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兄と弟と弟だった人
弟の将来
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「玲の……ですか?」
「うん、玲君の将来の話だよ」
聞き返してみても、珠美からの言葉は何も変わらなかった。
「えっと……どうしてまた玲の将来の話を?」
「どうしても何も、話題の流れとしては当然ではないかな? 一宏君の未来の話から、玲君の未来の話に繋がるのが不思議かい?」
「いや、そういうわけじゃないですけど……。でも、玲は今ここには居ないわけですし、わざわざ話すこともなくないですか?」
「居ないからこそだよ。玲君に話を聞いたって、何て答えるかなんてわかりきっているだろう?」
珠美の言う通りだ。
玲に将来の話を振ったところで、俺に仕えるとしか言わないだろう。
その表情も。
その声色も。
その双眸も。
容易く想像できてしまう。
そしてだからこそ、珠美の言葉は意味がわからない。
玲の将来なんて決まりきっているのに、
どうしてわざわざ話題に挙げる必要があるのだろうか。
「先ほども言った通り、私は一宏君の将来に口出しをする気はないよ。求められればアドバイスはするし、先達として注意喚起させてもらうことはあるかもしれないけれど、強制はしないつもりだ。でも、玲君に対しては違う」
「どうしてですか?」
「一宏君は外を知っている。自分で知る為に動くことができる。だから自分で将来を選択できるし、自分で決めるべきだ。しかし玲君はそうではない。何も知らされず、何も知ることができず、選ぶということすら知らない。そんな状況では、将来が固定されてしまって当然だからね。私は玲君には手助けが必要だと思っている」
その言葉でようやく気付いた。
珠美は玲を一人の人間として見ているのだ。
今まで玲は従者でしかなかった。
宗田の家に仕える者として生まれ、教育され。
俺に従うだけの人生を過ごしてきた玲。
そんな玲を唯一まともに人間扱いしているのが、叔父である珠美なのだ。
「……手助けって?」
「まずは、玲君が自由に外に出られるようにするべきだろう」
「外に? 玲がですか?」
「何もおかしいことでもないだろう?」
「でも、玲が外に出ると……色々と、問題があるんじゃ……」
玲は義務教育を受けさせてもらえず、平等の権利もはく奪されている。
この日本でそんな人間は存在してはいけないし、
知られてしまったら片田舎の地主なんて簡単に国に潰されるだろう。
「大丈夫、玲君のことで罪に問われるようなことにはならないさ。少なくとも、一宏君は何も悪くないからね。というか、咎められるべき人間はみんなもういないのか」
そう言って珠美は笑った。
これが余裕のある大人というやつなのだろうか。
なんだかその笑みに怖さすら感じてしまう。
「まあ、これも今すぐにという話でもない。玲君の意思も大事だし、外に出るならその前に学ばなければならないことも多い。ただ、私が個人的に考えていることとして受け取ってほしい」
「……わかりました」
「その上で、一宏君にも考えておいて欲しいんだ。一宏君と、玲君の、ふたりの将来のことをね」
「……」
珠美からの言葉に対して、今の俺は何も返すことができなかった。
自分の将来だけでも頭がいっぱいなのに、
玲のことまで考えなければならないなんて。
正直、勘弁してほしいというのが本音だった。
「うん、玲君の将来の話だよ」
聞き返してみても、珠美からの言葉は何も変わらなかった。
「えっと……どうしてまた玲の将来の話を?」
「どうしても何も、話題の流れとしては当然ではないかな? 一宏君の未来の話から、玲君の未来の話に繋がるのが不思議かい?」
「いや、そういうわけじゃないですけど……。でも、玲は今ここには居ないわけですし、わざわざ話すこともなくないですか?」
「居ないからこそだよ。玲君に話を聞いたって、何て答えるかなんてわかりきっているだろう?」
珠美の言う通りだ。
玲に将来の話を振ったところで、俺に仕えるとしか言わないだろう。
その表情も。
その声色も。
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容易く想像できてしまう。
そしてだからこそ、珠美の言葉は意味がわからない。
玲の将来なんて決まりきっているのに、
どうしてわざわざ話題に挙げる必要があるのだろうか。
「先ほども言った通り、私は一宏君の将来に口出しをする気はないよ。求められればアドバイスはするし、先達として注意喚起させてもらうことはあるかもしれないけれど、強制はしないつもりだ。でも、玲君に対しては違う」
「どうしてですか?」
「一宏君は外を知っている。自分で知る為に動くことができる。だから自分で将来を選択できるし、自分で決めるべきだ。しかし玲君はそうではない。何も知らされず、何も知ることができず、選ぶということすら知らない。そんな状況では、将来が固定されてしまって当然だからね。私は玲君には手助けが必要だと思っている」
その言葉でようやく気付いた。
珠美は玲を一人の人間として見ているのだ。
今まで玲は従者でしかなかった。
宗田の家に仕える者として生まれ、教育され。
俺に従うだけの人生を過ごしてきた玲。
そんな玲を唯一まともに人間扱いしているのが、叔父である珠美なのだ。
「……手助けって?」
「まずは、玲君が自由に外に出られるようにするべきだろう」
「外に? 玲がですか?」
「何もおかしいことでもないだろう?」
「でも、玲が外に出ると……色々と、問題があるんじゃ……」
玲は義務教育を受けさせてもらえず、平等の権利もはく奪されている。
この日本でそんな人間は存在してはいけないし、
知られてしまったら片田舎の地主なんて簡単に国に潰されるだろう。
「大丈夫、玲君のことで罪に問われるようなことにはならないさ。少なくとも、一宏君は何も悪くないからね。というか、咎められるべき人間はみんなもういないのか」
そう言って珠美は笑った。
これが余裕のある大人というやつなのだろうか。
なんだかその笑みに怖さすら感じてしまう。
「まあ、これも今すぐにという話でもない。玲君の意思も大事だし、外に出るならその前に学ばなければならないことも多い。ただ、私が個人的に考えていることとして受け取ってほしい」
「……わかりました」
「その上で、一宏君にも考えておいて欲しいんだ。一宏君と、玲君の、ふたりの将来のことをね」
「……」
珠美からの言葉に対して、今の俺は何も返すことができなかった。
自分の将来だけでも頭がいっぱいなのに、
玲のことまで考えなければならないなんて。
正直、勘弁してほしいというのが本音だった。
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