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22 贈り物

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 子ども達が領地に戻るという日、紘伊の部屋に贈り物がたくさん届いた。

「子どもたちの親からお礼の品です」

「すごい数だね。日替わりだったけど7人だけだよ、見てたの。20個くらいない?」

「両親と子どもたちからです。上の方に手紙がありますので」

 そう言って執事が去って行く。とりあえず箱は開けずに置いておいて、手紙だけ読む事にした。

「すごいね、絵まで描いてくれてる」

 せんせいありがとう。また遊ぼうね。こんどはバラを見に行こうね。どれも可愛い絵がついている。思わず嬉しくて泣いてしまいそうだ。慌ただしい先生生活もたった7日で終わったのに、もう寂しい気がする。でも親からの手紙はなかった。嫌われているのか? 付き合うなと言われている? それなら子どもを近づけさせないだろうし、監視もなく預ける事はしないだろう。ただ単純に身分差のせいかもしれない。紘伊はただの人だ。ハーツの側にいられるのは、ハーツがまだ飽きていないからだ。近くにいる彼らには分かっているのかもしれない。紘伊がいつか捨てられる事を。

 すっかりやる事を無くしてしまった。仕方なく図書館へ向かう。すでにテーブルは片付けられていて、思い出の名残だけが胸に痛い。

 入口でランプを借りて読みかけの本を開く。静かだ。最初は静けさを喜んだのに。面倒だと思った日々が幸せだったのだと胸に響く。

「先生ごっこはおしまい?」

 足を蹴られた。不穏な空気にランプの火を消した。爬虫類の獣人と同じ感覚がする。

「どなたですか?」

 ここはホテルらしいけど、獅子の獣人以外に獣人の姿は見ていない。目の前に立つ彼もまた人の姿だ。

「そんなの言わなくても分かるだろう?」

 分からない。でも言い方や仕草に見覚えがある。

「ホテルの従業員の方ですか? それとも宿泊客の方? すみません、お邪魔な様でしたら戻りますので——」

 立ちあがろうとしたのに腹を蹴られた。何度か踏みつけられて変な声が出た。動けない所を上から伸し掛られて頬を張られる。何度か左右を叩かれて、前髪を掴まれて押しつけられた。

 見た目は人だけど違う。あの爬虫類の獣人だ。待機室で聞いた話を思い出した。獣人は人に成りすまして、人の中で監視をしている。

 おでこを押し付けられて、顔が迫って来る。嫌だ! 絶対に嫌だ!

「動くなよ、良いだろ? 一回くらい。あんなに大声で鳴いていたじゃないか。もうここは慣れたものだろ? 一回くらい俺がやったところでバレねえって」

 膝で足の間を押し上げられる。絶対に嫌だ。こんな奴に踏み躙られるなら、死んだ方がマシだ。

 ズボンを引き下ろされそうになる。足をバタつかせて抵抗する。声は出ない。うーううーと唸るくらい。誰か助けて! こんなの嫌だ! 昨日まで楽しかった場所が汚れてしまう。

 従業員がドアを開けた。でもどこかへ行ってしまった。客の行為を咎めるってルールがないのかもしれない。獣人国だ。力が全て、抗えないのは自身の弱さのせいとされるのかもしれない。
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