「疲れていたようだったから、休息が先かとそう判断しただけだよ。食事だとかの前に眠っちゃったんだ」
悪びれもせずそう告げるフォルは、仕方がないだろうとでも言わんばかりだった。
と、なるとつまり悪かったのは僕ということなのだろうかと、少しだけ気まずい気持ちになる。
気付いたネアが、
「主様、それでは神人様に失礼では?」
とても控えめに窘めていた。
「え? ああ、そうか、いや、そんなつもりじゃなかったんだけど……」
困ったな、言わんばかりのフォルの様子が、僕にはなんだか意外で新鮮だった。
そんな反応をする人物だとは思っていなかったためだ。
「気を悪くさせたかな? ごめんね」
剰え僕にそんな風に謝ってまでくれて、僕はびっくりして、ただふるふると首を横に振ることしかできなかった。
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