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20 冬眠中の愛しい時間
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10日の休みを貰ったのを良いことに、食料や生活用品を買い込んで、家から一歩も出ないと決め込む。
冬眠が明けたら、もうミルルと一緒にいられないかもしれない。だったら出来るだけ一緒にいて、この幸せを噛み締めておこうと思った。
「ずっといるね?」
「いるよ」
私の気配がミルルの眠りを妨げているのかと思うのだが、ミルルは私の存在を確認するたび、体のどこかしらをくっつけて来るから、許されているのかなと思って、勝手に良いのだとしている。
「どうして?」
「年末年始のお休みだよ」
そう言ったら、会話が途絶えた。
「どうかした?」
モゾッと毛布が動く。
「あのね」
毛布の下のミルルの手が、私の服の裾を掴んでいる。毛布の隙間から、可愛い顔が覗いていて、暖炉の火の灯りにきゅるると瞳が輝いて見えた。
「せいじんをむかえるとき、おこして?」
「起こして良いの?」
うんって瞼が閉じて、開いた。
「やくそく」
「わかった」
そう言うと安心したのか、毛布の隙間が閉じて、スースーと寝息が聞こえ出した。
私は誰かと冬眠を共有したことがない。故郷は一定して暖かく、冬眠の必要のない土地だった。
軍学校の時も、冬眠を必要とする者は故郷に帰るか、宿をとってこもるかだった。
冬眠する姿はとても無防備で、そばにいさせて貰える事が、許されているのだと勘違いさせられる。
ずっと毛布に包まっているから、顔を見られる訳ではない。話だってごくたまにで、静かな時間ばかりだ。
それなのに、呼吸に伴う毛布の上下とか、微かに聞こえる呼吸音だけで、満たされている自分がいる。
意味もない寝言が聞けたら嬉しいし、顔が少し見られただけで愛おしい。
体のほんの少しの部分が触れ合っているだけで、とても特別な気分になる。
なのに今日はどんな特別な日なのだろう。
さっきだって可愛いお願いが聞けたばかりだ。それだけで今日という日が意味のあるものになっているのに。
ゴソゴソッと動いた毛布が膝の上に乗って来て、可愛い顔が近くに来る。
え? っと思っている間に、眠そうな目がじっと私を見ていた。
「おなかすいた」
胸に頬を寄せられ、膝の上に乗り、手は背中側へ回っている。
一瞬で鼓動が早くなる。
手の届く所に軽食が置いてある。
読んでいた本を置くことさえ忘れ、近くから木の実を取ってミルルの前に出すと、手を使わず、私の指先からあーんと口に入れた。
また頬が胸につく。
ぽりぽりとかじる音が直接伝わって来る。
あーんってするから、もう一個を口に入れる。
ぽりぽりして、あーんして、水を飲ませて——何度か繰り返したら、そのまま寝てしまった。
何の時間だ?
何のご褒美だ?
いや、拷問かもしれない。
膝から胸にかけてある重みが愛しい。
冬眠が明けたら、もうミルルと一緒にいられないかもしれない。だったら出来るだけ一緒にいて、この幸せを噛み締めておこうと思った。
「ずっといるね?」
「いるよ」
私の気配がミルルの眠りを妨げているのかと思うのだが、ミルルは私の存在を確認するたび、体のどこかしらをくっつけて来るから、許されているのかなと思って、勝手に良いのだとしている。
「どうして?」
「年末年始のお休みだよ」
そう言ったら、会話が途絶えた。
「どうかした?」
モゾッと毛布が動く。
「あのね」
毛布の下のミルルの手が、私の服の裾を掴んでいる。毛布の隙間から、可愛い顔が覗いていて、暖炉の火の灯りにきゅるると瞳が輝いて見えた。
「せいじんをむかえるとき、おこして?」
「起こして良いの?」
うんって瞼が閉じて、開いた。
「やくそく」
「わかった」
そう言うと安心したのか、毛布の隙間が閉じて、スースーと寝息が聞こえ出した。
私は誰かと冬眠を共有したことがない。故郷は一定して暖かく、冬眠の必要のない土地だった。
軍学校の時も、冬眠を必要とする者は故郷に帰るか、宿をとってこもるかだった。
冬眠する姿はとても無防備で、そばにいさせて貰える事が、許されているのだと勘違いさせられる。
ずっと毛布に包まっているから、顔を見られる訳ではない。話だってごくたまにで、静かな時間ばかりだ。
それなのに、呼吸に伴う毛布の上下とか、微かに聞こえる呼吸音だけで、満たされている自分がいる。
意味もない寝言が聞けたら嬉しいし、顔が少し見られただけで愛おしい。
体のほんの少しの部分が触れ合っているだけで、とても特別な気分になる。
なのに今日はどんな特別な日なのだろう。
さっきだって可愛いお願いが聞けたばかりだ。それだけで今日という日が意味のあるものになっているのに。
ゴソゴソッと動いた毛布が膝の上に乗って来て、可愛い顔が近くに来る。
え? っと思っている間に、眠そうな目がじっと私を見ていた。
「おなかすいた」
胸に頬を寄せられ、膝の上に乗り、手は背中側へ回っている。
一瞬で鼓動が早くなる。
手の届く所に軽食が置いてある。
読んでいた本を置くことさえ忘れ、近くから木の実を取ってミルルの前に出すと、手を使わず、私の指先からあーんと口に入れた。
また頬が胸につく。
ぽりぽりとかじる音が直接伝わって来る。
あーんってするから、もう一個を口に入れる。
ぽりぽりして、あーんして、水を飲ませて——何度か繰り返したら、そのまま寝てしまった。
何の時間だ?
何のご褒美だ?
いや、拷問かもしれない。
膝から胸にかけてある重みが愛しい。
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