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本編

12 裁判

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 リフィエル=アーリンの裁判が行われた。

 裁判が終われば、リフィは処刑される。それは決まっているけど、罪状確認の為の裁判だそうだ。

 僕は裁きの場に連れて行かれて、詳細を聞かれたのだけど、声が出ない。話せる訳がない。僕の証人としてアルブが来ていた。アルブの肩には小竜がいる。

 アルブは詳細を正確に語り、僕に本当かと聞いて来るのだけど、頷くことしかできなかった。

 リフィは自分は悪くないと言い張り、僕が竜ではないと主張した。僕が悪い子だからお仕置きをしたとか言っている。そして父さまに騙されたとか、アルブに騙されたとか、いっぱい言い訳をしていた。

 僕に助けてくれと懇願して来る。
 父さまを養ってやったとか、僕を騎士養成学院に入れてやったとか、いろいろ言って来るけど、父さまに辛い労働をさせていたなんて許せなかった。

 僕が言葉を話せないのは、リフィが薬を飲ませたせいだとアルブは主張して、助けの言葉を得られないのは、残念だな、おまえが薬を飲ませたせいだ。自業自得だ。死んで償えって言っていた。

 国は容赦しない。
 僕が竜の王族であることは、この国の竜たちが証明した。竜は嘘をつかない。そういう種族らしい。

 となれば、竜の王族を監禁し、暴行した。それは国を滅ぼす行為だ。
 死刑は免れないとアルブは言う。
 僕はそれを聞いて助けてあげたいと思った。でも言葉が出ない。言葉が出ないってアルブに主張したけど、アルブは首を振った。それくらい大変なことをあいつはしたんだよ、と。

 リフィは僕の憧れだった。
 父さまと少ない時間だったけど、婚姻をした相手だ。
 それなのに僕のせいで死に追いやってしまった。
 僕は泣いてしまったけど、泣いても誰も許してくれなかった。

 部屋に戻って父さまに抱き着いて泣いた。
 処刑は見たくないからすぐに帰らせてもらったのだけど、竜の王族はそういうものだって、アルブの小竜、エリルが言った。王族は争いを好まない。だから竜のいろんな種族が王族を愛しているのだそうだ。
 僕が弱いんじゃない。竜の王族がそうなんだって聞いて、そういうことにしてしまおうと思った。あまりに重く苦しい出来事だったから。

 父さまはずっと部屋にいた。自分は庶民で難しいことはわからないから、僕とアルブに任せると言っていた。

 本当ならリフィと婚姻した父さまにも罪を着せられる所だった。ふたりの息子だからだ。でも父さまは僕を幼い頃から育ててくれたから、その恩は絶大で、竜たちが父さまを守ってくれた。

 部屋に戻って父さまの所に行こうとしたら、アルブに止められた。

 いくらリフィが悪いと言っても伴侶だった相手だ。ひとりになりたいだろうってアルブが言った。

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