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第九章【間章】『ゴムの実』奇譚(若き日の追憶)
第184話 にっぽん爺、人生の絶頂期!
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アッチカイ系列の風呂屋と言う大口販売先を手に入れたにっぽん爺は、『ゴムの実』の売上げをどんどん増やしていったんだって。
その頃のコンカツは、『泡姫サプライチェーン』を王都近郊の大きな町にも展開していたそうで。
にっぽん爺は、そのすべてのお風呂に『ゴムの実』を供給したから凄い売り上げになったみたい。
売上げだけではなく、にっぽん爺には余禄もあったらしいよ。
風呂屋と取引を始めた当初のこと。
『ゴムの実』を使ったのに病気になったり、孕んだりという事故が何件か発生したんだって。
コンカツが、「話が違うじゃないか」と苦情を言って来たそうなんだけど…。
原因を調べたら、全部泡姫のお姉ちゃんの落ち度だと分かったらしいの。
その落ち度は大きく分けて三つ。
まず一つが、新人泡姫を中心に『ゴムの実』の『皮』の先端部分に空気が溜まったまま使っていたケース。
最中に破裂して無意味になるので、絶対に空気が入らないようにとチラシで注意しておいたらしいけど。
扱いに慣れていないものだから、上手く空気を抜けなかったらしいの。
二つ目が、オシャレな泡姫のお姉ちゃんを中心に長い爪で扱っていたケース。
これもチラシに赤字で注意してたけど、爪の先で『ゴムの実』の『皮』を破っちゃうんだって。
そして、三つ目、このくらいは大丈夫だろうと油断して、『ゴムの実』の『皮』を使う前に接触したケース。
最後の方だけ使ったんだって…、だから『最後の方』って一体何の最後よ?
これも、にっぽん爺はチラシで注意してあったって言ってたよ。
病気は少しの接触でもうつることがあるし、孕みも十分には防げないから、最初から使うようにって。
コンカツと話し合った結果、『ゴムの実』の正しい使い方を徹底しようと言うことになったみたい。
具体的に何をしたかと言うと…。
新人泡姫の『初見世』前に、にっぽん爺が『実演指導』することになったんだって。
さっきの三つを含めて、『ゴムの実』を正しく使えるようになるまで徹底的にね。
にっぽん爺は、これが一番の役得だったって言ってた。
で、にっぽん爺の『ゴムの実』利権を奪い取ろうと狙っていた冒険者たちの方だけど…。
にっぽん爺のバックに広域指定冒険者ギルド『アッチカイ』が付いたと知れると、誰も手が出せなくなったみたい。
にっぽん爺の方はその時も冒険者ギルドの事は嫌いで、傘下に入ったつもりは全くなかったそうだけどね。
実際、『アッチカイ』本部へは行ったこともないし、取引したこともなかったみたいだし。
ただ、コンカツが、風呂屋の支配人のままアッチカイの若頭補佐に出世したらしくてね。
にっぽん爺がコンカツと懇意にしていたから、周りが勝手に思い込んだみたい。
にっぽん爺の『ゴムの実』を使うようになってから、アッチカイ系の風呂屋では人気泡姫の定着率が上がって。
売上げが急増したみたいで、コンカツはトントン拍子に出世していったんだって。
それでも、依然としてにっぽん爺は、カウンターだけの安い酒場でコンカツと酒を酌み交わしていたらしい。
コンカツは、にっぽん爺に心酔してたようなんだ。
『泡姫サプライチェーン』のヒントをくれたり、『ゴムの実』を融通してくれたからね。
何かにつけにっぽん爺に相談してきたんだって、特に何か良い新事業は無いかとか。
その頃のコンカツは、風呂屋だけではなく、色街関係の仕事を全て任されるようになっていたみたいなの。
にっぽん爺は、『にっぽん』での知識を活かして色々なアドバイスをしてあげたらしいよ。
風呂屋よりライトなサービスの『エステ』とか、直接的な接触は無くて見るだけの『きゃんぎゃる茶屋』とか。
にっぽん爺の出した案はどれも大ヒットしたらしくてね。
いつしか王都の色街界隈では、こんな二つ名で呼ぶようになったみたい。
コンカツを『夜の帝王』、その知恵袋のにっぽん爺を『夜の仕掛け人』と。
にっぽん爺は、コンカツから雇われている訳でもないし。
ギルドとは一線を画したかったんで一切お金はもらわなかったそうなの。
それでも、コンカツはにっぽん爺の大恩に何か報いたかったようで、…。
にっぽん爺が大のお風呂好きだと知ると、『VIP優待券』と銘打った銀の薄い板をくれたんだって。
アッチカイ系の風呂屋であればどの店でも、『全部のせ』サービスが無料で受けられるんだって。
しかも、無期限。日本爺は、仕事が終わると毎晩風呂屋に通っていたらしいよ。
『今思えば、あの頃が人生の絶頂期だって』って、穏やかな表情で懐かしそうに言ってたよ。
「何だ、爺さん、あんた、『知識チート』使いまくりかよ。
薄幸そうな振りして、こっちの世界でも結構良い思いしてるじゃないか。
でもよ、また何で、こんな辺境で慎ましい生活しているんだ。
冒険者ギルドに裏切られでもしたのか?」
そうそれ、おいらもにっぽん爺の話を聞いて、それを思っていたんだよ。
そんな大成功を収めたなら、こんな片田舎で貧乏生活していること無いんじゃないかって。
**********
「いいや、コンカツはそれはロクでもない男だったが…。
私を裏切るような事は無かったよ。
律儀に最後まで味方で、私をこの地に逃してくれたのもコンカツだから。
私は、いや、私達はやり過ぎてしまったのだよ。」
にっぽん爺は過去を悔やんでいる様子も無く、懐かしそうな目をして言ったの。
にっぽん爺が何をやり過ぎたかと言うと、一時、王都周辺を中心に社会通念の変革をもたらしてしまったそうなの。
モラルの崩壊という…。
にっぽん爺の『ゴムの実』ビジネスだけど、アッチカイの風呂屋に販売する以外は依然として訪問販売だけだったそうなの。
最初は店舗を出そうかと思ったらしいけど、コンカツに回していたら供給が追い付かなくて会員分を賄うのがやっとだったみたい。
それに、若いお姉さんを中心にお店で買うのが恥ずかしいと訴える人が多くて、訪問販売を続けて欲しいとの要望が強かったらしいよ。
それでも、初期に比べて会員数は何倍にもなっていて、一日の販売数も二千個を超えるようになるとにっぽん爺だけでは対応できなくて。
訪問販売員を雇ったらしいよ、もちろん、全員女の人。
訪問販売を続ける理由の一つが店で買うのが恥ずかしいと言うお姉さんのためだもの、男の人が売りに行ったら意味ないからね。
にっぽん爺も、中庭だけでなく敷地いっぱいに広がってしまった『ゴムの実』の棚の世話で手一杯になって。
『訪問販売』の方は、新規入会希望の人を中心とした『実演販売』以外は出来なくなっていたそうだよ。
何でも、当時、にっぽん爺の『実演販売』はとても評判が良くて、お客さんからちょくちょく要望されたらしいの。
最終的には、これがにっぽん爺の首を絞めたらしいけど、それはまだ後の話。
それは最初、やっぱり、『風呂屋』から始まったそうだよ。
その頃の泡姫の姉ちゃんは夕方から翌朝まで働くのが慣例で、『風呂屋』も夕方から翌朝までの営業だったらしいの。
にっぽん爺は、ある日、酒を酌み交わしながらコンカツに話したそうなの。
「自由出勤?」
「ああ、考えてみなさい。
お客さんだって、夜働いていて昼間家にいる者だって居るのだ。
今の営業時間だと、そんなお客さんを逃しているじゃないか。
だから、少しの時間だけ泡姫をしてくれるご婦人を募集して昼の間も営業するのだよ。
小遣い銭稼ぎで、少しの時間だけなら泡姫をしたいと希望するご婦人がいるかも知れないじゃないか。
午前中だけとか、昼間だけとか、仕事が休みの日だけとか。
そのために、泡姫を一日中拘束するのではなく、自由な時間働いてもらうのだ。
もちろん、個室の空きとか、出勤予定の泡姫をお客さんに周知する都合とかもあるから。
当日自由な時間に来るのではなく、例えば十日毎に出勤希望日時を聞き取って調整するとかしてな。」
にっぽん爺の提案は専業の泡姫だけでなく、少しの空き時間に泡姫をしてくれる人を募集しようと言うの。
『ゴムの実』の導入で、『病気』や『孕み』の恐れが小さくなったので抵抗感も和らいだのではないかと。
「和人さん、あんた、天才じゃないですか!
そんな事は考えたこともなかったですよ。
その案、頂きました!さっそく、明日からでも検討してみましょう!」
コンカツはにっぽん爺の提案に飛び付いたらしいよ。
これにはにっぽん爺も協力して、こんなチラシの案を作ってあげたんだって。
にっぽん爺って、制服のデザインをしたり絵が上手いでしょう。
『にっぽん』という国で流行っているデフォルメ絵と言うのを使って。
可愛い三頭身の女の子がこんなことを言っているチラシなんだって。
『明るい職場で、私達と一緒に働きませんか?
衛生的な個室で、ちょっとしたサービスをするお仕事です。
一日三時間から、好きな時間だけ働いてもらえます。
毎日でなくても大丈夫、休みの日だけでももちろんOK。
二十五歳までの女の方なら誰でも、気軽にきてくださいね♡』
チラシの余白には、給金の条件とか、ちょっとしたサービスのもう少し詳しい内容とかが書いてあって。
ちゃんと、『ゴムの実』を使うので、病気とかの心配は要らないと書いてあったらしいよ。
それはとてもポップなチラシで、『風呂屋』の泡姫が持つ暗いイメージを払拭するものだったらしいの。
それまでの泡姫と言うと、お金に困って売られてきた娘と言うマイナスのイメージがあったんだって。
このチラシをコンカツは、王都にある家という家に手あたり次第ばら撒いたんだって。
他にも、大通りで若い女の人に手渡しでばら撒いたみたい、イケメン酒場のオニイチャンを使って。
このチラシが大ヒットで、泡姫をしたいと言うお姉さんがたくさん集まったらしいよ。
昼間に旦那さんが働きに行ってる若奥さんが来たり、休日に給金の安い下働きの娘さんが来たりとか。
お客さんの方でも、昼間行けば素人みたいな恥じらいを見せる泡姫が沢山いると評判になって…。
昼間の時間帯でも、夜に引けを取らない数のお客さんが来るようになって大盛況だったって。
ここで忘れちゃいけないのは、『ゴムの実』って果物だよ。あくまで、果肉を食べる物なの。
にっぽん爺の話では、『催淫効果』と言う、男女問わず元気になっちゃう効果があるらしいけど。
それで、何故か知らないけど、『風呂屋』の個室には必ず『ゴムの実』が二つ置いてあるんだって。
『風呂屋』は二回がデフォだと意味不明な事をにっぽん爺は言ってたけど…。
ともかく『皮』が二つ必要なんで、お客さんと泡姫が一つずつ食べるんだって。
二つお客さんに食べさせると、元気になり過ぎちゃって困るらしいの。二回じゃ済まなくなるって…。
ところが、にっぽん爺の言うところの強力な『催淫効果』ってのが曲者なんだって。
ちょっとした小遣い稼ぎの軽い気持ちで泡姫になったお姉さんが、『ゴムの実』の『催淫効果』にハマっちゃって。
そのまま、本職の泡姫になる人が続出したらしいんだ。
それが王都のモラル崩壊の始まり、にっぽん爺の転落人生の始まりだったって。
その頃のコンカツは、『泡姫サプライチェーン』を王都近郊の大きな町にも展開していたそうで。
にっぽん爺は、そのすべてのお風呂に『ゴムの実』を供給したから凄い売り上げになったみたい。
売上げだけではなく、にっぽん爺には余禄もあったらしいよ。
風呂屋と取引を始めた当初のこと。
『ゴムの実』を使ったのに病気になったり、孕んだりという事故が何件か発生したんだって。
コンカツが、「話が違うじゃないか」と苦情を言って来たそうなんだけど…。
原因を調べたら、全部泡姫のお姉ちゃんの落ち度だと分かったらしいの。
その落ち度は大きく分けて三つ。
まず一つが、新人泡姫を中心に『ゴムの実』の『皮』の先端部分に空気が溜まったまま使っていたケース。
最中に破裂して無意味になるので、絶対に空気が入らないようにとチラシで注意しておいたらしいけど。
扱いに慣れていないものだから、上手く空気を抜けなかったらしいの。
二つ目が、オシャレな泡姫のお姉ちゃんを中心に長い爪で扱っていたケース。
これもチラシに赤字で注意してたけど、爪の先で『ゴムの実』の『皮』を破っちゃうんだって。
そして、三つ目、このくらいは大丈夫だろうと油断して、『ゴムの実』の『皮』を使う前に接触したケース。
最後の方だけ使ったんだって…、だから『最後の方』って一体何の最後よ?
これも、にっぽん爺はチラシで注意してあったって言ってたよ。
病気は少しの接触でもうつることがあるし、孕みも十分には防げないから、最初から使うようにって。
コンカツと話し合った結果、『ゴムの実』の正しい使い方を徹底しようと言うことになったみたい。
具体的に何をしたかと言うと…。
新人泡姫の『初見世』前に、にっぽん爺が『実演指導』することになったんだって。
さっきの三つを含めて、『ゴムの実』を正しく使えるようになるまで徹底的にね。
にっぽん爺は、これが一番の役得だったって言ってた。
で、にっぽん爺の『ゴムの実』利権を奪い取ろうと狙っていた冒険者たちの方だけど…。
にっぽん爺のバックに広域指定冒険者ギルド『アッチカイ』が付いたと知れると、誰も手が出せなくなったみたい。
にっぽん爺の方はその時も冒険者ギルドの事は嫌いで、傘下に入ったつもりは全くなかったそうだけどね。
実際、『アッチカイ』本部へは行ったこともないし、取引したこともなかったみたいだし。
ただ、コンカツが、風呂屋の支配人のままアッチカイの若頭補佐に出世したらしくてね。
にっぽん爺がコンカツと懇意にしていたから、周りが勝手に思い込んだみたい。
にっぽん爺の『ゴムの実』を使うようになってから、アッチカイ系の風呂屋では人気泡姫の定着率が上がって。
売上げが急増したみたいで、コンカツはトントン拍子に出世していったんだって。
それでも、依然としてにっぽん爺は、カウンターだけの安い酒場でコンカツと酒を酌み交わしていたらしい。
コンカツは、にっぽん爺に心酔してたようなんだ。
『泡姫サプライチェーン』のヒントをくれたり、『ゴムの実』を融通してくれたからね。
何かにつけにっぽん爺に相談してきたんだって、特に何か良い新事業は無いかとか。
その頃のコンカツは、風呂屋だけではなく、色街関係の仕事を全て任されるようになっていたみたいなの。
にっぽん爺は、『にっぽん』での知識を活かして色々なアドバイスをしてあげたらしいよ。
風呂屋よりライトなサービスの『エステ』とか、直接的な接触は無くて見るだけの『きゃんぎゃる茶屋』とか。
にっぽん爺の出した案はどれも大ヒットしたらしくてね。
いつしか王都の色街界隈では、こんな二つ名で呼ぶようになったみたい。
コンカツを『夜の帝王』、その知恵袋のにっぽん爺を『夜の仕掛け人』と。
にっぽん爺は、コンカツから雇われている訳でもないし。
ギルドとは一線を画したかったんで一切お金はもらわなかったそうなの。
それでも、コンカツはにっぽん爺の大恩に何か報いたかったようで、…。
にっぽん爺が大のお風呂好きだと知ると、『VIP優待券』と銘打った銀の薄い板をくれたんだって。
アッチカイ系の風呂屋であればどの店でも、『全部のせ』サービスが無料で受けられるんだって。
しかも、無期限。日本爺は、仕事が終わると毎晩風呂屋に通っていたらしいよ。
『今思えば、あの頃が人生の絶頂期だって』って、穏やかな表情で懐かしそうに言ってたよ。
「何だ、爺さん、あんた、『知識チート』使いまくりかよ。
薄幸そうな振りして、こっちの世界でも結構良い思いしてるじゃないか。
でもよ、また何で、こんな辺境で慎ましい生活しているんだ。
冒険者ギルドに裏切られでもしたのか?」
そうそれ、おいらもにっぽん爺の話を聞いて、それを思っていたんだよ。
そんな大成功を収めたなら、こんな片田舎で貧乏生活していること無いんじゃないかって。
**********
「いいや、コンカツはそれはロクでもない男だったが…。
私を裏切るような事は無かったよ。
律儀に最後まで味方で、私をこの地に逃してくれたのもコンカツだから。
私は、いや、私達はやり過ぎてしまったのだよ。」
にっぽん爺は過去を悔やんでいる様子も無く、懐かしそうな目をして言ったの。
にっぽん爺が何をやり過ぎたかと言うと、一時、王都周辺を中心に社会通念の変革をもたらしてしまったそうなの。
モラルの崩壊という…。
にっぽん爺の『ゴムの実』ビジネスだけど、アッチカイの風呂屋に販売する以外は依然として訪問販売だけだったそうなの。
最初は店舗を出そうかと思ったらしいけど、コンカツに回していたら供給が追い付かなくて会員分を賄うのがやっとだったみたい。
それに、若いお姉さんを中心にお店で買うのが恥ずかしいと訴える人が多くて、訪問販売を続けて欲しいとの要望が強かったらしいよ。
それでも、初期に比べて会員数は何倍にもなっていて、一日の販売数も二千個を超えるようになるとにっぽん爺だけでは対応できなくて。
訪問販売員を雇ったらしいよ、もちろん、全員女の人。
訪問販売を続ける理由の一つが店で買うのが恥ずかしいと言うお姉さんのためだもの、男の人が売りに行ったら意味ないからね。
にっぽん爺も、中庭だけでなく敷地いっぱいに広がってしまった『ゴムの実』の棚の世話で手一杯になって。
『訪問販売』の方は、新規入会希望の人を中心とした『実演販売』以外は出来なくなっていたそうだよ。
何でも、当時、にっぽん爺の『実演販売』はとても評判が良くて、お客さんからちょくちょく要望されたらしいの。
最終的には、これがにっぽん爺の首を絞めたらしいけど、それはまだ後の話。
それは最初、やっぱり、『風呂屋』から始まったそうだよ。
その頃の泡姫の姉ちゃんは夕方から翌朝まで働くのが慣例で、『風呂屋』も夕方から翌朝までの営業だったらしいの。
にっぽん爺は、ある日、酒を酌み交わしながらコンカツに話したそうなの。
「自由出勤?」
「ああ、考えてみなさい。
お客さんだって、夜働いていて昼間家にいる者だって居るのだ。
今の営業時間だと、そんなお客さんを逃しているじゃないか。
だから、少しの時間だけ泡姫をしてくれるご婦人を募集して昼の間も営業するのだよ。
小遣い銭稼ぎで、少しの時間だけなら泡姫をしたいと希望するご婦人がいるかも知れないじゃないか。
午前中だけとか、昼間だけとか、仕事が休みの日だけとか。
そのために、泡姫を一日中拘束するのではなく、自由な時間働いてもらうのだ。
もちろん、個室の空きとか、出勤予定の泡姫をお客さんに周知する都合とかもあるから。
当日自由な時間に来るのではなく、例えば十日毎に出勤希望日時を聞き取って調整するとかしてな。」
にっぽん爺の提案は専業の泡姫だけでなく、少しの空き時間に泡姫をしてくれる人を募集しようと言うの。
『ゴムの実』の導入で、『病気』や『孕み』の恐れが小さくなったので抵抗感も和らいだのではないかと。
「和人さん、あんた、天才じゃないですか!
そんな事は考えたこともなかったですよ。
その案、頂きました!さっそく、明日からでも検討してみましょう!」
コンカツはにっぽん爺の提案に飛び付いたらしいよ。
これにはにっぽん爺も協力して、こんなチラシの案を作ってあげたんだって。
にっぽん爺って、制服のデザインをしたり絵が上手いでしょう。
『にっぽん』という国で流行っているデフォルメ絵と言うのを使って。
可愛い三頭身の女の子がこんなことを言っているチラシなんだって。
『明るい職場で、私達と一緒に働きませんか?
衛生的な個室で、ちょっとしたサービスをするお仕事です。
一日三時間から、好きな時間だけ働いてもらえます。
毎日でなくても大丈夫、休みの日だけでももちろんOK。
二十五歳までの女の方なら誰でも、気軽にきてくださいね♡』
チラシの余白には、給金の条件とか、ちょっとしたサービスのもう少し詳しい内容とかが書いてあって。
ちゃんと、『ゴムの実』を使うので、病気とかの心配は要らないと書いてあったらしいよ。
それはとてもポップなチラシで、『風呂屋』の泡姫が持つ暗いイメージを払拭するものだったらしいの。
それまでの泡姫と言うと、お金に困って売られてきた娘と言うマイナスのイメージがあったんだって。
このチラシをコンカツは、王都にある家という家に手あたり次第ばら撒いたんだって。
他にも、大通りで若い女の人に手渡しでばら撒いたみたい、イケメン酒場のオニイチャンを使って。
このチラシが大ヒットで、泡姫をしたいと言うお姉さんがたくさん集まったらしいよ。
昼間に旦那さんが働きに行ってる若奥さんが来たり、休日に給金の安い下働きの娘さんが来たりとか。
お客さんの方でも、昼間行けば素人みたいな恥じらいを見せる泡姫が沢山いると評判になって…。
昼間の時間帯でも、夜に引けを取らない数のお客さんが来るようになって大盛況だったって。
ここで忘れちゃいけないのは、『ゴムの実』って果物だよ。あくまで、果肉を食べる物なの。
にっぽん爺の話では、『催淫効果』と言う、男女問わず元気になっちゃう効果があるらしいけど。
それで、何故か知らないけど、『風呂屋』の個室には必ず『ゴムの実』が二つ置いてあるんだって。
『風呂屋』は二回がデフォだと意味不明な事をにっぽん爺は言ってたけど…。
ともかく『皮』が二つ必要なんで、お客さんと泡姫が一つずつ食べるんだって。
二つお客さんに食べさせると、元気になり過ぎちゃって困るらしいの。二回じゃ済まなくなるって…。
ところが、にっぽん爺の言うところの強力な『催淫効果』ってのが曲者なんだって。
ちょっとした小遣い稼ぎの軽い気持ちで泡姫になったお姉さんが、『ゴムの実』の『催淫効果』にハマっちゃって。
そのまま、本職の泡姫になる人が続出したらしいんだ。
それが王都のモラル崩壊の始まり、にっぽん爺の転落人生の始まりだったって。
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