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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
フルエレ、久しぶりの仮宮殿出仕 中 彼女の再出発
しおりを挟む「やめておくわシャル……今日はイェラとずっと調理場にいるから、皆にそう言っておいて」
「へいへい」
シャルが頭の後ろで腕組みしてそのまま立ち去ろうとした。
「シャル待ちんしゃい! フルエレ、相手はフルエレの美しい顔目的の寂しい老人とその仲間達とは言え、ちょっと会ってみないですか? 皆大好きな貴方に会いたいのです」
「……でも」
スナコというか砂緒が珍しく前向きな事を言ってフルエレは困った顔をした。彼女はアルベルトが戦死した事を全て自分の責任だと思い込み、その為にニナルティナの住人達から責められている気がして誰にも会いたく無かったのだった。
「ちょっお前……砂緒なのか? ヤバい奴とは思っていたが」
「おわっぺっぺっ砂緒さんかよ!? 危うくキスする所だったぜっ」
突然出て来てスナコの姿で真面目に話す砂緒を見て、シャルもレナードも相当に驚いたが砂緒は全く動じて居なかった。
「二人共本当に殺しますよ? フルエレ、貴方が行くなら私もこの姿で羞恥に耐えながら同行しましょう。フルエレには此処で止まって欲しく無いのです」
「砂緒……」
砂緒としては内心フルエレがいつまでもアルベルトとの思い出に浸り続けるよりも、一刻も早く新しい行動を起こして忘れて欲しかっただけだった。しかしそうした想いとは裏腹にフルエレにはとても強い前向きな励ましに思えた。
「フルエレさん、絶対砂緒は羞恥に耐えてなどいない! ただお披露目したいだけだっ」
「セレネ、砂緒がこんなに励ましてくれて嬉しいの。私ちょっと芹沢さん達に挨拶してみるよ。セレネもどうか一緒に来てね」
フルエレは少し赤面して恥ずかしそうに言った。
「えっ!? なんであたしまで」
「……三人はずっと友達って言ったじゃない」
「うっ」
セレネは余計な事を言ってしまったと後悔した。
―芹沢老人達、優良常連客の席。
猫呼が小走りにやってくると片手で口元を隠して小声で言った。
「フルエレ来るって! でも彼女色々あって少し疲れていたからあんまり大袈裟に騒いだり喜んだりしないでね、おねがいよ」
「うおおおおおお!? 本当かよ」
「だからそれが駄目だと言っておるのじゃ、若者よ冷静にフルエレちゃんとの再会を喜びなされい」
「は、はい!」
鉢巻を巻いた若者の常連客は猫呼と芹沢老人に頭を下げた。
「お、お、お久しぶりです。ども……じゃ!」
すたすたと緊張気味に歩いて来たフルエレは、固唾を飲む常連客達の前で砂緒の様にピッと片手を上げるとすぐに立ち去ろうとして、横に居た猫呼とセレネがズルっとコケた。
「フルエレ、ソレ会いたくない知人と道ですれ違った時の態度よ! もうちょっと愛想良くして」
言われてフルエレは緊張気味にまた常連客達の前に戻った。
「ご、ごめんなさい私ちょっと色々あって休み気味だったの。芹沢さんや常連さん達もまた来過ぎない程度にちょくちょく来て下さいネ……また会えて嬉しい……ですエヘヘ」
フルエレは少し気恥ずかしそうに笑った。この喫茶猫呼は特殊なシステムを採用しており、常連客もあまり過度に通ってはいけなくて、フルエレを忙しくさせてはいけない事とされていた。それでも常連客達はフルエレの笑顔がまた見れて尚且つ言葉が聞けて感無量だった。
「うおおおおおおおフルエレちゃん辞めてしまったのかと凄く心配したのじゃぞおおお」
「お、おい爺さん言ってる事が違うだろう!?」
感極まった芹沢老人はフルエレの手を取ってむせび泣いたのだった……
「わっわっ芹沢さん……落ち着いて下さいーーエヘヘ」
「はいはい、此処はお触りは禁止だよーー」
『私スナコ、よろしくねっ』
即座に機械的に老人を遠ざけるシャルと、突如自分のアピールを始めたスナコによって一瞬カオス化し掛けたが、フルエレは笑顔のまま客席から調理場に戻って来た。
「どうだった?」
包丁を持ったままのイェラが素っ気なく聞いた。
「う、うん……行ってみて良かった……久々に常連さん達の笑顔が見れて少しホッとした」
振り向かずに料理をしたままイェラは笑顔になった。
「よし、じゃあ早速出来た料理を客席に持って行ってくれっ!」
「……それは嫌よ、めんどくさいわ。今日はイライザに一任してるの」
「お~~~い?」
天使の様な容姿のフルエレはものぐさだった……
「で、イェラって砂緒と何かあったーー?」
「い、いや……な、なな、ないぞ……イライザッ! 料理を持って行ってくれ!!」
「へェー?」
色々あったがこうして為嘉アルベルトが戦死をして以降、気持ちが塞ぎ込んで引きこもりがちだった雪乃フルエレ女王は、徐々に再び公の場に出始めたのだった。
―再びメドース・リガリァ小反省会会場。
『私スナコ、皆さん初めてお目に掛かるわね』
スナコはあちこちの客席で自己紹介していた。段々慣れて来た砂緒は体をくねらせ、ウインクをしながら指を立ててホワイトボードで話し掛けていた。セレネは横で極限まで目を細め、呆れて見ている。
「は、はい? 何ゝ店員さん……??」
(可愛いけどヘンな子だな)
ジェンナは怪訝な顔をして、フゥーとカレンは関わるまいと目を逸らした。
「済まない、この子田舎から出て来たばかりでな。それよりも君はジェンナ君だな。私はこう見えても同盟軍総司令官のセレネだ。いい機会だ、君を魔ローダー部隊の隊長にスカウトしたいと思っていたんだ」
同盟軍総司令官の顔になったセレネは人見知りが消え、スラスラと物が言えた。
「ええっ!? この前まで敵であった私をですか?? 凄く嬉しい……冒険者に行き詰まっていて」
ジェンナは信じられないという顔で思わず立ち上がった。
「敵って洗脳されていたのでしょう、是非お願いしたい。手練れの貴方には私と同型のSRV2ルネッサをお渡ししよう」
「良かったじゃないジェンナさん!!」
カレンは両手を叩いて喜んだ。こうしてジェンナは正式に同盟軍の魔ローダー乗りとなった。
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