誰かが彼にキスをした

ゆづ

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織川 ひかり

思春期の男子

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「おお⁉︎ 琉星だ!」

 陽向は慌ててスピーカーをオンにしたまま通話ボタンを押した。

「もしもし?」
『お前ら、どこにいるんだよ』

 琉星くんの冷めた声が聞こえた。

「ちょっと腹減ったからコンビニに。お前こそ、今授業中じゃねーの?」
『……お前らが外に出て行くのが見えたから俺もフケた』
「じゃあこっちに来ないか? ひかりとのこと、もうちょっと話聞かせて欲しいんだ」
『ああ。俺も話そうと思ってた』

 琉星くんが来る。
 ドキドキしていたらアイスの雫が指に垂れてきた。慌てて食べたら、頭が少しキーンとした。

 やがて、通話を終えて10分程度経った頃、琉星くんがやってきた。
 陽向が手を挙げて、琉星くんに声をかける。

「お前も食う? ガリガリ君」
「お前の奢り? だったらハーゲンダッツがいい」
「俺たちの4倍以上するじゃんか!」
「安いもんだろ?」

 琉星くんは数あるアイスの中から、高級アイスの抹茶味を選んだ。
 ほろ苦い大人スイーツって感じのチョイスに、琉星くんの性格が滲み出ているようだった。


「……どうしても納得できないんだけどさ」
 購入したアイスを持ってイートインスペースに戻ってきた琉星くんに、陽向が尋ねる。
「なんで、ひかりとうまくいってないの?」

 単刀直入な質問に、私はドキッとして二人に背を向けた。

 っていうか、私もここにいていいのかな?
 私がいると琉星くんが話しづらくなっちゃうんじゃないかな。
 立ちあがろうかどうしようか迷っているうちに、陽向はどんどん質問する。

「ひかり、お前にベタ惚れだったじゃん。何が不満なの?」
「別に不満なんかねーよ」

 琉星くんの声は淡々としている。

「あいつ、俺の言うこと何でも聞いてくれるし」
「えっ、な、何でもっ?」
「別にいやらしい要求してるわけじゃないからな?」
「あっ、う、うん。そうか」


 焦んないでよ、陽向。思春期の男子の会話はやっぱり聞いちゃいけない気がしてきた。しばらく動悸が収まりそうにない。



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