チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

文字の大きさ
上 下
333 / 370
131.深い傷

4

しおりを挟む
「ロニー?気持ち悪いってどういうこと?」
「何でもすぐ覚えて忘れないから気持ち悪いって」
ロニーは表情も変えずにそう言った
どう考えても一度や二度、軽い気持ちで言われた言葉とは違うだろ…

「誰がそんなこと言ったの?」
「村の人皆に言われた。父さんと母さんもそう言ってた」
「ひどい…」
レティが思わずつぶやいていた
「だから父さんは僕を貴族に売るんだって言ってた。お前にはそれくらいしか役に立てる場所がないから二度と戻ってくるなって」
「ロニー…何てこと…」
ナターシャさんがロニーを抱きしめる
ロニーを守った理由が思っていた事よりも酷かった
最悪なことにロニーはそんな酷いことをずっと覚えている
諦めたような死んだ目をしていた理由がようやくわかった気がした

「ロニー、そんな思いをしたのに何でそれを俺たちに明かしたんだ?隠すこともできただろう?」
傷つくと分からないはずがないのは明白だ
だからこそ不思議だった
「…隠してもいつかばれるから」
その言葉には実感がこもっていた
つまり、隠そうとして失敗したことがあるということだ
それでも、この事実を明かすのはどれだけ覚悟がいるんだろうか…

「ロニー」
「?」
「記憶力がいいのは気持ち悪い事なんかじゃない」
思わずそう声をかけていた
「でも…」
「人より秀でた個性の一つだ」
「そうよロニー。この家にはロニーの様に個性を持った人が沢山いるわ。中でもそんな個性をたくさん持ってるのがサラサちゃんとシアなの」
どんな説明だよ…
と思わず突っ込みを入れたくなったのを何とか飲み込んだ
「そうだな。シアなんて人族やめて龍神族になっちまったくらいだしな」
カルムさんがなぜか笑いながら言う

「ロニーは2人が他の人と違うからって気持ち悪いと思う?」
ナターシャさんが尋ねるとロニーは首を横に振った
「でしょう?それと同じよ。私たちがロニーを見ても気持ち悪いだなんて思わないわ」
「皆なら名前を覚えたことを喜ぶんじゃないかな。それに羨ましがられると思うわ」
「レティシアナの言う通りよ。羨ましくてやきもちを焼くことはあっても気持ち悪いだなんて思いもしないでしょうね」
母さんに同意だな
文字を覚えるのが苦手なフラウなんて絶対妬む
でもそれは気持ち悪がるなんてものとは全く違うものだ

「おはよ~。ロニーは早起きなのね」
欠伸をしながらそう言って入ってきたのはユリアだ
「…ユリアも早い」
ロニーがぽそりと言った
「え?ロニー私の名前覚えてくれたの?」
「ん。覚えた」
「すごいわ!ママ聞いた?」
「聞いたわ。でもユリアの名前だけじゃないみたいよ?」
ナターシャさんはクスクス笑いながら言う
「そうなの?」
輝くような目を向けられたロニーは戸惑いながらも頷いた
「皆、覚えた」
「皆…ってこの家の人皆?」
「…ん」
驚きを含んだ声にロニーがこわばった
「私が来た時この家は今より人が少なかったけど中々覚えられなかったのに…ロニーは凄いのね!」
そんな言葉を向けられると思っていなかったのかロニーは目をパチパチさせていた
ユリアが自慢の弟だと皆にそのことを伝えて回り、そんなユリアにロニーが少しずつ懐き、心を開くようになるのは当然だったのかもしれない
後にロニーがいわゆるシスコンになりユリアの恋人が中々できなくなることをこの時は想像もしなかった

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない

丙 あかり
ファンタジー
 ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。  しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。  王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。    身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。    翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。  パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。  祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。  アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。  「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」    一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。   「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。 ****** 不定期更新になります。  

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

転生して何故か聖女なった私は、婚約破棄されたうえに、聖女を解任される。「え?」 婚約者様。勝手に聖女を解任して大丈夫? 後は知りませんよ

幸之丞
ファンタジー
 聖女のお仕事は、精霊のみなさまに助けてもらって国を守る結界を展開することです。 この世界に転生した聖女のエリーゼは、公爵家の子息と婚約しています。  精霊から愛されているエリーゼは、聖女としての能力も高く、国と結界を維持する組織にとって重要な立場にいます。    しかし、ある夜。エリーゼは、婚約破棄されます。 しかも婚約者様が、勝手に聖女の任を解いてしまうのです。 聖女の任を解かれたエリーゼは「ラッキー」と喜ぶのですが…… この国『ガイスト王国』は、どの様なことになるのでしょう。 ――――――――――――――――  この物語を見つけていただきありがとうございます。 少しでも楽しんでいただければ、嬉しいです。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...