【完結】出来損ないのオメガですが王族アルファに寵愛されてます~二度目の恋は天使と踊る~

高井うしお

文字の大きさ
17 / 82

7話 側にいる

しおりを挟む
「ロランド! ロランド!」

 レクスの声がする。ランは拭き掃除の手を止めて、レクスの元に行った。

「なぁに、レクス。ロランドさんならお使いに出てるけど」
「ボタンがとれた」
「ああ、じゃあ貸して」

 ランはレクスのシャツを受け取って、取れかけのボタンを縫いはじめた。

「上手だな」
「こういうのは昔から得意なんだ」

 レクスは横に座ってランの手つきをじっとみている。

「さ、できた」
「ありがとう」

 レクスはそのシャツを受け取って、着替えはじめた。

「いいなぁ、レクスは」
「なんだ?」
「体も大きくて筋肉もついてる。オレはひょろひょろだから」
「そうか、どれどれ」

 レクスの手がランの脇に差し込まれる。

「わっ」
「確かに。ちゃんと食ってるか?」
「食べてるよ。っていうか毎日みてるだろ」

 猫の子のようにプランと持ちあげられてランは足をバタバタして暴れた。

「ははは」
「遊ぶなって!」

 レクスはそれを面白そうに見ている。ひとしきり振り回されて、ランはようやく地面に下ろして貰えた。

「まったく!」
「おお怖い。じゃあ俺は出かけてくるから」
「どこに」
「例のごとく見合いだ」
「そっか」

 ランはその言葉に少しだけ胸がちくりとした。

「ラン?」
「あ、えっと。いってらっしゃい」
「……ああ」

 レクスはブツブツ言いながら部屋を出て行った。一人きりになった部屋で、ランはソファに寄りかかった。

「どうしたんだろ」

 ランは先程の胸の痛みを思い出した。ランはオメガでもベータでもない。誰かと、ましてやレクスと番うなんでありえない。だから見合いに行くレクスを止める権利もない。

「……俺は出来損ないだもの」

 ランは大きくため息をつくと、中庭の掃除に向かった。



「花の手入れも教えて貰わないとなぁ」

 ランは散りかけの薔薇を見ながらそう呟いた。

「いいように考えろ。レクスの友達でいられるのは俺がこうだからだし」

 もくもくと落ち葉を集めていると頭が冷静になってくる。

「愚痴を聞けるのはオレだけだし、な」

 レクスがあの仏頂面の仮面を剥いで、たまに子供っぽく我が儘を言うのもランの前だけだ。そしてランはそんなレクスの側にいるのが好きだった。
 ランがようやっと気分を切り替えた、その時だった。

「ねぇ、君!」

 どこかで聞き覚えのある声がした。ランが振り返ると、そこにはアレンが立っていた。

「あ、えっとアレン……様」
「やあ」

 アレンはランがぺこりとお辞儀をすると軽く微笑んで近寄ってきた。

「こんにちは、いい天気だね」
「は、はい」
「君、名前は?」
「ランといいます」
「そうか、君が……」

 アレンは値踏みをするような顔をしてランを見つめた。ランはその視線になんだか居心地が悪くなる。

「あの、あんまり……」
「レクスの隠してるお気に入りは君のことだろう?」
「え?」
「違うのかい? 部屋につれこんでずっと放さないと聞いたんだが」
「いや、その……オレはレクスの『友人』です」
「ふーん?」

 アレンは首を傾げながらランをまた見つめた。

「まあいいや。レクスのことでなにかあったら私に言うといいよ」
「それってどういう……」
「私は可愛い子のお願いはつい聞いちゃうのさ。ははは」

 ランはアレンの軽い調子になんだか調子が崩れると思った。

「じゃあね。また会おう、子猫ちゃん」
「はぁ……」

 アレンはそんなランの様子など歯牙にもかけずににこにこと微笑みながら去って行った。

「一体、なんなんだ……?」

 ランは首を傾げた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

処理中です...