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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
フルエレ、久しぶりの仮宮殿出仕 上
しおりを挟む「へへっまあ横に座れよっ!」
『キャッ』
ドサッ!!
有未レナードは砂緒扮するスナコちゃんの手首を無理やり掴むと、強引に自分の横に座らせた。いや座らせると言うよりも投げ付けるという感じで、スナコの身体がソファーに落ちてから一回バウンドして浮いた。
ピシィイッ!!
それを見ていてイェラの顔に青筋が立った。
(イェラさん落ち着いてっ!)
「凄いじゃ~~ん、君叫び声もホワイトボードに書くのだね?」
コクコク
スナコは可愛く頷いた。
『で、ではオレンジジュースをお注ぎします……』
オドオドしながらスナコはオレンジジュースをコップに注ごうとする。
「へへっ待ちなよ……プルプル震えて可愛いね君。ここの女共は見た目は極上だがやけに気が強い子ばかり……ケド君はなんだか子犬の様に震えてて可愛いね……へへ怖いのかい?」
砂緒は笑いを堪えているだけだった……
(接点少ないとは言え有未レナードがこんな人とは思いませんでした。男と女ではこうも相手の態度が変わる物なのでしょうか……)
砂緒は内心妙に冷静に分析していた。
『レナードさまが国主さまだと聞いて、緊張しているの』
「おや君は知らないのかい? 先輩のフルエレ嬢ちゃんは女王さまじゃないか」
『ひえっそうなのですか?? 知りませんでした……言って大丈夫なのでしょうか?』
スナコは大袈裟に驚いてみせた。
「ハハッ大丈夫大丈夫! 秘密だけど知ってる人も意外に多いからねっ!」
(レナードさ~~ん? あっちこっちで言いふらしてるんじゃ!?)
小窓から覗いていた雪乃フルエレ女王はムッとした。
キュキュッ
『私此処に来たばかりで、フルエレ女王さまってどんな方ですかぁ?』
「そうだなあ、外見だけじゃなく凄く性格も良い子で皆彼女を守りたいと思っているよ……でも本当はただ幸せになりたいだけの何処にでも居る普通の女の子なんだ、だから大きな力があるからって何でも押し付けちゃ可哀そうだな……」
有未レナードは急に真面目な顔になって遠い目をした。
(レナードさん……)
「フルエレさん良かったじゃん、彼の忠誠心だけは本物の様だぞ」
「シッセレネ声が大きいわよっ」
(別に忠誠心じゃないわよ……)
「へへっそんな真面目な話よりさあ」
『きゃあっ』
レナードはスナコちゃんからジュースの瓶とコップを無理やり奪ってテーブルに置いた。
「も、もういいじゃん、邪魔者も居ない事だし二人で楽しまないか?」
『いっやっ離して! 私そんなつもりで来たんじゃありません!』
レナードはスナコの肩に手を置いて壁に押し付けた。
「何やってんだコイツは……もう我慢出来ん斬る!!」
「待って下さいイェラさんもう少しだけ様子を見ましょう! ハァハァ」
「メラン、何を赤面して興奮している……」
「レナードさん株が駄々下がりよ……」
フルエレは頭を抱えた。
「へへっ可愛い顔してやがるゼ……オレが国主って知ってるなら話は早い。オレんトコに来ないか? 俺の権勢でお前に天国見せてやるゼッ!!」
言いながらレナードは指先でスナコにあごクイをした。砂緒は内心間近で男に迫られて爆笑を必死に堪えていた。しかしその耐える様がレナードを大いに誤解させさらに軽い加虐欲を誘った。
キュキュッ
『や、やめて下さい、人を呼びます』
「こんな状況でもホワイトボード書いてる君が健気で好きだな、可愛いぜ、んん-ーー」
遂にレナードはスナコにあごクイをしたまま目を閉じ、徐々に唇を接近させる。
「う・ゲローーーー!? ジンマシンが」
「もういいだろメラン、私は叩き斬るぞ」
「ま、まって下さい砂緒さんは強いんです。いざとなったら自分でなんとかしますから、ももも、もう少し推移を推移を見ましょうデヘヘ」
「メランちゃんさっきから様子がヘンよぉ?」
接近する二人の様子を見て盛り上がる皆を他所に、フルエレは一人かつて為嘉アルベルトの別荘におよばれした時の事を思い出していた。
(クレウさん何処に消えたのだろう……アルベルトさんも居て楽しかったな……)
誰にも気付かれず、いつしかフルエレの目から涙が流れていた。
ドカッ!!
「うわっ!? 何だ」
突然スナコちゃんはレナードを突き飛ばし、スクッと立ち上がると壁に向かって歩き出した。
ドコッ!!
そして唐突に無言で壁を叩き壊した。壁の向こうで張り付いていた連中も突然の事で同じポーズのままで固まっている。しかし一人顔を押さえているフルエレにスナコは歩み寄った。
「フルエレ、何故泣いているのですか……大丈夫ですか?」
「砂緒……」
「砂緒!」
セレネと雪乃フルエレがシンクロするくらいに同時に名前を呼んだ。
「ううん、大丈夫、ちょっと昔を思い出しちゃって」
フルエレはすぐに笑顔で首を振った。
「少し休みますか?」
「砂緒、なんでフルエレさんが泣いてると分かった??」
聞きながらセレネは激しく嫉妬していた。
「なんとなくそう思っただけです。もう茶番は終わりです、フルエレを休ませましょう」
「本当に私は大丈夫だから」
フルエレが手と首を振り、一瞬置いてけぼりを食らったレナードがようやく口を開いた。
「なんだよ趣味悪いぜ、覗いてたのかよ……妙な事しなくてギリギリセーフだったぜっ」
「アウトだろうが??」
イェラが恐ろしい顔でレナードの胸ぐらを掴んだ。
「お、お嬢さんいたのか!? お久しぶりなヘヘ」
「今日という今日は切り捨てるぞ」
と、そこへシャルが頭を掻きながらやって来た。
「何だよいきなり大きな音出すなよ、お客さんがびっくりしたじゃねーか。それよかフルエレ大丈夫かよ、芹沢じいさんら常連さんがフルエレに久々に会いたいと言ってるが、断ろうか?」
シャルの言葉にフルエレはおおいに迷った。
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