筋肉が好きすぎて騎士を目指したのに僕ってそうなの?

サクラギ

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本編

13 竜の家

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 竜の存在は明かされているけど、居場所は明かされていない。街中に竜がいた所を見たことがない。

 たまに空を通り過ぎて行くのを見て、鳥かな? もしかしたら竜かもと思う程度。はっきり竜とわかって見たのは、凱旋の時だけだった。

「おまえは竜なんだから、竜に甘やかしてもらえ」

 アルブはそう言って僕を竜のいる場所に連れて行ってくれた。しかも王城裏の屋根の上に作られた飛ぶ為の台から、アルブの竜の背に乗せて貰って飛んだ。

 アルブと僕は腰に巻いた紐で繋がっている。竜は落としたりしないけど、初めてで怖いだろうからって言われた。

 確かに怖い。風が顔に当たって息が出来ない。飛ばされそうだから背中をアルブに預けている。

 飛竜は高度を上げて行く。
 空に建物が見えて来る。雲に囲まれた建物。上部は岩山が連なっていて、その中央に白い建物がある。

 空にあるんだと思ったら、その建物から飛竜が5体舞い降りて来た。

 僕の周りを囲んでいる。背中に人はいない。

 一緒に建物の台の上に降りると、僕が地面に降りるのを待って、竜たちが鼻を寄せて来た。匂いを嗅がれている気がする。

「おい、おまえら、メイが怖がるだろ。早く中に入れ」

 アルブの声で竜が中に入って行く。
 アルブの飛竜は解けるように、人型に戻った。裸になるのかと思ったら、ちゃんと服を着た状態だった。でもホッとする。もし僕が竜になれて、突然人型に戻ってしまったら、恥ずかしい思いをするから。

「おいで」

 アルブに連れられて中に入る。
 広い部屋の左右に区切りがあって、その一つ一つに違う装飾がされている。その奥に扉がある。

正面奥に大きな絨毯が敷かれた場所があって、いろんなクッションや座椅子が置いてある。そこに各々の格好をした人がいる。全部で10人。

「あれみんな竜だ」

 アルブが言うから驚いてしまった。見た目は人と同じ。いや同じじゃない。すごく華やかだったり、豪華だったりする。みんな男だ。

 僕の後ろにいたアルブの飛竜ジルが僕を抱き上げた。この先はアルブでも入れないらしい。

「怖くない。甘えて来い」

 アルブが見送っている。僕は胸がドキドキした。竜がいっぱい。

「おいで」

 近づいて行くと僕は真ん中に入れられて、頬擦りされたり撫でられたりした。

 竜にも上下関係があるらしく、一連の挨拶が終わると、上位の竜だけになった。

 アルブの竜のジルが僕を膝に乗せてくれて、金の長い髪をして目が青い綺麗な顔の竜と、赤い髪と赤い目をした男らしい竜が残っている。

「メイ、金の髪がフィン、赤がレンだ」

 僕は頭を下げた。

「メイは王族の子だから頭は下げなくて良い。少しずつ竜の振る舞いに慣れろ」

 ジルを見上げて頷いた。

「許せん、薬を使うとは卑劣だ」

 レンが怒っている。

「メイを怖がらせてはダメですよ。その件はアルブが終わらせたのですから、今はメイを存分に可愛がってあげましょう」

 フィンがそういうと、別の竜が食べ物や飲み物を運んで来た。人が食べる物と同じものだ。

「お腹がすいたでしょう。好きなものをどうぞ」

 ジルを見ると、頷いてくれた。
 僕は目の前にあった果物を取って口にした。甘い実だった。おいしいって顔をしたのだろう。フィンが愛しいって顔で頬についた果実の汁を舐め取ってくれる。びっくりした。

「仲の良い竜はお互いに舐め合ったりする。ただ伴侶の前ではやらない。人は嫉妬深い生き物だから」

 ジルが説明をしてくれる。ジルが僕の教育係らしい。

 レンとフィンもお互いに食べあったり、顔や手を舐め合ったりしている。でもジルはしない。

「同じ国の竜でも、仲の悪い者もいる。機嫌の悪い時もある。だがメイだけは誰とでも仲良くできる。それが王族の証。竜の種族を繋いでいる」

 ジルの説明を見上げて聞いていたら、頬にキスをされた。

「俺たちにとって王族はとても可愛く映る。大切で愛しくて、守るべき存在だ。伴侶と同じくらいな」

 竜が僕を愛しいって目を細めて見て来る。騎竜で戦いにも行くような強い竜が、僕を甘やかしてくれている。不思議だった。

「ジルは伴侶以外の竜に触れない。そのキスは特別だ」

 レンがニヤッと笑った。

 眠くなったのを仕草で気づいた竜たちが、僕をベッドに運んでくれた。添い寝はジルが僕を背中から抱えて、レンが僕のお腹に抱きついて、フィンは僕の手を握っている。

 不思議と安心する。温かくて気持ちの良い場所。竜だけが暮らす特別な場所だ。
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