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捜査最終日

111. 十一日目(謹慎三日)、虻沼の自宅にて

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「またぁ~虻沼さんの役満じゃんっ」
「こ、これで三度目だよ! いくら積み込みアリでも親になった時に
役満を連発されては、やる気が出ないし……」
「おまけに四暗刻(スーアンコウ)からの大三元(ダイサンゲン)、止め
は国士無双(コクシムソウ) と来たもんだ」
「お前ら、言いたいことはそれだけか? 出現率0.05%を2回出して
出現率0.04%の役満出しただけじゃねぇか。出現率0.0005%の九蓮
宝燈(チューレンポウトウ)が出た訳じゃあるまいし、いちいち大げさ
なんだよ 。それに俺が親になった時の約束を忘れてないよな?」
 虻沼は思いっきりテーブルを叩いて睨みを利かせる。

「俺の自宅で麻雀をするって事は、参加する人間は何人たりとも俺が
作ったルールの支配下にあるって事なんだ! 入会金を俺が一人ずつ
百万も肩代わりしたよなっ。お三方、違うかい!?」
「別に違わないよ。確かに俺たちは高レートに釣られて参加したよ。
最初は笑いが止まらない程、勝ちまくってて麻痺してたんだよな」
「そしたら、虻沼さんの親になったとたん、全てのツキが無くなった
みたいに三人とも勝てなくなっちまった。イカサマありという圧倒的
な有利の状況下で俺たち”サマ士”がまるで歯が立たない永久凍土へと
連れていかれちまうんだ。たまんないぜっ」

「しかも虻沼さんが親になった時に限り、特別ルールが発動する」
「それが厄介なんだ。虻沼さんが負けるまで。または本人が終わりを
告げるまで麻雀を終える事が出来ない恐怖の掟がある……」

「そうだよ。無様に負けては新たなイカサマを考えて挑むを繰り返す。
その全て返り討ちに合っている現状は惨め極まりないぜ」
「なぁ、虻さん。あんたは心眼を会得してるのかい!?」
「プフフッ。漫画じゃあるまいし、そんな大層なもんは持ち合わせて
るわけないだろ。勘違いも良いところだっ」
「じゃぁ、イカサマかい?」
「積み込みはやるが残りの2牌は運で引き寄せてるぜっ。まぁ俺が親
の時に一度でも役満で勝てたら種明かしをしても良いぜ。ちなみに、
隠しカメラとか、その手のイカサマは俺の美学には反するから、それ
だけはしていないと断言しとく」
 虻沼が使っているのは相手のアガった時の表情を全て記憶しており
、見なくても手にどの牌が何種類入っているのかを瞬時に見抜く術を
身に着けていたのだ。その力が授かったのは黒沢に半殺しにされて、
入院生活が終わっての息抜きで雀荘で一勝負した時だった。車椅子で
参加していたが相手の表情の微妙な変化が一万分の一レベルで分かる
ようになったという。虻沼は両足と引き換えに新たな能力を授かった
と認識している。

「俺たちのプライドを根こそぎ、へし折ってでも手に入れたい物があ
るんだよな?」
「……」
 虻沼は手に入れたい物についての質問には答えなかった。


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