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23 軍総隊長
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上から重みが消え去り、すごい音がした。何度も音を聞いて、とにかく助かったのだと思って意識を手放した。
気づいたら天蓋付きのベッドの上だった。ハーツが横にいて、もうひとり獅子の獣人がいる。ハーツが体を起こしてくれて、鎮痛剤を飲ませてくれた。頬を冷やしてくれている手から氷を受け取って自分で冷やした。
「すまない、助けが遅れた」
知らない獣人に謝られた。
「いえ、ありがとうございました」
遅れても助けてくれた。もしあいつに何かされていたら、もうハーツの前に立てなかったと思うから。殴られるのはなんて事ない。
「子ども達を見てもらったお礼も済んでないのに、悪いな、こいつが戻るまではここにいるべきだった」
「ほんとに、大丈夫ですから」
彼ら誰かの親なんだろう。領地に戻る準備をしていただろうに、戻って助けてくれた。
「ありがとうございます、俺、あのまま——もし」
喉が鳴る。涙が溢れる。
「もう言うな、忘れろ」
ハーツがおでこにキスをくれた。頬が腫れて醜い顔になってると思うのに、優しい。より泣けて来る。
「ユウが世話になった。いずれまた会う時を楽しみにしているよ」
手を握られた。嬉しかった。ユウの父親に嫌われている訳ではなかった。
「贈り物、ありがとうございました。あとでゆっくり開けさせて頂きますね」
ハーツに抱きしめられる。ハーツの胸を借りて泣いた。彼らの側にいると子供染みてしまう。頼ってしまう。情けないと思うのに、縋ってしまう。
「あの種族の領地を陥す事にした」
抱きしめながら聞く言葉にしては重くて驚いた。
「陥して奪った所で他地に逃げるだけかもしれないが、見せしめにはなる」
「なんでそんな——」
「俺のものに手を出すとは馬鹿な奴らだ」
俺のもの? 思わず胸を掴んでハーツを見上げる。
「どうした?」
男臭く笑まれた。
「まさか自覚がなかったのか?」
腫れて不細工な頬を避けて、おでこにキスをされる。
「あの施設での行為はまだ人界との境だ、身請け前だったから言い訳も付かなかったが、今は違う。おまえは俺のだ」
その言葉だけで良いような気がする。そんな領地を陥すとか、物騒な話よりも愛されたい。
「口が痛い。キスして欲しいのに、その点はあいつらを恨むよ。でも物騒なのはいらない。そういうのは慣れてない」
「残念だが無理だろうな。キースにバレたからな」
「キースって?」
「さっきいたヤツ、ユウの親で俺の友人でウェルズ領軍の総隊長だ」
ウェルズ領とは、獅子族の領地の名だ。
「それって一番強いっていうか、すごいんじゃ」
「総隊長だからな」
ニヤッと笑むハーツが良い男すぎる。
「っていうかハーツは?」
「俺? 俺の身分はあってないようなものかな?」
「どういう意味?」
笑ってごまかされた。軽く口の先だけ口で触れ合わせてくるだけのキス。物足りない。その辺の不自由はあの爬虫類を恨むけど。本当に爬虫類の領地を奪うの? それって戦争ってこと? きっかけが紘伊を襲ったからってそんな理由で? 獣人社会のあり方が理解できない。
気づいたら天蓋付きのベッドの上だった。ハーツが横にいて、もうひとり獅子の獣人がいる。ハーツが体を起こしてくれて、鎮痛剤を飲ませてくれた。頬を冷やしてくれている手から氷を受け取って自分で冷やした。
「すまない、助けが遅れた」
知らない獣人に謝られた。
「いえ、ありがとうございました」
遅れても助けてくれた。もしあいつに何かされていたら、もうハーツの前に立てなかったと思うから。殴られるのはなんて事ない。
「子ども達を見てもらったお礼も済んでないのに、悪いな、こいつが戻るまではここにいるべきだった」
「ほんとに、大丈夫ですから」
彼ら誰かの親なんだろう。領地に戻る準備をしていただろうに、戻って助けてくれた。
「ありがとうございます、俺、あのまま——もし」
喉が鳴る。涙が溢れる。
「もう言うな、忘れろ」
ハーツがおでこにキスをくれた。頬が腫れて醜い顔になってると思うのに、優しい。より泣けて来る。
「ユウが世話になった。いずれまた会う時を楽しみにしているよ」
手を握られた。嬉しかった。ユウの父親に嫌われている訳ではなかった。
「贈り物、ありがとうございました。あとでゆっくり開けさせて頂きますね」
ハーツに抱きしめられる。ハーツの胸を借りて泣いた。彼らの側にいると子供染みてしまう。頼ってしまう。情けないと思うのに、縋ってしまう。
「あの種族の領地を陥す事にした」
抱きしめながら聞く言葉にしては重くて驚いた。
「陥して奪った所で他地に逃げるだけかもしれないが、見せしめにはなる」
「なんでそんな——」
「俺のものに手を出すとは馬鹿な奴らだ」
俺のもの? 思わず胸を掴んでハーツを見上げる。
「どうした?」
男臭く笑まれた。
「まさか自覚がなかったのか?」
腫れて不細工な頬を避けて、おでこにキスをされる。
「あの施設での行為はまだ人界との境だ、身請け前だったから言い訳も付かなかったが、今は違う。おまえは俺のだ」
その言葉だけで良いような気がする。そんな領地を陥すとか、物騒な話よりも愛されたい。
「口が痛い。キスして欲しいのに、その点はあいつらを恨むよ。でも物騒なのはいらない。そういうのは慣れてない」
「残念だが無理だろうな。キースにバレたからな」
「キースって?」
「さっきいたヤツ、ユウの親で俺の友人でウェルズ領軍の総隊長だ」
ウェルズ領とは、獅子族の領地の名だ。
「それって一番強いっていうか、すごいんじゃ」
「総隊長だからな」
ニヤッと笑むハーツが良い男すぎる。
「っていうかハーツは?」
「俺? 俺の身分はあってないようなものかな?」
「どういう意味?」
笑ってごまかされた。軽く口の先だけ口で触れ合わせてくるだけのキス。物足りない。その辺の不自由はあの爬虫類を恨むけど。本当に爬虫類の領地を奪うの? それって戦争ってこと? きっかけが紘伊を襲ったからってそんな理由で? 獣人社会のあり方が理解できない。
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