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第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常
第23話 妖精の光珠
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*本日、お昼に1話投稿しています。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
********
「ねえ、マロン。
この男、本当に大丈夫なの、オツム?
何か、変な笑い声をあげて…。
キターーーーーー!とか叫んでたわよ。」
ビリビリが少し引き気味に、タロウから距離を取って尋ねて来たよ。
その気持ちはわかる、今のタロウの言動はおいらもキモかったよ。
「大丈夫なのって聞かれても、…。
おいらには良く分かんないよ。
おいらの目には、大分手遅れに見えるんだけど。
にっぽん爺は、普通は二、三年もほっぽっとけば治るって言うし。」
何か、変な妄想をして騒いでいるようだけど。
そのうち、現実に帰ってくるよね。
おいらは、タロウが変な妄想に浸っている間にビリビリにおねだりをしたの。
「ねえ、ビリビリ。
このピカピカ玉、光らなくなっちゃった。
また、ビリビリってお願いできる?」
腰に付けた布袋から、手のひら大の水晶のような玉を出して言ったの。
「何よ、そのピカピカ玉って。
ビリビリとか、ピカピカとか。
もう大きくなったんだからちゃんと名前を覚えなさい。
それは、ピカピカ玉じゃなくて、妖精の光珠。
私はビリビリじゃなくて、アルトローゼンよ。」
「名前はちゃんと覚えてるよ。
でも、アルトローゼンって長いよ、発音し難いし。」
「ふっ、仕方ないわね。
じゃあ、マロンには特別、私をアルトと呼ばせてあげるわ。
光栄に思いなさい、私をその名で呼べるのはお母様だけなのよ。」
「わかった、アルトだね。
うん、呼びやすくて助かる。」
と言うことで、これからビリビリのことはアルトと呼ぶことになったよ。
じゃなくて、肝心なことを忘れちゃいけない。
「それで、アルト、こーじゅに力を注いでちょうだい。」
「こーじゅって…。
仕方ない子ね、まあ、ピカピカ玉よりは良いですか。」
おいらから、光珠を受け取ったアルトは危ないからと言って少し離れたの。
そして、…。
バリ、バリ、バリ!
さっき、タロウに食らわせたみたいに、アルトの力を光珠に注いだの。
「ほら、これでまた半月やそこらはもつでしょう。」
「ありがとう、アルト!
これがあるとすごく助かるよ。」
力が満たされた光珠を受け取って、おいらはとってもご機嫌だ。
********
「うん、マロン、それは何だ?」
妄想の世界から現実に戻ってきたようで、タロウが妖精の宝珠について聞いて来たの。
「これ、これはアルトからもらったこーじゅ。
周りが暗くなると、明るく光るんでとっても便利なんだ。」
そう、これはアルトの持つビリビリの力を光に変えて明るく輝く不思議な玉なの。
アルトの力を貯め込むことができて、一度満タンに力を込めると半月くらいは光るの。
妖精族の秘宝の一つで、とっても貴重な物らしいけど。
ロウソクなんかよりずっと明るいし、何より火事の心配がないのが助かるの。
「おっ、良いモノもってるな。
それ、俺も欲しいぜ。
どれどれ、見せてみろよ。」
物珍しそうにおいらの持つ光珠に手を伸ばしたタロウ。
「あっ、バカ!」
おいらが止める間もなく、光珠に触れて…。
バリ、バリ、バリ!
「うぎゃああああああ!」
雷のような音と共に、青白い閃光がタロウに向けて走ったんだ。
タロウは地面に倒れて、ピクピクと痙攣してる。
まったく、懲りない人、ちゃんと人の話は聞かないと…。
「ふむ、盗難防止機能はちゃんと働いているようですね。
良い実験が出来ました。」
この光珠、持ち主の登録が出来るらしいの。
登録された持ち主以外の人が触れると、盗難防止機能が働くんだって。
それが、さっきのビリビリ。
込められた妖精族の力が、ビリビリになって盗難者を撃退するって。
祟りがあると言われる妖精族、その秘宝を盗もうなんて愚か者は普通いないよね。
だから、この盗難防止機能って今まで働いたことが無かったんだって。
タロウが、愚か者第一号だね。
「良い実験じゃあないよ…。
タロウ、ピクピクしてるじゃない。
それに、こーじゅに込められた力、大分減っちゃってんじゃない?」
「他人の物に許しもなく手を出そうとしたのですから自業自得ですわ。
だいたい、妖精族の秘宝なんておいそれと手に入る訳ないでしょう。」
アルトは地面に倒れ伏したタロウを呆れた目で見ながら言ったの。
そして、おいらの手のひらから光珠を抱え上げると、少し離れて力を込め直してくれたんだ。
「はい、これ。
満タンに込め直しておいたわ。
これからは、迂闊に他人に見せたらダメよ。
人間って欲深いんだから。
いつ奪おうとする者が現れるか分からないからね。」
「はーい!もう、人前では出さないようにするよ。
力を込め直してくれて有り難う。」
おいらも、まさか、タロウがいきなり手を伸ばすとは思わなかったよ。
タロウのような迂闊な人もいるから、アルトの忠告通り人前では使わない方が良いね。
********
「ううっ、イテテ…。
ちょっと触ったくらいで、今の仕打ちはひでーだろう。」
しばらくして、タロウがぶーたれながら起き上がった。
良かった、大したことはないみたい。
「マロンの物に勝手に触れたのですから自業自得でしょう。」
愚痴るタロウをアルトは冷たく突き放したの。
「でもよー、そんな便利なものがあるなら欲しいじゃん。
俺、昨日初めてローソクで夜を過ごしたんだけど。
あんな暗くて、狭い空間しか照らせないなんて知らなかったぜ。
ローソクってやつは、ホント不便だぜ。
なあ、俺にもその玉、一つ寄こせよー。」
あっ、また図々しい事を…。
「妖精の光珠は、妖精族の秘宝なの。
おいそれと、外の者に与えるモノじゃないわ。
私の一族でこれを上げたヒトはマロンだけ。
幼いマロンにはロウソクに火を灯すのも一苦労だし。
子供の一人暮らしですから、火の不始末で火事になったら大変しょう。
だから、マロンには特別に与えたのよ。
あなた、余り図々しい事を言うとここへの立ち入り許可も取り消すわよ。」
あっ、アルト、怒ってる。
こめかみの血管がピクピクしてるよ。
「ちぇ、つれねーな。わかったよ。
少しくらいは異世界人に優しくしてくれても良いじゃねえか。
もしかしたら、俺が世界を救う勇者になるかも知れないのに。」
渋々と引き下がったタロウ、愚痴りながらまた妄言を吐いてる。
すると、アルトが耳元に寄って来て耳打ちしたんだ。
「ゴメン、マロン。
ちょっと雷撃が強すぎてタロウのオツムが壊れたかも。
何か、『世界を救う勇者』とか妄言にしても酷いこと言ってるわ。
どうしよう…、もう一発食らわせれば正常に戻るかな。」
あっ、それは止めて、トドメになるかもしれないから。
このくらいの妄言は昨日から言ってるんで、気にしたら負けだよ。
壊れてるとしたら、最初からだから。
それを伝えたら、アルトは呆れてため息をもらしてたよ。
まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
よろしくお願いいたします。
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「ねえ、マロン。
この男、本当に大丈夫なの、オツム?
何か、変な笑い声をあげて…。
キターーーーーー!とか叫んでたわよ。」
ビリビリが少し引き気味に、タロウから距離を取って尋ねて来たよ。
その気持ちはわかる、今のタロウの言動はおいらもキモかったよ。
「大丈夫なのって聞かれても、…。
おいらには良く分かんないよ。
おいらの目には、大分手遅れに見えるんだけど。
にっぽん爺は、普通は二、三年もほっぽっとけば治るって言うし。」
何か、変な妄想をして騒いでいるようだけど。
そのうち、現実に帰ってくるよね。
おいらは、タロウが変な妄想に浸っている間にビリビリにおねだりをしたの。
「ねえ、ビリビリ。
このピカピカ玉、光らなくなっちゃった。
また、ビリビリってお願いできる?」
腰に付けた布袋から、手のひら大の水晶のような玉を出して言ったの。
「何よ、そのピカピカ玉って。
ビリビリとか、ピカピカとか。
もう大きくなったんだからちゃんと名前を覚えなさい。
それは、ピカピカ玉じゃなくて、妖精の光珠。
私はビリビリじゃなくて、アルトローゼンよ。」
「名前はちゃんと覚えてるよ。
でも、アルトローゼンって長いよ、発音し難いし。」
「ふっ、仕方ないわね。
じゃあ、マロンには特別、私をアルトと呼ばせてあげるわ。
光栄に思いなさい、私をその名で呼べるのはお母様だけなのよ。」
「わかった、アルトだね。
うん、呼びやすくて助かる。」
と言うことで、これからビリビリのことはアルトと呼ぶことになったよ。
じゃなくて、肝心なことを忘れちゃいけない。
「それで、アルト、こーじゅに力を注いでちょうだい。」
「こーじゅって…。
仕方ない子ね、まあ、ピカピカ玉よりは良いですか。」
おいらから、光珠を受け取ったアルトは危ないからと言って少し離れたの。
そして、…。
バリ、バリ、バリ!
さっき、タロウに食らわせたみたいに、アルトの力を光珠に注いだの。
「ほら、これでまた半月やそこらはもつでしょう。」
「ありがとう、アルト!
これがあるとすごく助かるよ。」
力が満たされた光珠を受け取って、おいらはとってもご機嫌だ。
********
「うん、マロン、それは何だ?」
妄想の世界から現実に戻ってきたようで、タロウが妖精の宝珠について聞いて来たの。
「これ、これはアルトからもらったこーじゅ。
周りが暗くなると、明るく光るんでとっても便利なんだ。」
そう、これはアルトの持つビリビリの力を光に変えて明るく輝く不思議な玉なの。
アルトの力を貯め込むことができて、一度満タンに力を込めると半月くらいは光るの。
妖精族の秘宝の一つで、とっても貴重な物らしいけど。
ロウソクなんかよりずっと明るいし、何より火事の心配がないのが助かるの。
「おっ、良いモノもってるな。
それ、俺も欲しいぜ。
どれどれ、見せてみろよ。」
物珍しそうにおいらの持つ光珠に手を伸ばしたタロウ。
「あっ、バカ!」
おいらが止める間もなく、光珠に触れて…。
バリ、バリ、バリ!
「うぎゃああああああ!」
雷のような音と共に、青白い閃光がタロウに向けて走ったんだ。
タロウは地面に倒れて、ピクピクと痙攣してる。
まったく、懲りない人、ちゃんと人の話は聞かないと…。
「ふむ、盗難防止機能はちゃんと働いているようですね。
良い実験が出来ました。」
この光珠、持ち主の登録が出来るらしいの。
登録された持ち主以外の人が触れると、盗難防止機能が働くんだって。
それが、さっきのビリビリ。
込められた妖精族の力が、ビリビリになって盗難者を撃退するって。
祟りがあると言われる妖精族、その秘宝を盗もうなんて愚か者は普通いないよね。
だから、この盗難防止機能って今まで働いたことが無かったんだって。
タロウが、愚か者第一号だね。
「良い実験じゃあないよ…。
タロウ、ピクピクしてるじゃない。
それに、こーじゅに込められた力、大分減っちゃってんじゃない?」
「他人の物に許しもなく手を出そうとしたのですから自業自得ですわ。
だいたい、妖精族の秘宝なんておいそれと手に入る訳ないでしょう。」
アルトは地面に倒れ伏したタロウを呆れた目で見ながら言ったの。
そして、おいらの手のひらから光珠を抱え上げると、少し離れて力を込め直してくれたんだ。
「はい、これ。
満タンに込め直しておいたわ。
これからは、迂闊に他人に見せたらダメよ。
人間って欲深いんだから。
いつ奪おうとする者が現れるか分からないからね。」
「はーい!もう、人前では出さないようにするよ。
力を込め直してくれて有り難う。」
おいらも、まさか、タロウがいきなり手を伸ばすとは思わなかったよ。
タロウのような迂闊な人もいるから、アルトの忠告通り人前では使わない方が良いね。
********
「ううっ、イテテ…。
ちょっと触ったくらいで、今の仕打ちはひでーだろう。」
しばらくして、タロウがぶーたれながら起き上がった。
良かった、大したことはないみたい。
「マロンの物に勝手に触れたのですから自業自得でしょう。」
愚痴るタロウをアルトは冷たく突き放したの。
「でもよー、そんな便利なものがあるなら欲しいじゃん。
俺、昨日初めてローソクで夜を過ごしたんだけど。
あんな暗くて、狭い空間しか照らせないなんて知らなかったぜ。
ローソクってやつは、ホント不便だぜ。
なあ、俺にもその玉、一つ寄こせよー。」
あっ、また図々しい事を…。
「妖精の光珠は、妖精族の秘宝なの。
おいそれと、外の者に与えるモノじゃないわ。
私の一族でこれを上げたヒトはマロンだけ。
幼いマロンにはロウソクに火を灯すのも一苦労だし。
子供の一人暮らしですから、火の不始末で火事になったら大変しょう。
だから、マロンには特別に与えたのよ。
あなた、余り図々しい事を言うとここへの立ち入り許可も取り消すわよ。」
あっ、アルト、怒ってる。
こめかみの血管がピクピクしてるよ。
「ちぇ、つれねーな。わかったよ。
少しくらいは異世界人に優しくしてくれても良いじゃねえか。
もしかしたら、俺が世界を救う勇者になるかも知れないのに。」
渋々と引き下がったタロウ、愚痴りながらまた妄言を吐いてる。
すると、アルトが耳元に寄って来て耳打ちしたんだ。
「ゴメン、マロン。
ちょっと雷撃が強すぎてタロウのオツムが壊れたかも。
何か、『世界を救う勇者』とか妄言にしても酷いこと言ってるわ。
どうしよう…、もう一発食らわせれば正常に戻るかな。」
あっ、それは止めて、トドメになるかもしれないから。
このくらいの妄言は昨日から言ってるんで、気にしたら負けだよ。
壊れてるとしたら、最初からだから。
それを伝えたら、アルトは呆れてため息をもらしてたよ。
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