91 / 136
捜査最終日
91. 十一日目(謹慎三日)、山城の告白⑩
しおりを挟む
「全員に復讐が完了している気がするのですが、どうも腑に落ち
ない事が二つあります。一つは黒沢&庭村の二人は警察に疑われ
なかったのか? と最初に罰を受けたユカの心のダメージは計り
知れない気がして、その後がずっと気になっています」
「二人については当初、警察がマークしていましたが黒沢のアリ
バイが成立していたので早々と捜査対象から外してました。実は
黒沢には腹違いの弟が居まして至近距離でなければ見分けが付か
ない程、似ています。住んでいる所も苗字も違いますので弟の存
在にすら辿り着かなかったですね。それに事件の一週間前から、
カートレーシングスクールに通い始めているんですよ」
「レーシングスクールが何か関係があるんですか!?」
「えぇ、カートやF1をご存知の方なら想像しやすいのですが、
スピードを出来るだけ落とさずにギリギリまで攻めながらヘアピ
ンカーブを曲がる時にバランスが崩れるとスピンしてしまうんで
すけど事件があった日は必ず、教習コース最大の難所であるヘア
ピンカーブでスピンを起こしてしまうんです。コーチからは攻め
過ぎると大事故に繋がるから無理するなとは言われていたみたい
ですがヘアピン以外のドライビングセンスは抜群だそうで多少の
無茶もOKだったみたいです。実際、黒沢が走行した動画を運営
側がUPすると生徒数が二倍に跳ね上がったそうですから世の中、
分からないもんですよ」
「実際にはどうやって復習を実行できたんですか?」
「ヘアピンカーブでワザとスピンをして砂煙が待った状態中に待
機していた弟と交代して当日の復讐を終えたら再度、交代したい
場合に弟へ携帯電話での特殊合図(ワン切りの3秒後にまたワン
ギリ)の約束を交わしていたので何食わぬ顔で交代を済ませて、
走行していたそうです」
「腹違いの弟さんの引き受けた理由は何なんですか?」
「確か将来、医者になりたくて替え玉一回につき、高額のバイト
代を貰えるから喜んで引き受けたそうです」
「ちなみに時給っていくらです?」
「えーっと1時間一万円だった筈です」
想像以上の金額に目玉が飛び出そうになったが、がっつく姿を
見せないように会話を続ける後藤。
「それは飛び付くたくなるのも理解できますが二人の運転技術に
差が無かったのが不思議な話ですよね」
「それを説明するとなると黒沢の父親が本当にやりたかったのは
レーサーだったんですよ。その夢を選ぶなら親子の縁を切ると実
の父親に言われたのが、かなりショックだったみたいで実父が薦
める安定した公務員の道にシフトチェンジしたみたいです。趣味
でやる分には理解してくれていたので本気で怒らせた事を後悔し
ていたそうです」
「しかし、随分、家族関係にも詳しいですね」
「まぁ特技といいますかヤンチャな男子とは打ち解けるのも早い
んですよっ」
「話はまた戻りますが顔と運転技術が重要なポイントになりまし
たが恐らく遺伝でしょうな。それを見抜いていたのが庭村でした
がね……」
(この話で庭村の存在が強調されている。彼に只ならぬ怖さを感
じているのか?)
後藤は心情を悟れないように会話の続きをオーバーリアクショ
ンで続ける。
「教習コース最大の難所であるからして事件と同じ日であっても
疑われなかったと言うことですか……」
「えぇ、そういう事になりますかねぇ~」
「でも庭村の嫌疑がありますよね!?」
「警察は複数犯の犯行だと思ってましたから黒沢のアリバイが証
明された時点で庭村の嫌疑は晴れました」
「つまり捜査方針から外れて単独行動を取る刑事は居なかったっ
て事ですね?」
「私が聞いている範囲では一人も居なかったと思います。組織の
方針と真逆に突っ走る異端児は目の上のタンコブでしょうよ」
「そうですかっ。貴重な御意見をありがとうございます」
何とか平常心を保とうと努力していたが手で拳を強く握り握り
締めながら眉根が上がったままの状態で答えた後藤だった。
ない事が二つあります。一つは黒沢&庭村の二人は警察に疑われ
なかったのか? と最初に罰を受けたユカの心のダメージは計り
知れない気がして、その後がずっと気になっています」
「二人については当初、警察がマークしていましたが黒沢のアリ
バイが成立していたので早々と捜査対象から外してました。実は
黒沢には腹違いの弟が居まして至近距離でなければ見分けが付か
ない程、似ています。住んでいる所も苗字も違いますので弟の存
在にすら辿り着かなかったですね。それに事件の一週間前から、
カートレーシングスクールに通い始めているんですよ」
「レーシングスクールが何か関係があるんですか!?」
「えぇ、カートやF1をご存知の方なら想像しやすいのですが、
スピードを出来るだけ落とさずにギリギリまで攻めながらヘアピ
ンカーブを曲がる時にバランスが崩れるとスピンしてしまうんで
すけど事件があった日は必ず、教習コース最大の難所であるヘア
ピンカーブでスピンを起こしてしまうんです。コーチからは攻め
過ぎると大事故に繋がるから無理するなとは言われていたみたい
ですがヘアピン以外のドライビングセンスは抜群だそうで多少の
無茶もOKだったみたいです。実際、黒沢が走行した動画を運営
側がUPすると生徒数が二倍に跳ね上がったそうですから世の中、
分からないもんですよ」
「実際にはどうやって復習を実行できたんですか?」
「ヘアピンカーブでワザとスピンをして砂煙が待った状態中に待
機していた弟と交代して当日の復讐を終えたら再度、交代したい
場合に弟へ携帯電話での特殊合図(ワン切りの3秒後にまたワン
ギリ)の約束を交わしていたので何食わぬ顔で交代を済ませて、
走行していたそうです」
「腹違いの弟さんの引き受けた理由は何なんですか?」
「確か将来、医者になりたくて替え玉一回につき、高額のバイト
代を貰えるから喜んで引き受けたそうです」
「ちなみに時給っていくらです?」
「えーっと1時間一万円だった筈です」
想像以上の金額に目玉が飛び出そうになったが、がっつく姿を
見せないように会話を続ける後藤。
「それは飛び付くたくなるのも理解できますが二人の運転技術に
差が無かったのが不思議な話ですよね」
「それを説明するとなると黒沢の父親が本当にやりたかったのは
レーサーだったんですよ。その夢を選ぶなら親子の縁を切ると実
の父親に言われたのが、かなりショックだったみたいで実父が薦
める安定した公務員の道にシフトチェンジしたみたいです。趣味
でやる分には理解してくれていたので本気で怒らせた事を後悔し
ていたそうです」
「しかし、随分、家族関係にも詳しいですね」
「まぁ特技といいますかヤンチャな男子とは打ち解けるのも早い
んですよっ」
「話はまた戻りますが顔と運転技術が重要なポイントになりまし
たが恐らく遺伝でしょうな。それを見抜いていたのが庭村でした
がね……」
(この話で庭村の存在が強調されている。彼に只ならぬ怖さを感
じているのか?)
後藤は心情を悟れないように会話の続きをオーバーリアクショ
ンで続ける。
「教習コース最大の難所であるからして事件と同じ日であっても
疑われなかったと言うことですか……」
「えぇ、そういう事になりますかねぇ~」
「でも庭村の嫌疑がありますよね!?」
「警察は複数犯の犯行だと思ってましたから黒沢のアリバイが証
明された時点で庭村の嫌疑は晴れました」
「つまり捜査方針から外れて単独行動を取る刑事は居なかったっ
て事ですね?」
「私が聞いている範囲では一人も居なかったと思います。組織の
方針と真逆に突っ走る異端児は目の上のタンコブでしょうよ」
「そうですかっ。貴重な御意見をありがとうございます」
何とか平常心を保とうと努力していたが手で拳を強く握り握り
締めながら眉根が上がったままの状態で答えた後藤だった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
不動の焔
桜坂詠恋
ホラー
山中で発見された、内臓を食い破られた三体の遺体。 それが全ての始まりだった。
「警視庁刑事局捜査課特殊事件対策室」主任、高瀬が捜査に乗り出す中、東京の街にも伝説の鬼が現れ、その爪が、高瀬を執拗に追っていた女新聞記者・水野遠子へも向けられる。
しかし、それらは世界の破滅への序章に過ぎなかった。
今ある世界を打ち壊し、正義の名の下、新世界を作り上げようとする謎の男。
過去に過ちを犯し、死をもってそれを償う事も叶わず、赦しを請いながら生き続ける、闇の魂を持つ刑事・高瀬。
高瀬に命を救われ、彼を救いたいと願う光の魂を持つ高校生、大神千里。
千里は、男の企みを阻止する事が出来るのか。高瀬を、現世を救うことが出来るのか。
本当の敵は誰の心にもあり、そして、誰にも見えない
──手を伸ばせ。今度はオレが、その手を掴むから。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる