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18.聖人の務め②
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冗談半分の会話をして二人で肩を揺らすと、ジレーザは口元を覆っている布を取り払い、美しく整った顔を晒してから、静かに唇を重ねて依斗の中に魔力を流し込んでいく。
全身が痺れるような感覚に、依斗は込み上げる劣情に任せて一層激しく舌を搦めてジレーザを貪るが、一方的な魔力の譲渡は体力をも奪われるのか、ジレーザは舌を噛んで興奮を抑えろと促す。
静かな部屋に、鼻から漏れる艶かしい息遣いが響き、僅かな衣擦れの音ですら大きな音のように、依斗とジレーザの官能を刺激するが、これはあくまでも闘いに向けた仕込みだ。
「このくらいで良かろう」
淫らな銀糸を引いて唇が離れると、ジレーザの指が銀糸ごと依斗の唇を拭う。
その仕草があまりにも淫靡で、依斗は耐え切れずにまたキスをしようとするが、ジレーザの容赦ない一喝に遮られて泣く泣くキスを我慢する。
「お前はそうだよな、そういうヤツだよな」
「愚痴るな。すべてが終わってから相手をしてやる」
「あら大胆」
「抜かせ、痴れ者が」
答えとは裏腹に笑顔を浮かべるジレーザにつられて、依斗も笑顔を浮かべると、終わらせようと確認し合って抱き締め合い、いよいよ腹を括って部屋を出た。
侵攻してきた魔獣は二体、各地で暴徒化していた民衆は想定通り魔力を吸い上げられて、派遣された神官たちの保護下に移った。
そしてピアリスの目前に迫った魔獣は融合して一体の巨大な魔物に姿を変えると、凄まじい音量の咆哮を上げてピアリスを守るために張られた結界を破壊しに掛かる。
結界の維持を図るジレーザと解散し、ピアリスに住まう住人たちの避難誘導にあたるリュミナスともその場で別れると、依斗は一人で魔物の元に向かう。
「さてと。じゃあ、行きますか」
ピアリスに張り巡らされた結界の外に出ると、そこに立ち込める重たく息が詰まる圧迫感に耐えながら、なんとか両足を踏ん張って深呼吸して集中力を高めていく。
魔物の討伐は当然のことだが、まずは外部結界を破壊しないことには、この瘴気の吹き溜まりをどうすることも出来ない。
「お前の相手はこっちだぞ! と」
依斗は抜刀からの一太刀を魔物の足に浴びせると、全力疾走で注意を引きつけながら、続けて浮遊魔法で浮上して空から攻撃を仕掛けて市街地の広場へと誘導する。
「そうだ! こっちに来い」
魔力は出来る限り聖剣に使いたいところなので、地上に降りて応戦する体勢に入ると、ゴツゴツした足の角度のある傾斜を利用してそこを駆け上り、懐に入り込んで力の限りの一振りを叩き込む。
耳を劈く咆哮が聞こえると、払い除けられそうになった腕から逃げるように反対側の足に飛び移り、そこを駆け降りて裏手に回り込み腱を叩き切る。
バランスを崩して魔物が倒れると、広場の周りの家屋や商店を薙ぎ倒して土埃が舞い上がって死骸が悪くなった。
咄嗟に依斗は浮遊魔法で上空に移動すると、土埃の中心で地べたに倒れたまま蠢く魔物に焦点を絞って、〈ネグロシス〉を振り下ろすように一閃を描く。
そしてまた地上に降りると、倒れた体を足掛かりに近接攻撃を仕掛け、爆風が上がると浮遊して上から攻撃することを何度も繰り返した。
一気に枯渇することを恐れて、魔力を制御しながら聖剣を振るって来たが、いよいよ体が痺れて目も霞んできた。
そしてなにより特有の、異常にムラムラする感覚が迫り上がってきて、こんな時なのに下半身が疼いて仕方ない。
「そろそろヤバいな」
依斗は〈ネグロシス〉を鞘に戻すと、深呼吸して集中力を高め、体の中に残った魔力をすべて注ぎ込むイメージ〈ネグロシス〉のグリップに手を掛ける。
ここまで追い込みはしたが、最後の一撃で浄化まで持ち込める保証がない。
けれどその考えを首を振って否定すると、この一撃で決めると腰を深く落とし、深呼吸をして一気に抜刀する。
静かで、それでいて力強い一閃が、横たわってもがき苦しむ魔物を、見たこともない量の光の斬撃で真一文字に切り裂いていく。
「やったか?」
剣を薙ぎ払った勢いで暴風が巻き起こり、瓦礫もろとも朽ちた魔物の体が風に呑み込まれると、吹き上がった風は天を突き抜けるほど上昇していき、上空高くに張られた結界をも突き破る。
依斗は地面に輝きを失った〈ネグロシス〉の刀身を突き立てると、もう一人では立っていられない体を支えて片膝をついてしゃがみ込む。
「あぁあ、ヤリてえ」
全身が痺れるような感覚に、依斗は込み上げる劣情に任せて一層激しく舌を搦めてジレーザを貪るが、一方的な魔力の譲渡は体力をも奪われるのか、ジレーザは舌を噛んで興奮を抑えろと促す。
静かな部屋に、鼻から漏れる艶かしい息遣いが響き、僅かな衣擦れの音ですら大きな音のように、依斗とジレーザの官能を刺激するが、これはあくまでも闘いに向けた仕込みだ。
「このくらいで良かろう」
淫らな銀糸を引いて唇が離れると、ジレーザの指が銀糸ごと依斗の唇を拭う。
その仕草があまりにも淫靡で、依斗は耐え切れずにまたキスをしようとするが、ジレーザの容赦ない一喝に遮られて泣く泣くキスを我慢する。
「お前はそうだよな、そういうヤツだよな」
「愚痴るな。すべてが終わってから相手をしてやる」
「あら大胆」
「抜かせ、痴れ者が」
答えとは裏腹に笑顔を浮かべるジレーザにつられて、依斗も笑顔を浮かべると、終わらせようと確認し合って抱き締め合い、いよいよ腹を括って部屋を出た。
侵攻してきた魔獣は二体、各地で暴徒化していた民衆は想定通り魔力を吸い上げられて、派遣された神官たちの保護下に移った。
そしてピアリスの目前に迫った魔獣は融合して一体の巨大な魔物に姿を変えると、凄まじい音量の咆哮を上げてピアリスを守るために張られた結界を破壊しに掛かる。
結界の維持を図るジレーザと解散し、ピアリスに住まう住人たちの避難誘導にあたるリュミナスともその場で別れると、依斗は一人で魔物の元に向かう。
「さてと。じゃあ、行きますか」
ピアリスに張り巡らされた結界の外に出ると、そこに立ち込める重たく息が詰まる圧迫感に耐えながら、なんとか両足を踏ん張って深呼吸して集中力を高めていく。
魔物の討伐は当然のことだが、まずは外部結界を破壊しないことには、この瘴気の吹き溜まりをどうすることも出来ない。
「お前の相手はこっちだぞ! と」
依斗は抜刀からの一太刀を魔物の足に浴びせると、全力疾走で注意を引きつけながら、続けて浮遊魔法で浮上して空から攻撃を仕掛けて市街地の広場へと誘導する。
「そうだ! こっちに来い」
魔力は出来る限り聖剣に使いたいところなので、地上に降りて応戦する体勢に入ると、ゴツゴツした足の角度のある傾斜を利用してそこを駆け上り、懐に入り込んで力の限りの一振りを叩き込む。
耳を劈く咆哮が聞こえると、払い除けられそうになった腕から逃げるように反対側の足に飛び移り、そこを駆け降りて裏手に回り込み腱を叩き切る。
バランスを崩して魔物が倒れると、広場の周りの家屋や商店を薙ぎ倒して土埃が舞い上がって死骸が悪くなった。
咄嗟に依斗は浮遊魔法で上空に移動すると、土埃の中心で地べたに倒れたまま蠢く魔物に焦点を絞って、〈ネグロシス〉を振り下ろすように一閃を描く。
そしてまた地上に降りると、倒れた体を足掛かりに近接攻撃を仕掛け、爆風が上がると浮遊して上から攻撃することを何度も繰り返した。
一気に枯渇することを恐れて、魔力を制御しながら聖剣を振るって来たが、いよいよ体が痺れて目も霞んできた。
そしてなにより特有の、異常にムラムラする感覚が迫り上がってきて、こんな時なのに下半身が疼いて仕方ない。
「そろそろヤバいな」
依斗は〈ネグロシス〉を鞘に戻すと、深呼吸して集中力を高め、体の中に残った魔力をすべて注ぎ込むイメージ〈ネグロシス〉のグリップに手を掛ける。
ここまで追い込みはしたが、最後の一撃で浄化まで持ち込める保証がない。
けれどその考えを首を振って否定すると、この一撃で決めると腰を深く落とし、深呼吸をして一気に抜刀する。
静かで、それでいて力強い一閃が、横たわってもがき苦しむ魔物を、見たこともない量の光の斬撃で真一文字に切り裂いていく。
「やったか?」
剣を薙ぎ払った勢いで暴風が巻き起こり、瓦礫もろとも朽ちた魔物の体が風に呑み込まれると、吹き上がった風は天を突き抜けるほど上昇していき、上空高くに張られた結界をも突き破る。
依斗は地面に輝きを失った〈ネグロシス〉の刀身を突き立てると、もう一人では立っていられない体を支えて片膝をついてしゃがみ込む。
「あぁあ、ヤリてえ」
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