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第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常

第24話 ビックリ! おいらの名前が付いていた…

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 その日は、渋々光珠を諦めたタロウを連れて町へ戻って来たの。
 本当は、物知りのアルトに、レベルとか金貨のことを相談したかったけど。
 タロウがいるから、止めておいたんだ。
 そのうち、タロウがいない時に相談してみよう。

 町に戻った私はタロウをスライム屋に案内したの。
 せっかくスライムを捕まえても、売る場所を知らないと困るものね。

 町の一角にあるスライム屋の扉を潜り。

「おっちゃん、こんにちは。
 今日は、スライム捕りの初心者を連れて来たの。
 スライム買い取ってあげて。」

 おいらは薄暗い店の奥に向かって声を掛けたんだ。

「おや、マロンじゃないか。
 久しぶりだな、最近はスライムは捕らないのか。
 おっちゃん、マロンを見かけないもんだから心配してたんだ。
 一人暮らしで不自由はしてないかい。」

 店の奥から、人の良さそうな笑顔で現れたスライム屋のおっちゃん。
 一人暮らしをしてるおいらのことを、いつも気遣ってくれる親切なおっちゃんだ。

「気遣ってくれて有り難う、おっちゃん。
 最近、シューティング・ビーンズ狩りで稼げるようになったから。
 ゴハンもちゃんと食べられるし、何一つ不自由ないよ。」

「そうかい、そりゃよかった。
 それで、後ろにいるそいつが新米のスライム捕りだって。
 見ねえ、顔だな。流れもんかい。」

「昨日この町に来たんだ。
 にっぽん爺と同郷なんだって、にっぽん爺の所に居候してるの。」

「何だい、あの変わり者の知り合いか…。
 マロン、付き合う人は考えた方が良いぞ。
 おかしな人間と付き合うとロクなことが無いからな。」

 にっぽん爺はほら話ばっかり子供に教えるって言われて評判悪いんだ。
 とっても優しいお爺ちゃんなのに、みんな分かってくれないの。
 確かにほら話かも知れないけど、にっぽん爺の話には夢があって子供には大ウケなのに。

「にっぽん爺は悪い人じゃないから心配ないよ。
 それより、スライム買い取って。」

「マロンがそう言うのなら、これ以上は言わないけどね…。
 まあ良い、じゃあ、スライムを見せてみろ」

 おいらがにっぽん爺を庇ったので、おっちゃんは渋い顔をしたけど。
 それ以上言うとおいらがへそを曲げると思ったのか、にっぽん爺の話はそこまでだった。

    ********

 おっちゃんの言葉に従ってスライムを詰めた布袋をカウンターの上に置いたタロウ。
 おっちゃんは布袋の中に目を落とし…。

「おい、こりゃ、マロンスライムじゃねえか!」

 いきなり、大きな声をあげたんだ。

「マロンスライム? 何それ?
 そのスライム、おいらと同じ名前が付いてるの?」

 マロンスライムなんて名前、初耳だよ。
 父ちゃんもそんな名前は教えてくれなかった。
 まさか、父ちゃん、おいらの名前を考えるのが面倒で、スライムの名前からとった?
 あの優しい父ちゃんに限ってそんなことはないよね。

「いや、マロンが捕ってくるスライムという意味だよ。
 マロンが捕ってくるスライムだけ、何故か水色なんだ。
 スライムと言えば、赤、緑、黄色って相場が決まってるんだ。
 俺も長年この仕事をしてて、水色のスライムなんて初めて見たよ。
 それだけじゃねえ、スライムってのは短命だろう。
 でも、このスライムは他の三倍はゆうに生きる。
 しかも、汚物の処理能力も断トツに良いんだ。
 だから、他のスライムの倍以上の値が付いて大儲けなん…。
 あっ、しまった。」

 途中で声を詰まらせて、バツの悪い顔をおいらを見たおっちゃん。
 その顔は、今の言葉を聞いていたかと窺っている様子だったよ。
 うん、バッチリ聞いてたよ。

「おっちゃん、おいらが捕まえたスライム、他のスライムの倍以上の値段で売ってたんだ…。
 おいら、そこに書いてある買取価格の一匹銅貨一枚しか貰ってないよ。
 それって、ぼり過ぎじゃない?」

 もしかして、最近おいらが顔を見せないと気にしてたのは。
 おいらのことが心配なんじゃなくて、おいらの捕まえたスライムが入らないのを気にしてたんじゃ…。
 おいら、そんな風に勘ぐっちゃうよ。

 おいらが、おっちゃんをジト目で見ていると…。

「悪かったよ。
 そうだな、今まで大分儲けさせてもらったから…。
 銀貨三百枚でどうだ、銀貨三百枚渡すから機嫌を直してくれないか。
 おっちゃんとしても、マロンにへそを曲げられてマロンスライムが入荷しなくなると困るんだ。
 それと、その男がこれからマロンスライムを捕って来るなら。
 一匹銅貨二枚で買い取るよ。」

 銀貨三百枚というとおいらにとっては大金だ。
 何て言っても、一年分に近い食費なんだから。
 
 それに、スライム目当てだとしても。
 おいらのことを気に留めてもらえたのは有り難いの。
 子供の一人暮らしは心細いから、何かあった時に頼れるものね。
 だから、おいらはおっちゃんの申し出を受け入れることにしたよ。
 おっちゃんはもっと儲けているだろうけど、それは良いや。

    ********

「おー、マロン、凄いぞ。
 今日半日で、銅貨千二百枚も稼げたぜ。
 これなら、三ヶ月もかからずに家が買えそうだ。
 マロン、感謝してるぜ。」

 六百匹ちょっとのスライムを売って喜ぶタロウ。
 一匹銅貨一枚だと思っていたところ、倍の値段で買い取ってもらえたからね。
 妖精の森で一日捕れば千匹以上捕れるだろうから。
 けっこう早く家が買えるかも知れないね。

 タロウの買取が終った後、詳しくスライムのことを聞いたの。
 おちゃんの話だと、普通のスライムは十日くらいしか生きないらしい。
 しかも不思議な事に、何処にでもいるくせに、何故か飼うと増えないの。
 だから、みんな、十日毎くらいにスライムを買うんだって。
 だけど、おいらが捕まえてきたスライムはゆうに三十日以上生きるらしい。
 
 しかも、トイレの中に放つと汚物を食べる量が普通のスライムの倍以上だって。
 もちろん、肉屋での廃棄部分の処理量も倍以上。

 だとすると、一匹で普通のスライムの六倍くらい働くの。
 でも、流石に汚物処理をするスライムを、六倍の値段で買う人はいなくて…。
 お得商品として、二倍から三倍の値段で買われていくんだって。

 おいら、知らなかったよ、妖精の泉にいるスライムが特別だったなんて。

 因みに、おいらの家のトイレにいるスライムはもちろんマロンスライム。
 今日行った妖精の泉に遊びに行くついでに捕ってくるからね。
 今まで、スライムを買ったこと無かったので、他のスライムのことなんか知らなかったよ。

 でも、スライムにおいらの名前が付けられてるなんて、なんかビミョー…。

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