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 ランのロランドの手伝いは存外楽しいものだった。なんでも気むずかしいレクスは自分の部屋にロランド以外を入れるのを拒否しているとかで前から人手は欲しかったと言う。

「ランさんが居てくれて大分助かっています」
「そうですか、良かった」

 ランは一日中アイロンがけや、掃除、庭の手入れなどに明け暮れた。そして夜はレクスの話を聞く。

「ラン、ここは慣れたか」
「うん。ロランドさんから給金を貰ったけど、こんなにいいの?」
「正当な報酬だ」
「そう?」

 ランの貰った給金は城下の相場の倍くらいはありそうだった。ありがたいけど、貰いすぎではないかと思ってしまう。

「面倒くさい王族のお世話にはそれくらい貰っていい」
「レクスったら」

 ランは真顔でそんなことを言うレクスの頭を軽く叩いた。

「オレはレクスの身の回りの世話が面倒だなんて思わないよ」

 ランがそう言うと、レクスは顔をクシャクシャにして笑った。

「そうか。なぁ、毎日仕事じゃ退屈だろう? どこかに出かけないか」
「出かける?」
「ああ。王都の郊外に別邸があるんだ。ボートもあるし、馬もいる」
「へぇ、オレ馬好きだよ」

 ランは実家にいた頃はよく乗馬をしていた。つぶらな黒い瞳をした茶色い馬がランの愛馬だった。

「じゃあ決まりだ」

 こうして二人は翌日郊外にでかけることにした。



「あー、風が気持ち良いな。ちょっと郊外に出ただけでこんな所があるんだね」
「古くからの王族の保養地らしい」
「へぇ」

 緑溢れる郊外の町から少しいったところにその別邸はあった。馬車からランは身を乗り出すようにして、その景色を見渡す。

「オレたちの住んでいた田舎みたいだね」
「王都もちょっといけばこんなもんだ」

 しばらくすると、馬車はこじんまりとした屋敷についた。

「レクス様、ランさん着きましたよ」

 馬車を操っていたロランドがそう二人に声をかける。

「一番乗り!」
「おい、ラン待てって」

 はしゃいで馬車から飛び出すランの後ろをレクスが少し呆れたように追いかけてきた。

「日当たりもいいし、いいところだね」
「ああ、久し振りに来たけどな」

 ランはすっと深呼吸をした。土と緑の匂いが濃い。

「お二人とも、今お茶を淹れますから」
「あ、オレ手伝います。ロランドさん」

 後から荷物を持って追いかけてきたロランドが二人にそう声をかける。ランはハッとしてロランドの後を追った。
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