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第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記

第43話 えっ!そんなことが!

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「さて、マロン、あなたが知りたいと言ったことは全部話したわよ。
 今度は、私が聞く番よ。
 あなた、どうやってワイバーンなんて倒したの?
 危ないことをしたらダメっていつも言ってるでしょう。
 私、マロンにもしものことがあったらと思うと気が気でないわ。」

 レベルの話が済むと、ワイバーンのことを尋ねてくるアルト。
 おいらのことを心配してくれているみたいだ。

「ゴメンね、心配させて。
 でも、おいらも好きでワイバーンと戦った訳じゃないんだ。
 町の広場を歩いてたら急に襲ってきて逃げられなかったの。
 もうダメかと思ったら、『回避』と『クリティカル』が発動して…。
 気が付いたら倒してたんだ。
 子供のおいらが倒したってバレると、大事になるでしょう。
 慌てて『積載庫』に隠したんだよ。」

 おいらは、ワイバーンに襲われたの日のことをアルトに話したんだけど…。
 アルトったら、おいらの顔を見詰めて呆然としているの。

「マロン、あなた、『積載庫』を解禁しただけじゃなくて。
 『回避』と『クリティカル』まで極めちゃったの、信じられない…。」

「うん? でも、おいら、毎日スキルの実ばっかり食べてたから。
 五歳の頃から、三食ずっと食べてれば上がるんじゃないの?」

 特に、父ちゃんがいなくなってから、しばらくはスキルの実しか食べてなかったし。

「まあ、マロンはスキルの実の正しい食べ方に気付いていましたからね。
 その二つは、完熟する前の実を食べ続けたら、レベル十になっても三百%アップにしかならないのよ。
 何故か、人間てスキルの実を取ったらすぐに食べるものだと思ってるでしょう。
 だから、人間は『回避』と『クリティカル』の有効性に気付けないのよね。
 両方とも、極めたらとってもお得なスキルなのにね。
 特に、『クリティカル』なんて、『クリティカル・ダメージアップ』と組み合わせた…。
 って、マロン、あなた、『クリティカル・ダメージアップ』の実も食べてなかった?
 もしかして…。」

「うん、ずっと食べてた。
 アルトの想像通り、この間、レベル十になったよ。
 『クリティカル・ダメージ』三千%アップでしょう。」

 おいらの返事を聞いたアルトは呆然としてとしちゃったよ。
 自分からふってきたのに…。

「あっきれた…。
 マロンったら、もう無敵じゃない。
 『強靭』でも持ってない限り、太刀打ちできないわ…。」

「えっ、アルト、『強靭』ってなにか効果あるの?
 あれって、効果がわからない『呪い』と言われてるんだけど。」

 『強靭』って見た目からすると、打たれ強くなりそうだけど。
 それじゃあ、『防御力アップ』とどこが違うのって話になっちゃう。
 それで実際のところ、『防御力アップ』って凄く効果的で、その『実』は無茶苦茶高いんだって。

 巷で伝わっている昔話だけど。
 まだ、スキルの知識が広まっていない頃、『強靭』って打たれ強くなるスキルだと思った人がいたんだって。
 『強靭の実』もご多聞に漏れず無茶苦茶苦いそうだけど、頑張って食べてレベル五まで上げたんだって。
 なんで、レベル五までかと言うと、巷ではレベル五でいっぱしと言われているから。

 その人はレベルゼロの普通の人なんだけど、『強靭』の効果に期待してうさぎの突進を受けたんだって。
 あえなく玉砕。
 それ以降、レベルゼロのうさぎの突進すら耐えられない『ゴミスキル』と言われるようになったそうだよ。
 苦行のような思いをして不味い『実』を食べ続けてレベルを上げても意味がないって。

 実際、『強靭』って、ちゃんと発動しているかも分からないらしいよ。

「あっ、あれ、解り難いスキルよね。
 『強靭度○○%アップ』ってなってるけど、『強靭度』って意味不明だもんね。
 まあ、『強靭』に関して言えば、『ゴミスキル』と言えば『ゴミスキル』なのよ。
 でも、極めれば、マロンの天敵となるわ。
 『強靭』のレベル十の効果って、『クリティカル攻撃無効』だもの。
 それで、やっと分かったんだけど、『強靭度』ってクリティカルに対する耐性なのよね。
 ホント、バカみたいなスキルよね。
 千回攻撃を受けて一回あるかどうかも分からないクリティカルに備えたスキルなんて。
 効果が実感できる訳ないじゃない。」

 なんて、ピンポイントなスキル…、クリティカルにしか効かないなんて。
 千回に一回って、そんなに攻撃を受けたら、スキルの恩恵を受ける前に死んでるって。
 でも、アルトの言う通り、『強靭』を極めたモノを相手にすると、おいらは無力だね。
 おいらの攻撃がすべてクリティカルになって、それが全部無効化されちゃうんだもん。

「でも、何でアルトはそれを知ってるの?
 そのスキルをレベル十まで上げた人間はいないって言われてるんだけど。
 妖精の中にはレベル十まで上げた記録があるのかな?」

「えっ?
 私、『強靭』持ってるわよ、レベル十。
 あの『実』、さくらんぼみたいでとっても美味しいのよ。」

 美味しいって、それだけの理由で『ゴミスキル』の実を食べたの?
 あっ、おいらも似たようなもんか…。

     ********

「でも、アルト、貴重なスキル枠をそんな『ゴミスキル』で埋めちゃって良いの?」

 貴重なスキル枠を全部『ゴミスキル』で埋めちゃったおいらが言える立場じゃないけどね。

「え? 貴重なスキル枠?
 マロン、あなた、何言ってるの。
 今、私、スキル枠、十個以上あるわよ。
 あっ、マロン、今日初めてレベルを上げたばかりだから確認してないか。
 ちょっと、スキルを確認して見なさい。」

 アルトの指示に従ってスキルを確認すると…。
 えっ!

「アルト、なんか、スキル枠が増えてるよ、四つ。」

「そう、スキルって、レベルが十上がる毎に一つ枠が増えていくの。
 マロンの場合、レベル四十まで上がったから四つ増えたのね。
 喜びなさい、新たなスキルを獲得できるわよ。」

 何と、レベルとスキルの間にそんな関係があったなんて。
 でも、アルト、スキル枠が十個以上って…。どんだけ高レベルなの?

「ねえ、アルト。
 妖精って、殺生はご法度だよね。
 アルトも血生臭いのは嫌いだっていつも言ってるよ。
 でも、スキル枠が十個以上あるって…。」

「あら、そこに気付いた?
 私も、何百年も生きているのですもの。
 若い頃に、ちょっと、ヤンチャした頃もあったのですわ。」

 ヤンチャって…、いったい、どんだけったの…。

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