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千秋 琉星
疑う理由
しおりを挟む「陽向、この人……」
「あっ、そっか。昴にはちゃんと紹介したことなかったよな」
陽向が振り向いて、琉星くんの肩を気安そうに叩いた。
「こいつ、俺のダチでチームメイトの千秋琉星。口と態度は悪いけど、悪い人間じゃないから安心して」
「誰の態度が悪いって?」
琉星くんは陽向を細い目で睨みつけた。
「頭の悪いお前には言われたくねーんだけど」
「えっ⁉︎ ひでー! いつからそう思ってた⁉︎」
「出会ってすぐ」
「三年前からじゃん! マジかよ、親友だと思ってたのに!」
『あいつとはずっといい友達でいたいと思ってるから……』
今朝の陽向の苦悶の表情を思い出す。
親友だから疑いたくないって言っていたのか。納得。
──じゃなくて。
「いやいや、この人、男でしょ⁉︎ 絶対犯人じゃないって。バッカじゃないの?」
私も陽向を細い目で睨みつけてやった。
「でもマフィンくれたのこいつだし」
「だからって、あり得なくない⁉︎」
「それはまだ話を聞いてみないと分からないじゃん」
「おい、さっきからお前らは何の話をしてるんだ」
琉星くん、初対面から私のことをお前呼ばわりしているけど、まあ許そう。
「昨日の放課後、誰かが陽向を眠らせて、その隙にキスして逃げていった子がいたそうなんです。私たちはその犯人探しをしているんです」
「はあ⁉︎ 何だそれ。お前、俺がお前にキスして逃げたと思ってんのか?」
琉星くんは呆れた顔をして陽向を見た。
「バカだバカだと思ってたけど、ここまでバカだったとは……」
確かに私も、琉星くんが陽向に何か悪意のようなものを抱いていて、犯人を手助けしたとかうっかり考えたこともあったけど、それは二人がバチバチのライバル関係だと思っていたからだ。
今の二人のやり取りを見ていると、ライバルというよりも好敵手と書いて『とも』と読むようなツーカーな空気を感じる。
琉星くんが陽向を陥れるようなことをしそうな気配はないと思うし、キスをした当人のはずはないと思うけど、なぜ陽向は彼を容疑者に入れたんだろう。
私の疑問に答えるように、陽向は琉星くんの体の一部を指差しながらこう言った。
「疑って悪いと思ったけど、ちゃんと理由があるんだ。それは──これだ!」
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