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3 願望と現実
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添い寝店を知ったのは、元職場の大学講師が獣人好きだったからだ。密かに獣人研究をしている彼は、この街で唯一獣人と触れ合える店を知っていて紹介してくれた。そんな彼でも添い寝以上の行為をした事がないらしく、会話をしても、獣人の存在に関わる事情は一切明かさなかったらしい。
紘伊はキツネの子と添い寝をしながら、獣人の国を夢想している。
紘伊にとって獣人とはファンタジー世界のもので、現実とは遠い存在だった。
一般に獣人の存在が明るみに出たのも20年前の事件によるもので、それまで政府は獣人の存在を秘密にしていた。
20年前、紘伊はまだ10歳で、事件の情報が動画で流されていても、それを現実に起こっている事とは思えていなかった。
紘伊の住む世界に現れた獣人は、屈強な虎の獣人で、海外のどこかの人を襲い、逃げる所を麻酔銃で撃たれ、取り囲んでいた軍の特殊部隊に取り押さえられ、拘束された。
まるで映画やドラマにしか見えなかった中継映像を見て、胸をときめかせたのは、特撮ヒーローを見る感覚だったのだと思う。でも獣人の存在が明かされ、ネット上に獣人の目撃情報が載せられるのを見るたびに、紘伊の中の獣人が現実味を帯びて行った。
そして30歳を迎え、夢が現実と重なりつつある。
添い寝店の獣人は、その店の特徴がらか、細身でふわふわな子が働いている。可愛い獣人は年齢不詳で未成年くらい若く見えた。
紘伊の好みは筋肉質で強そうなタイプで、大きな体に包まれてもふもふを堪能しながら抱かれたいと思っている。獣人カフェにいるような保護欲をかき立てられる相手ではなく、対等で信頼を築ける普段は友人という関係が好ましい。紘伊の年齢を考えると贅沢が過ぎるとは思っているが、今まで理想の相手に恵まれなかったから仕方がない。
添い寝店の店長は白ウサギなんだけど、話し方が静かで滑らかな声をしているからか、落ち着いた雰囲気だからか、店の中では一番年上に見える。だがタイプではない。
獣人を性の対象にしている紘伊は、店に行くたび内心ビクビクしている。出禁になったら獣人と出会う場所が消え去るからだ。
この世界に獣人は何人いる?
店舗にはおよそ30名ほどのバイトがいる。いったいどこから来ている? 秘密の地下通路でもあるのだろうか。この界隈で獣人の目撃情報を聞いた事がない。でも確実にバイトは入れ替わっている。
通算9回目の来店は3日我慢して耐えられなくなって向かった。
添い寝部屋は昼の12時から午後の3時までしか使えない。会話部屋は午後5時までだ。いかがわしい事を避ける為の時間なのだろうが、紘伊にはもの足りない。でも背に腹は変えられない。触れ合える時間を持てるだけでも貴重なのだと自身を言い含めている。
入店して最初に会うのが受付の白ウサギだ。会員証も何もなく、白ウサギの記憶のみに頼られる入店許可は、毎回緊張を強いられる。
人通りの少ない裏通りから細い道へ入り、地下へ続く階段を下って重いドアを開けて入る。カウンター内の白ウサギが微笑んでくれてやっと詰めた息を吐く事ができる。
「白石さんこんにちは」
「今日も可愛いね」
つい言ってしまった軽口も微笑みで受け流されたけど、いつもと違ったのは、その背後に見慣れない獣人が立っていた事だ。気づいた瞬間、逃げたくなった。なのにいつの間にか後ろにいた獣人に腕を掴まれていた。背の高い筋肉質の獣人だ。緊張を強いられる場面で無ければじっくり見たい。理想の体格の獣人だ。
「白石さん、すみません。こちらへ来て頂けますか?」
可愛らしい白ウサギの微笑みを見ても鼓動は別の意味で早鐘を打つ。両腕を背中で捕まれて連れて行かれる。カウンター内の奥にあるドアを潜った。
紘伊はキツネの子と添い寝をしながら、獣人の国を夢想している。
紘伊にとって獣人とはファンタジー世界のもので、現実とは遠い存在だった。
一般に獣人の存在が明るみに出たのも20年前の事件によるもので、それまで政府は獣人の存在を秘密にしていた。
20年前、紘伊はまだ10歳で、事件の情報が動画で流されていても、それを現実に起こっている事とは思えていなかった。
紘伊の住む世界に現れた獣人は、屈強な虎の獣人で、海外のどこかの人を襲い、逃げる所を麻酔銃で撃たれ、取り囲んでいた軍の特殊部隊に取り押さえられ、拘束された。
まるで映画やドラマにしか見えなかった中継映像を見て、胸をときめかせたのは、特撮ヒーローを見る感覚だったのだと思う。でも獣人の存在が明かされ、ネット上に獣人の目撃情報が載せられるのを見るたびに、紘伊の中の獣人が現実味を帯びて行った。
そして30歳を迎え、夢が現実と重なりつつある。
添い寝店の獣人は、その店の特徴がらか、細身でふわふわな子が働いている。可愛い獣人は年齢不詳で未成年くらい若く見えた。
紘伊の好みは筋肉質で強そうなタイプで、大きな体に包まれてもふもふを堪能しながら抱かれたいと思っている。獣人カフェにいるような保護欲をかき立てられる相手ではなく、対等で信頼を築ける普段は友人という関係が好ましい。紘伊の年齢を考えると贅沢が過ぎるとは思っているが、今まで理想の相手に恵まれなかったから仕方がない。
添い寝店の店長は白ウサギなんだけど、話し方が静かで滑らかな声をしているからか、落ち着いた雰囲気だからか、店の中では一番年上に見える。だがタイプではない。
獣人を性の対象にしている紘伊は、店に行くたび内心ビクビクしている。出禁になったら獣人と出会う場所が消え去るからだ。
この世界に獣人は何人いる?
店舗にはおよそ30名ほどのバイトがいる。いったいどこから来ている? 秘密の地下通路でもあるのだろうか。この界隈で獣人の目撃情報を聞いた事がない。でも確実にバイトは入れ替わっている。
通算9回目の来店は3日我慢して耐えられなくなって向かった。
添い寝部屋は昼の12時から午後の3時までしか使えない。会話部屋は午後5時までだ。いかがわしい事を避ける為の時間なのだろうが、紘伊にはもの足りない。でも背に腹は変えられない。触れ合える時間を持てるだけでも貴重なのだと自身を言い含めている。
入店して最初に会うのが受付の白ウサギだ。会員証も何もなく、白ウサギの記憶のみに頼られる入店許可は、毎回緊張を強いられる。
人通りの少ない裏通りから細い道へ入り、地下へ続く階段を下って重いドアを開けて入る。カウンター内の白ウサギが微笑んでくれてやっと詰めた息を吐く事ができる。
「白石さんこんにちは」
「今日も可愛いね」
つい言ってしまった軽口も微笑みで受け流されたけど、いつもと違ったのは、その背後に見慣れない獣人が立っていた事だ。気づいた瞬間、逃げたくなった。なのにいつの間にか後ろにいた獣人に腕を掴まれていた。背の高い筋肉質の獣人だ。緊張を強いられる場面で無ければじっくり見たい。理想の体格の獣人だ。
「白石さん、すみません。こちらへ来て頂けますか?」
可愛らしい白ウサギの微笑みを見ても鼓動は別の意味で早鐘を打つ。両腕を背中で捕まれて連れて行かれる。カウンター内の奥にあるドアを潜った。
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