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本編
14 運命の相手探し
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父さまは竜の秘密を知ったということで、王城の奥、上空に竜の棲家のある下、そこの竜騎士の詰所で経理の仕事をすることになった。
僕は竜騎士の詰所にあるアルブの部屋に泊めて貰っている。
今いる竜騎士は、アルブ以外はみんな竜の伴侶になっているから、僕の伴侶はいない。
竜騎士見習いの中にいるかもと言われて、アルブに付き添って練習風景を見に行ったけど、筋肉に対する憧れが無くなっていることに気づいただけだった。それでリフィを思い出して気分が悪くなった。
アルブの服を引っ張ると、すぐに抱き抱えられて連れ帰られた。
アルブの部屋で小竜のエリルに添い寝してもらった。どうやらリフィのことがトラウマになっていて、竜の側が落ち着くみたい。
日を置いて今度は銀獅子部隊を見に行ったけど、近づくことも出来なかった。
それからすぐに、隣国の使者が謁見に訪れることになり、貴族が広間に集うから、アルブと一緒に参加することになった。そこには各部隊の隊長位が勢揃いする。アルブはそこに狙いを付けたようだった。
「竜の王族の伴侶なんだから、しっかりした地位の人が良いわね。街中に王族を住まわせるのは嫌だわ」
エリルが甘いお菓子を食べながら話しているのを、僕はゆったりソファに座って聞いている。
「できればこの国の人が良いわ。アルブが私たちのこと、良く理解してくれているから居心地が良いの。絶対に嫌なのは海辺の国ね、あそこは薬で従わせた竜がたくさんいるの」
僕はびっくりした。その気配をエリルは汲み取ってくれる。
「メイが飲んだ薬はまだ軽いのよ。強いものだと意識を全部乗っ取られて、主人の言いなりで逆らえない。昔、戦ってこの国が勝っているけど、悪いヤツはまだいるわ」
僕はソファに寝転んだ。
10年前の凱旋の時の話だ。南の国と戦乱があった。竜同士の戦いが特に激しかったと教えられた。それ以上のことを庶民は知らない。
「湖の国は今内乱中だから行って欲しくないけど、海辺の国よりはマシね。あまり遠くには行って欲しくないのよ。心配になるから」
エリルが僕の隣に来て、髪を撫でてくれる。侍女が毛布を掛けてくれた。最近は眠ってばかりいる。心が疲れているせいだとアルブが言っていた。
エリルの手の感触が優しくて、温かい気持ちで眠りについた。
謁見の日。僕が竜だと言うことは、王様と宰相、裁判にいた人とアルブしか知らない。僕はアルブのお付きの者のフリをして、アルブの後ろに控えている。
壇上の王座を隠すように薄いベールが下がっている。王座の後ろに衛兵、ベールの前にもいる。段を降りた所に左右3人ずつ。中央にある赤い絨毯沿いに等間隔で左右2人ずつ。壁際に。左右後方の扉の内と外側に2人。厳重な警備が敷かれている。
王座の下の左右に宰相位から順に位の高い人が並んでいて、中央絨毯の右に竜騎士部隊、左に銀獅子部隊の隊長位が並んでいる。広間の後ろに高位の貴族が豪華な衣装に身を包んで並んでいて、厳粛な風景に合っていない。
「気になるヤツは?」
アルブに小声で聞かれた。
僕は首を振る。
竜騎士部隊にも僕のことは知られていない。彼らの竜は知っているけど、竜の王族の話だ。竜から告げることはないらしい。だから僕に冷たい視線が向かっている。アルブにも侮蔑の視線や言葉が向けられている。でもアルブは全然気にしていない。むしろ僕を守ろうとした気概が見える。
王が王座につき、宰相が説明を話すと、後ろの扉が開かれた。
謁見に訪れたのは、隣国の第二王子とその護衛だ。前後に護衛、中央に王子という並びで入って来た。
それと同時に隊長位が膝をつき、視線を下げて最上礼の姿勢を取った。僕も一緒に膝をつく。
心臓が跳ねた。
自分で自分がわからなかった。
冷や汗が流れる。
ぶるぶると体が震えた。
胸の紋が熱くて、胸元を押さえた。
アルブの前で王子が足を止める。
会場に緊張が走った。
アルブが僕の様子を確認し、王子にだけ聞こえる声で、「後ほど」と告げると、アルブは僕を抱えて会場を出た。
会場を出ると、庭を横切る。そこで小竜がアルブの肩に止まる。近くの空き部屋に入った。
アルブは僕を強く抱きしめる。
「大丈夫だ。エリルと一緒にここにいろ。謁見が終わったら王子を連れて来る」
エリルは人型になって、離れたアルブの代わりに抱きしめてくれた。
「大丈夫よ、怖くないわ。この先、ずーっと長く一緒にいる相手に出会ったのよ? 震えて当然だわ。でも覚えておいて? 運命の相手の側にいるのって、竜にとって、何にも変えられない幸せなのよ」
僕は泣いていた。
竜だとわかってから泣いてばかりだ。
謁見は長い。僕はいつの間にか眠っていた。
僕は竜騎士の詰所にあるアルブの部屋に泊めて貰っている。
今いる竜騎士は、アルブ以外はみんな竜の伴侶になっているから、僕の伴侶はいない。
竜騎士見習いの中にいるかもと言われて、アルブに付き添って練習風景を見に行ったけど、筋肉に対する憧れが無くなっていることに気づいただけだった。それでリフィを思い出して気分が悪くなった。
アルブの服を引っ張ると、すぐに抱き抱えられて連れ帰られた。
アルブの部屋で小竜のエリルに添い寝してもらった。どうやらリフィのことがトラウマになっていて、竜の側が落ち着くみたい。
日を置いて今度は銀獅子部隊を見に行ったけど、近づくことも出来なかった。
それからすぐに、隣国の使者が謁見に訪れることになり、貴族が広間に集うから、アルブと一緒に参加することになった。そこには各部隊の隊長位が勢揃いする。アルブはそこに狙いを付けたようだった。
「竜の王族の伴侶なんだから、しっかりした地位の人が良いわね。街中に王族を住まわせるのは嫌だわ」
エリルが甘いお菓子を食べながら話しているのを、僕はゆったりソファに座って聞いている。
「できればこの国の人が良いわ。アルブが私たちのこと、良く理解してくれているから居心地が良いの。絶対に嫌なのは海辺の国ね、あそこは薬で従わせた竜がたくさんいるの」
僕はびっくりした。その気配をエリルは汲み取ってくれる。
「メイが飲んだ薬はまだ軽いのよ。強いものだと意識を全部乗っ取られて、主人の言いなりで逆らえない。昔、戦ってこの国が勝っているけど、悪いヤツはまだいるわ」
僕はソファに寝転んだ。
10年前の凱旋の時の話だ。南の国と戦乱があった。竜同士の戦いが特に激しかったと教えられた。それ以上のことを庶民は知らない。
「湖の国は今内乱中だから行って欲しくないけど、海辺の国よりはマシね。あまり遠くには行って欲しくないのよ。心配になるから」
エリルが僕の隣に来て、髪を撫でてくれる。侍女が毛布を掛けてくれた。最近は眠ってばかりいる。心が疲れているせいだとアルブが言っていた。
エリルの手の感触が優しくて、温かい気持ちで眠りについた。
謁見の日。僕が竜だと言うことは、王様と宰相、裁判にいた人とアルブしか知らない。僕はアルブのお付きの者のフリをして、アルブの後ろに控えている。
壇上の王座を隠すように薄いベールが下がっている。王座の後ろに衛兵、ベールの前にもいる。段を降りた所に左右3人ずつ。中央にある赤い絨毯沿いに等間隔で左右2人ずつ。壁際に。左右後方の扉の内と外側に2人。厳重な警備が敷かれている。
王座の下の左右に宰相位から順に位の高い人が並んでいて、中央絨毯の右に竜騎士部隊、左に銀獅子部隊の隊長位が並んでいる。広間の後ろに高位の貴族が豪華な衣装に身を包んで並んでいて、厳粛な風景に合っていない。
「気になるヤツは?」
アルブに小声で聞かれた。
僕は首を振る。
竜騎士部隊にも僕のことは知られていない。彼らの竜は知っているけど、竜の王族の話だ。竜から告げることはないらしい。だから僕に冷たい視線が向かっている。アルブにも侮蔑の視線や言葉が向けられている。でもアルブは全然気にしていない。むしろ僕を守ろうとした気概が見える。
王が王座につき、宰相が説明を話すと、後ろの扉が開かれた。
謁見に訪れたのは、隣国の第二王子とその護衛だ。前後に護衛、中央に王子という並びで入って来た。
それと同時に隊長位が膝をつき、視線を下げて最上礼の姿勢を取った。僕も一緒に膝をつく。
心臓が跳ねた。
自分で自分がわからなかった。
冷や汗が流れる。
ぶるぶると体が震えた。
胸の紋が熱くて、胸元を押さえた。
アルブの前で王子が足を止める。
会場に緊張が走った。
アルブが僕の様子を確認し、王子にだけ聞こえる声で、「後ほど」と告げると、アルブは僕を抱えて会場を出た。
会場を出ると、庭を横切る。そこで小竜がアルブの肩に止まる。近くの空き部屋に入った。
アルブは僕を強く抱きしめる。
「大丈夫だ。エリルと一緒にここにいろ。謁見が終わったら王子を連れて来る」
エリルは人型になって、離れたアルブの代わりに抱きしめてくれた。
「大丈夫よ、怖くないわ。この先、ずーっと長く一緒にいる相手に出会ったのよ? 震えて当然だわ。でも覚えておいて? 運命の相手の側にいるのって、竜にとって、何にも変えられない幸せなのよ」
僕は泣いていた。
竜だとわかってから泣いてばかりだ。
謁見は長い。僕はいつの間にか眠っていた。
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