聖女召喚でなぜか呼び出された、もう30のお兄さん(自称)ですが、異世界で聖人することにしました。

藜-LAI-

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10.邪竜(股間)の咆哮②

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 言葉尻は冷静だが、明らかに不快なものを見るような冷めた視線をぶつけられ、依斗は思わずジレーザに言い返す。
「好きでチンコ押っ立ててる訳じゃない。そのケダモノでも見るような目は止めろ」
「そのように言われましても。まさかとは思いますが、この三日ずっとなのですか」
「だから好きでチンコ勃起させてる訳じゃないだろ。抜いても抜いてもチンコの勃起が治まらないから困ってんだよ」
「その……露骨な表現はおやめいただけませんでしょうか」
「露骨って、ああ。チンコって言うなってこと?」
「ですからヨリト様」
「チンコはチンコだろ」
「連呼しないでください」
「聖職者だからって、お前にもついてるだろ」
「同じにしないでいただきたい」
「なにお前、チンコ勃たない人なの?」
「そう言う話ではありません」
「お前もやっぱり勃つんじゃん、チ……てぃんこ?」
「あぁああっ、喧しい、ふざけるな!」
 ふざけた調子の依斗に対してついに堪忍袋の緒が切れたのか、ジレーザは大声で叫ぶように吐き捨てると、少し冷静になったのか小さく咳払いをする。
「お静かになさいませ」
「怒鳴ったのお前だけどな」
「ヨリト様……」
「下ネタがダメなのか。それともてぃんこが気に入らなかったのか。どうしたジレーザ」
「どうしたではありません。おふざけになるのはおやめください」
「ふざけてないだろ、死活問題だよ!」
 ベッドの上で膝立ちになった依斗の下半身を覆うブランケットが、荒ぶる邪竜に引っ掛かって、一糸纏わぬ姿よりも生々しい光景がそこに生まれる。
「ですから、その穢らわしいナニをお収めください」
「治まらないって言ってんだろ」
「見えないように配慮してください!」
 ジレーザが再び叫んでお茶と食事が乗ったままのワゴンを叩くと、その勢いでワゴンが静かに前進してベッドにぶつかって止まる。
 改めて訪れた気まずい沈黙に、相反して荒ぶる邪竜を鎮めるようにブランケットで覆い隠すと、依斗はベッドの端に座って仕方なく膝を抱える。
「それで? お前は説教しに来たのか」
「そのようなつもりはありません」
「だったらなんだよ。聖剣を使った代償なんだから、俺を責めても仕方ないだろ」
「そうは申されますが、三日もそのような状態であれば、それは明らかに異常です」
「お前な、言うに事欠いて俺を絶倫呼ばわりかよ。女の子に乱暴働いた訳でもなく、ただひたすら独りで抜いてただけなのに」
「ですからヨリト様、そういった露骨な表現はおやめください」
 げんなりした様子でジレーザが頭を抱えると、そんな顔をしたいのはこっちの方だと依斗が口を開く。
「おやめくださいじゃないだろ。抜いても抜いても勃起して、困ってんのは俺だぞ」
「それはお気の毒に」
「お前なあ」
 これでは埒が明かない。
 そもそも聖剣を使えばこういったことが起こり得ることを、ジレーザだって認識していたにも拘らず、聖職者という立場からなのか依斗に侮蔑を込めた厳しい目を向ける。
 一方で依斗の体は、噴火し続けるマグマが涸れる気配はなく、我慢をしてその場凌ぎで対処出来れば三日も部屋にはこもらない。
 男同士なのだから、生娘みたいに騒がないで欲しいと思ってから、依斗はそういえばジレーザの年齢を知らないことに気付く。
 同じくらいだろうと勝手に思っていたが、ある程度の大人なら、性的興奮など理性的に抑えられると普通は考えるし、ジレーザもその可能性がある。
「そもそもお前、歳は幾つだよ」
「私の歳を聞いてどうなさるのです」
「いや、理性でどうにか出来ると思い込んでそうだから、そんな顔して心は枯れたオッサンなのかと」
「はあ」
 ジレーザはあからさまな溜め息を吐き出すと、くだらないとばかりに嫌そうな目をする。
「その目止めろって」
「……二十八です」
「お前、その若さでもう、枯れ果てたのか」
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