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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)
猫弐矢、聖都へ行く 中 貴城乃シューネ秘策
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「このまま真っ直ぐクラウディア王国に帰るんじゃないのか!?」
猫弐矢が焦った顔で貴城乃シューネに聞き返した。
「私もそのつもりだったが、アレを見ろ。陛下からお預かりした大切な金輪があの様な姿のままおちおち行動は出来ない。まずあの魔ローダーを破壊させた事をお詫びしなくてはならない。もしかすると即刻打ち首となるやも知れぬ。その時は猫弐矢くん! 友人として一緒に死んでくれ……」
嘘か本気か良く分からないがシューネは頭を下げ、それを聞いていたフゥーはドキッとして両手を口に当てた。
「断る!!」
しかし猫弐矢は即座に断ったのだった。
「何故? つれないね」
「何故って何で知り合ったばかりの君に連座して僕まで死ななくちゃならないんだっ! 第一首謀者は僕じゃ無い君じゃないか、僕はフゥーくんを守って生き残るよ!」
すると今度はシューネはワザとらしくアゴに手を置いて首を傾げた。
「ふむ、ならばこうしよう。今晩中に通過するスィートス王国に君とフゥーくんを降ろそう! そこから徒歩か馬かで北上してクラウディアに行けばいいよ!」
しかしその言葉を聞いて普段は穏和な性格の猫弐矢が、カッと目を見開いて怒りの表情になった。
「……変な奴に見えて実はそれ程悪い人間じゃ無いと思い始めていた僕がバカだった。君がそんな嫌味を言うタイプとは思わなかったよ。いや嫌味処じゃない、クラウディア人にとってはスィートス王国は神宝を奪い恭順を誓わせた宿敵、しかもずっと眼下に当事者の瑠璃ィキャナリー王女を見て心中穏やかな状態で居られないよ。ずっと猫呼を心配していたのに、本当に心外な事を言われたよ」
話しながら怒りが増幅したのか、どんどんと言葉が出て来た猫弐矢だった。
「それは済まない。君がそれ程頭に来るとは相当だな、数少ない友人の君に嫌われたくないから謝ろう」
しかしシューネはすぐに素直に謝罪して軽く頭を下げた。
「ま、まあ謝るなら許そう」
「ふふ、良かった」
フゥーは二人のやり取りを見て、何ほたえとるんじゃとジトッとした目で見ていた。
「しかしシューネ様、猫弐矢様、あの瑠璃ィキャナリーというオバ、いや妙齢の女性ってそれ程凶悪な女なのですか? 普通の気の良い女っぽい雰囲気でしたが……」
「確かにそうだな、我が国に来た時はあんなニコニコしていなかったな」
「ふむ、もともと砕け過ぎた部分はあったが、それ以上にセブンリーフに来て何か心境の変化でもあったのだろうか? 若君をサポートするという役目を完全に放棄している様に見えた。七葉島は何か人をおかしくさせる空気があるのかもしれない」
シューネは遠ざかるセブンリーフの街の灯りを眺めながら言った。
「南国……だからでしょうか?」
「確かに……クラウディアの北の海は寒い海だからな……おっと忘れてたが、何故僕達まで巻き込まれなきゃならないんだ? 何とか帰る道は無いのかな? 加耶ちゃんが心配だよ、何だよあの夜叛モズって男は妖しすぎる」
なんとか誤魔化せたと思いきや、急に猫弐矢の怒りがぶり返して来てシューネを問い詰めた。
「確かにモズは見た目は妖し過ぎるが私よりも真面目だ、おかしな事はすまい。それよりも無意味に君に来てもらう訳じゃない。君には生き残って我が腹心として出世の階段を上がってもらいたい。まずはその為にはある人に会って頂く」
「出世の階段? 興味ないよ。それより生き残る為に誰に会うのかな?
猫弐矢は悔しいがちょっと興味が出て来た。フゥーも同様であった。
「私が帰還した折には必ず神聖連邦帝国の姫殿下にご挨拶をする事になっているが、君にもその時に同席して頂く。彼女は外の世界に憧れが強い。まして有名なクラウディア王国なら必ずや会って下さるだろう。その時に僕の命乞いをしてくれれば、ほぼ生き残る事が出来るだろう」
猫弐矢はハッとした。
(あのフルエレ女王とそっくりだと言う??)
「……その時に君がタカラ山新城で女の子の服を破いたりして笑ってたと言ってもいいんだね?」
実は女の子では無く、無意味に完成度の高い女装をした砂緒、スナコちゃんである。
「その事は絶対に言わないでくれ、私は……真面目で無口で朴訥な男と思われているのだ」
シューネから笑顔が消え、肩をガシッと掴んで訴えて来たので彼はビクッとした。
「あ、ああ分かった分かった。言わないでおくよ」
しかしフゥーも猫弐矢も同時にシューネの弱みを握ったと思い、内心ほくそ笑んだ。
―再び大型船船底。
コンコン。
美柑ノーレンジは船底の樽の蓋を再び叩き、パカッと開けた。
「ねえ、もう隠れる必要無いんじゃない? この船底には誰も来ないと思うよっ」
「そうだね」
等と言いつつ紅蓮アルフォードは樽から出て来たのだった。
「調理場からおにぎりかっぱらって来たから食べよ!」
「おお、これは有難いよ。ボクはもうお腹ペコペコだよー」
早速紅蓮はおにぎりを奪って頬張り始めた。美柑はにこにこしながらそれを眺めた。
「そうだ紅蓮、おにぎり強奪作戦時にちょっと聞こえたんだけど、メイドさん達がこれで聖都に帰れるヤッターって言ってたよ!」
「えっ??」
紅蓮はおにぎりをぽろっと落とした。父聖帝に厳命された、まおう討伐処か本国に逆戻りし始めていた……
猫弐矢が焦った顔で貴城乃シューネに聞き返した。
「私もそのつもりだったが、アレを見ろ。陛下からお預かりした大切な金輪があの様な姿のままおちおち行動は出来ない。まずあの魔ローダーを破壊させた事をお詫びしなくてはならない。もしかすると即刻打ち首となるやも知れぬ。その時は猫弐矢くん! 友人として一緒に死んでくれ……」
嘘か本気か良く分からないがシューネは頭を下げ、それを聞いていたフゥーはドキッとして両手を口に当てた。
「断る!!」
しかし猫弐矢は即座に断ったのだった。
「何故? つれないね」
「何故って何で知り合ったばかりの君に連座して僕まで死ななくちゃならないんだっ! 第一首謀者は僕じゃ無い君じゃないか、僕はフゥーくんを守って生き残るよ!」
すると今度はシューネはワザとらしくアゴに手を置いて首を傾げた。
「ふむ、ならばこうしよう。今晩中に通過するスィートス王国に君とフゥーくんを降ろそう! そこから徒歩か馬かで北上してクラウディアに行けばいいよ!」
しかしその言葉を聞いて普段は穏和な性格の猫弐矢が、カッと目を見開いて怒りの表情になった。
「……変な奴に見えて実はそれ程悪い人間じゃ無いと思い始めていた僕がバカだった。君がそんな嫌味を言うタイプとは思わなかったよ。いや嫌味処じゃない、クラウディア人にとってはスィートス王国は神宝を奪い恭順を誓わせた宿敵、しかもずっと眼下に当事者の瑠璃ィキャナリー王女を見て心中穏やかな状態で居られないよ。ずっと猫呼を心配していたのに、本当に心外な事を言われたよ」
話しながら怒りが増幅したのか、どんどんと言葉が出て来た猫弐矢だった。
「それは済まない。君がそれ程頭に来るとは相当だな、数少ない友人の君に嫌われたくないから謝ろう」
しかしシューネはすぐに素直に謝罪して軽く頭を下げた。
「ま、まあ謝るなら許そう」
「ふふ、良かった」
フゥーは二人のやり取りを見て、何ほたえとるんじゃとジトッとした目で見ていた。
「しかしシューネ様、猫弐矢様、あの瑠璃ィキャナリーというオバ、いや妙齢の女性ってそれ程凶悪な女なのですか? 普通の気の良い女っぽい雰囲気でしたが……」
「確かにそうだな、我が国に来た時はあんなニコニコしていなかったな」
「ふむ、もともと砕け過ぎた部分はあったが、それ以上にセブンリーフに来て何か心境の変化でもあったのだろうか? 若君をサポートするという役目を完全に放棄している様に見えた。七葉島は何か人をおかしくさせる空気があるのかもしれない」
シューネは遠ざかるセブンリーフの街の灯りを眺めながら言った。
「南国……だからでしょうか?」
「確かに……クラウディアの北の海は寒い海だからな……おっと忘れてたが、何故僕達まで巻き込まれなきゃならないんだ? 何とか帰る道は無いのかな? 加耶ちゃんが心配だよ、何だよあの夜叛モズって男は妖しすぎる」
なんとか誤魔化せたと思いきや、急に猫弐矢の怒りがぶり返して来てシューネを問い詰めた。
「確かにモズは見た目は妖し過ぎるが私よりも真面目だ、おかしな事はすまい。それよりも無意味に君に来てもらう訳じゃない。君には生き残って我が腹心として出世の階段を上がってもらいたい。まずはその為にはある人に会って頂く」
「出世の階段? 興味ないよ。それより生き残る為に誰に会うのかな?
猫弐矢は悔しいがちょっと興味が出て来た。フゥーも同様であった。
「私が帰還した折には必ず神聖連邦帝国の姫殿下にご挨拶をする事になっているが、君にもその時に同席して頂く。彼女は外の世界に憧れが強い。まして有名なクラウディア王国なら必ずや会って下さるだろう。その時に僕の命乞いをしてくれれば、ほぼ生き残る事が出来るだろう」
猫弐矢はハッとした。
(あのフルエレ女王とそっくりだと言う??)
「……その時に君がタカラ山新城で女の子の服を破いたりして笑ってたと言ってもいいんだね?」
実は女の子では無く、無意味に完成度の高い女装をした砂緒、スナコちゃんである。
「その事は絶対に言わないでくれ、私は……真面目で無口で朴訥な男と思われているのだ」
シューネから笑顔が消え、肩をガシッと掴んで訴えて来たので彼はビクッとした。
「あ、ああ分かった分かった。言わないでおくよ」
しかしフゥーも猫弐矢も同時にシューネの弱みを握ったと思い、内心ほくそ笑んだ。
―再び大型船船底。
コンコン。
美柑ノーレンジは船底の樽の蓋を再び叩き、パカッと開けた。
「ねえ、もう隠れる必要無いんじゃない? この船底には誰も来ないと思うよっ」
「そうだね」
等と言いつつ紅蓮アルフォードは樽から出て来たのだった。
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「おお、これは有難いよ。ボクはもうお腹ペコペコだよー」
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