獣人カフェで捕まりました

サクラギ

文字の大きさ
85 / 112

85 満ちる ※

しおりを挟む
 紘伊の想いがエルに伝わると、エルはその願いを叶えようとする。でもこんなにすぐに願いを叶えられて、紘伊は自分の中にあった願いの重さに気づいた。

「これ、いいな、ヒロイ」

 信じられないと紘伊は思う。
 この状況をつくったエルは、場所が獣人国だと分かると久しぶりの変化を楽しむように浮かれて出て行ってしまった。きっと今頃、人化を解いて竜の姿に戻っているはずだ。

「ヒロイ?」

 なぜあちらから一気に飛んで、飛んだ先がハーツの上、ハーツの腹の上にまたがっている状態なんだか。恥ずかしすぎて顔を上げられない紘伊の思いを汲んでか、ハーツは紘伊の膝を撫でている。

 ハーツもハーツだ。なぜ王城内にいるのに、テラスのカウチで昼寝をしているのか。お付きの者が距離は置いているが控えているし。紘伊の出現で衛兵が駆け寄ろうとしていた。

 しかもここ、王城内のハーツ滞在用の客間続きのテラスだ。他者の視線が気になりすぎる。しかも紘伊は存在を知られてはダメな扱いになっているのに。

「久しぶりに会えたんだ、顔を見せて欲しい」

 手を繋がれ、半身を起こしたハーツの腕に捕えられた。久しぶりのハーツの匂いに胸が高鳴る。顔を上げたら大好きなハーツが愛しいっていう目で見つめていてくれて、もう周りの状況なんて気にしていられないくらい、抱きしめてキスしたくてたまらなくなる。

「ハーツ」

 名を呼べば「ん?」っと返事をしてくれて、望んでいたキスが頬に触れ、位置をずらしながら軽いキスをされて、唇を合わせる。時折、見つめあって、愛しさを分け合って——抱き上げられて運ばれて行くと続く予感に高揚して、もうダメだった。周りなんて気にしているのはもったいない。ハーツが好き。ハーツに触れて欲しい。そればかりになって行く。

 ハーツから退出の指示が出されたのだろう。部屋にいた従者はいなくなっているし、ドアも閉められている。窓を閉めて鍵をして、カーテンまで閉めたのは、エルが戻って来た時に見られない為だ。紘伊が気にするのをハーツは分かっている。ハーツ的には、エルがチビで竜の姿だった時には気にしなかっただろ? と内心では思っている。エルの人化を見たから、エルが架空の生物から人に昇格し、気になり出した紘伊だった。

 たくさんキスをして、服を脱がされて、いっぱい触ってもらえる。獣毛を撫でて嗅いで痺れるほど喜びを感じている。抱き合うのも久しぶりで——堪えきれない体が何度もハーツを求めた。

「好きなんだ、ハーツ」

 ハーツは忙しいから紘伊と会わなくても時がすぐに過ぎるのだと思う。でも紘伊は待つばかりで、一日がとても長く感じている。種族の違いもあるんだろう。

「ここにいるか?」

 ハーツの誘いはとても魅力的だ。でも他の獣人にまだ道が繋がっている事を知られてはいけない。そういう政治的な駆け引きを紘伊は煩わしく思うけど、ハーツの生き方に口出しはしたくない。

 紘伊は首を振る。

「今は俺に集中して」

 せっかく会えたんだから、時間が許す限り愛して欲しい。

「愛してる、ハーツ」

 熱に浮かされ、涙目でハーツを見つめれば、内を満たす質量が増した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

処理中です...