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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)

カガチ後⑩ どーせーゆーんじゃ

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『いかん、フルエレさんに負けとる。メランさんもっとガンガン行くぞっ!』
『おおーっ!』
『いけーっ』

 叫びながらセレネは蛇輪へびりんをぎゅーんっと旋回させて千岐大蛇チマタノカガチに接近すると、前に浮かぶ光の輪から伸びる光の剣を気持ち広角に開く様に願った。

『撃つっ!! 行けっ光の矢ッ』
『わたしもっ連射!!』

 シュパパパパパパパ!!
 ドドーーン! ドドーーン!! ドンドン!
 蛇輪とメランのル・ツー漆黒ノ天はそれぞれの武器を乱射しまくった。ヒットしたそれぞれの攻撃は、あたかもB級アメリカアクション映画の様に、カガチの首からよく分からない緑色の液体をまき散らして頭を四散させて行く。
 ドチャッ! ビチャッ!!
 そもそもが約五百Nメートルのチマタノカガチの事である、飛び散る液体や組織片の量もハンパでは無い。

『うっわーばっちいなあ、キモい……オエッ』
『……そんな命の尊厳を否定する様な発言はNGでしょ!』
『村ゞを襲った奴相手に命の尊厳も何もないわ! 撃って撃って撃ちまくるだけじゃ!!』

 さらにセレネとメランは攻撃を再開しようとした……
 ヒヨンッカカッ!!
 忘れていた頃に突然真っ赤な瞳が光り、蛇輪とル・ツー目掛けて同時に赤い光線が飛んでくる。

『!?』
『危ないっ』
 
 しかしほぼそれと同時に兎幸うさこが展開していた魔ローンの盾が、寸での所で二発の光線を同時に跳ね返した。その内の一本が魔ローン表面の鏡面に跳ね返され、ヌッ様の顔面の前を掠めて飛び去った。

『危ないっ!!』
「今の何!?」
『セレネくん、跳ね返すにしても方向を考慮してくれっ!』

 慌てて猫弐矢ねこにゃが注文を付けた。

『あいあい、善処しま~~す』
『その言い方は無いわ』

 セレネの言い方にフゥーも猫弐矢もムッとしたが、紅蓮とフルエレは気にしなかった。何故なら彼はセレネの実力を信じ、フルエレは実はセレネは優しい子だと分かっているからだ。

『セレネ大丈夫なのは分かってるけど、気を付けて上げて』
『は~~い』

 二人のやり取りを見て、フゥーは再び発奮した。

『まだまだっ!! 私達も頑張るっ!! このまま削り続ければ!!!』

 ドタドタと走り出すと、フルエレの期待に応える様に飛び蹴りで何本もの首を吹き飛ばした……

『仕方が無い、この私も絶対服従を掛け続けましょうぞっ』

 夜叛やはんモズも男五人でぎっちぎちの桃伝説ももでんせつ操縦席の中で地味だが後衛と補助という己の役割を果たし続けた。


 ―数十分後。

『はぁはぁ……まだまだ……』

 フルエレはケロッとしたままだが、直接操縦を続けるフゥーが連続して必殺の攻撃を続けた挙句、明らかに疲れが見えて来た。

「フゥーちゃん大丈夫!?」
「フルエレ様大丈夫です!!」

 フルエレは心配して魔法モニター上のセレネも見た。

『はぁはぁ……光の矢を撃つだけなのに割りと疲れるんだなあ……』
『あのさぁ、さっきから気になってたんだけど、あんだけずっと首を落としまくっているのに、減らないと思わない?? 回復(弱)!!』

 パシュウッキラキラキラ……
 メランが魔法モニター上からポツリと言った。彼女はライフルを撃つだけなので全く疲れてはいない。言い終わると同時にル・ツーの魔呂スキル回復(弱)を掛けて上げる。

『サンキュー! 確かに……恐ろしい事に気付いたな』

 少し冷や汗を掻きながら、セレネは状況を注意深く見始めた。

『フゥーちゃん、紅蓮くん、さっきから首を爆発させ続けてるけど、減らないと思わないかい?』

 ヌッ様の体内でも同じ事が話題になり始めた。

「うん、実はさっきから首の数を数えてるんだけど……減る処か増えてるような……」

 セレネを越える剣の超人的な達人の紅蓮アルフォードが言った事が皆に衝撃を与えた。

「私もそんな事は無いと自分に言い聞かせて来たけど、気のせいじゃ無かったんだアハハ」

 雪乃フルエレ女王も苦笑いしながら片手で頭を掻いた。

「フゥーちゃんには悪いけど、消された首がどうなるか脳内でマーキングするから、また続けて戦ってくれないかい?」
「ハイ! まだまだああああああ!!」

 紅蓮に言われるまま、ヌッ様は戦闘を再開した。
 ドカーンドカーンと次々に首が千切れて爆発して行った跡を、紅蓮はブレないでひたすら注視し続けた。

「うっ」
「どうしたの!?」

 フルエレが恐々と聞いた。

「うん、もともとの首の数が多過ぎて判りにくいけど、千切れた首が再生してるね……しかも枝分かれしたりして、数が増えてるよ……」
(気のせいか体も微妙にデカくなってる気が)
「ええっ!? 本当なの??」

 紅蓮の言葉にフルエレは衝撃を受けた。もちろん猫弐矢もフゥーも同じだった。

「つまり……攻撃をして飛ばす首よりも復活してる首の方が多いと」
「申し訳ありません、私の力不足でっ!」

 猫弐矢の言葉にフゥーは即座に謝った。

「フゥーくんの責任じゃ無いよ。こっち側のタマ数不足なだけだ。数が圧倒的に足りない」
「じゃ僕も外に出て!」
「ダメだよ、悪いが紅蓮くんが外に出ても焼石に水だ。それは美柑ミカちゃんも同じ事だよ。それよりもキミ達は中に居てて欲しい」
「……」

 その頃、セレネ・メラン組も同じ結論に達していた。

『こんなモン、どーせーーゆーーーんじゃっ!!』
『切っても切っても次から次へと増えて行ってるなんて……』
『猫弐矢さん、コイツが再生する様になった切っ掛けって?』

 溜らずセレネは猫弐矢に聞いた。

『それは、私からお教えしましょう! そのヌッ様が両手を喰われましてな。それでヌッ様同様水から生成する能力を獲得したかと!』
『それは貴様が絶対服従を切ったからだろうがっ!』

 それまで司令部で黙っていた貴城乃たかぎのシューネが思わず叫んだ。

『なんですとっ!? 貴方も同意してたとっ』
『もういいわっ黙れや犯罪者共がっ! 水がエネルギー源なんだな!?』

 セレネは話を聞いて、それまであまり注目していなかった、胴体裏側の下部に旋回、下降して回りこんだ。
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