黒庭 ～閉ざされた真実～

捜査最終日

９２. 十一日目（謹慎三日）、山城の告白⑪

（急に言いたい放題だな。この男は）
　最後まで話を聞いて貴重な情報が得られなかった場合は、
襟首を掴んで押し倒してしまうかもしれない衝動が沸き起こ
っていたが必死に抑え込む為に深呼吸を試みる後藤。

「後藤さんの腑に落ちない事の最後の一つである”ユカ”に関
してですが心配には及びませんよ」
「どうして、そう言い切れるんですか？」
「私が懸命にフォロー＆バックアップした甲斐もありまして
恋愛する間柄になりました。簡単な話ではありませんでした
けどね。マユミまで（全員）罰が終了と同時に一体誰のせい
と考えるようになり、両親のせいだと結論が出ると不良少女
への道を歩み始め、髪を金髪に染めて木刀を持ち歩くように
なり、レディース（暴走族の女性版）に入ってから悪さを繰
り返すようになり、交友資金を頻繁にせびるようになって、
親への暴行を繰り返すうちに所属していた族の幹部が捕まる
事件が起こったんです。幹部や仲間は、ユカが主犯であり、
協力しないと暴行を受けると脅されていたと証言しました。
当時のユカは、本当にヤンチャで無人で駐車中のパトカーの
テールランプを躊躇なく木刀で破壊してましたから警察も、
その話を鵜呑みにしてしまったんです。新たに信じた仲間達
から裏切られたのも堪えたと話してました。女子少年院へ送
られる事になって両親からも見放されてしまいましたが私は
毎日、通いました。台風の時も大雪の日も関係無くユカに会
いに行きました。面会時に私が持参した台風で曲がった傘と
明後日へと向いてるボサボサの髪型を見るとケラケラと腹を
抱えて笑いました。例の事件後、ユカの笑った顔を久しぶり
見ました。彼女はこの頃から僕に好意を抱いていたみたいで
す。その後、数十時間が経過して結婚に至ります」

「随分と濃い内容でしたけど冗談ではなくて結婚ですか！？」
「冗談をする話でも無いですから。本当の話です。まぁ現在
は離婚協議中なんですけどね……」
「一体何があったんですかっ？」
「妻にずっと隠していた私の性癖がバレてしまって夫婦間の
破綻の原因になってしまったんです」
「プライベートな事なので差し障りのない範囲で構いません」
　後藤は三分後、その言葉を出してしまった自分に強い後悔
の念を抱くに至る事となる。
「実は私の場合、男女間の性行為というのを受け付けない身
体でしてマスターベーションで無いとイケないんです。成人
している女性に対しては勃起には至らず、中学生の女子の裸
であれば普通に勃起する特殊な性癖でもあるんです」
「はぁ～。そういうもんですかね～。私には専門外なので、
他人の性癖に対して、どうこう言うつもりもありません」
「それは有り難いです。ロリコンと揶揄する輩もおりますの
で大きなお世話だって思います」
「で、その離婚に発展する原因と成り得るのはＰＣ内部に保
存された秘蔵のコレクション画像だったんでしょうか？」
「いえ、そういうのでは無くて私はアナログ派でして写真派
なんですよっ」
「そ、それって、もしかして例の写真ですか！？」
「えぇ、そうです。しかも丸見えの２枚目も入手してますよ。
僕は新しい女性の写真を入手すると古いのは処分する性分な
のでユカの裸の写真を初めて見た時の高揚感は相当なもので
したので御礼として彼女に救いの手を差し伸べる事にして、
ユカ命となりました」
　山城のニヤリとした顔に背筋がゾクゾクする後藤だった。