1,785 / 1,942
お兄ちゃんはうわきもの? (水月+ノヴェム・ネイ・セイカ・アキ)
しおりを挟む
遊園地のお土産のお菓子を配った。マスコットキャラクターのウサギが描かれたクッキーや、なんか……チョコフレーク固めたみたいな、なんか、名前分かんないお菓子とか……そういうの、配った。
「なんか描いてるな、ウサギ?」
「ハロウィンウサギっていうんだって。アトラクションもそいつのばっかり、園内の飾りもウサギだらけだったよ」
「ふーん……相当ウサギ好きなんだな、あの双子」
「みたいだな。どう? 美味い?」
「うん」
クッキーはコーヒーに合う味だと思う。
「セイカはコーヒーいいのか? そろそろおかわり作るからついでに作ってこようか?」
「ん……いいや、水ちょうだい」
「コーヒー嫌い? ならジュースもあるぞ」
「別に嫌いって訳じゃ……んー、水で」
「遠慮してる?」
「……クッキーの味だけ味わいたい、かな」
やはり遠慮しているように思える。いるかと聞いたらいらないと答えるのがセイカなのだから、もう何も聞かずに作って渡してやればよかったかな。いや、もし本当にコーヒーが苦手なら悪いし……
《おいしい!》
《よかったですね、遊園地のお土産だそうですよ》
《遊園地……》
ニコニコ笑顔でクッキーを齧っていたノヴェムが急にキッと目付きを鋭く変え、俺を見上げた。
《誰と行ったの! ぼくという婚約者がありながら!》
「ふふっ……」
《何笑ってるのセイカお兄ちゃん!》
「な、なんだ? ノヴェムくんなんか怒ってる……よな? えっなになに、どしたの、俺? 俺悪いの?」
なんか俺さっきからずっと「?」付けて喋ってない?
「えー、なんで……あっ、ちょっと待っててノヴェムくん。お土産あるんだ、ちょっと待ってね」
手を広げて突き出す、きっとどこの国でも「待って」や「止まれ」になるだろうボディランゲージを置いてまた積んだ土産物の元へ。
「あったあった。これこれ。ほら、ノヴェムくん。お土産!」
カボチャのランタンと箒を持ち、黒い三角帽子とマントを身に付けた、ウサギのぬいぐるみ。カミア曰く最もポピュラーなハロウィンウサギの姿らしいそれをノヴェムに渡した。
《うさぎ……?》
《お土産だそうです。ノヴェム、婚約者への贈り物を浮気相手と一緒に行った場で買う者が居ますか?》
《居そう》
《余計なこと言わない百鬼丸ボーイ。居ませんよ、ノヴェム》
《……うん。お父さん、大人だもん。大人の方がうわきに詳しい》
《お父さんは浮気したことありませんからねっ?》
《お父さん、まおとこ……》
《違いますったら!》
ぬいぐるみを両手で持ち、じっと見つめながら、ノヴェムはネイと何やら話している。渡せば「おにーちゃんありがとー」なんてにぱっと笑ってくれると思っていたのだが、俺は子供を侮り過ぎているのだろうか。
《お兄ちゃん浮気してないんだね》
《そうなりますね》
《……アンタ、ノヴェムが鳴雷を婚約者とか言ってんのいいわけ?》
《誰を好きになるかはノヴェムの自由ですよ》
《…………寛容っつーか、放任》
ノヴェムがようやく顔を上げた。碧と黄の純粋な瞳はもう俺を睨んだりしていない。
「ありがと、おにーちゃ! だいすき!」
「……! それそれそれだよ俺が欲しかったのは~。急に怒るから何かと! お兄ちゃんびっくりしちゃったぞー? よしよし、ふふふ……可愛いなぁもう」
《兄貴、俺には何かないの。個別の。まさか他人ん家のガキに個別やって、てめぇの可愛い弟に何もやらねぇなんて……ねぇよなぁ?》
「鳴雷、秋風が何か欲しがってる」
「何か!? うーん……アキはぬいぐるみ喜ぶ歳じゃないしさ、文房具も使わないし……正直難しいんだよな、アキへのプレゼントって。まぁ、一応……あるけど」
アキの趣味と言えば筋トレ、ダンス、サウナ、プール、そんなところだろう。物を楽しむタイプじゃない。だから遊園地に行った時なんて土産選びが難しいんだ。
「ほら」
《何これ》
「何これ、だってさ」
「ヘアバンド……アキ前髪長いから、顔洗う時とか運動してる時とか邪魔かなって」
針金入りでピンと立ったウサ耳が特徴の白いヘアバンドだ。これを身に付けたアキは彼自身の白さと赤い瞳によって白ウサギの愛らしさを得るのだ。
《あー、前髪押さえるヤツ? こう……?》
《耳が変な方向いてる、もうちょい右に回せ。回し過ぎ、戻せ、ストップ、そこ》
アキはセイカと話しながらヘアバンドを身に付けた。前髪を上げて額を丸出しにし、頭の上にぴょこんと耳を立たせる。
「Oh……これがジャパニーズ、ケモ耳モエ」
「萌え~! 可愛いぞアキ! なんか、なんかこう、テンション上がる!」
《前髪邪魔じゃねぇし、そんなに締め付け強くねぇし、結構いいわこれ》
《よかったな。お礼言っとけよ》
「にーに、ありがとーです。ぼく、これ、嬉しいするです」
「萌ッ」
なんて可愛いんだ。
「……鳴雷の最期の言葉が「モッ」になっちゃった」
「何言おうとしてたんでしょう?」
「さぁ……ろくでもないことってのだけは確かかな」
《お兄ちゃん!? ミツキお兄ちゃん! 大丈夫? どうしたの?》
ウサ耳付き弟のあまりの可愛らしさに心臓がぎゅうっと縮み、机に突っ伏してしまっていた。呆れ返るセイカの声をかき消して、不安そうなノヴェムの英語が聞こえた。
「大丈夫だよ、ごめんごめん……」
いくら俺の英語力が低くとも、俺の名前を呼んでいたことや、大丈夫かと聞かれていたことくらいは分かる。心配してくれたノヴェムの頭を撫で、微笑みかけた。
「なんか描いてるな、ウサギ?」
「ハロウィンウサギっていうんだって。アトラクションもそいつのばっかり、園内の飾りもウサギだらけだったよ」
「ふーん……相当ウサギ好きなんだな、あの双子」
「みたいだな。どう? 美味い?」
「うん」
クッキーはコーヒーに合う味だと思う。
「セイカはコーヒーいいのか? そろそろおかわり作るからついでに作ってこようか?」
「ん……いいや、水ちょうだい」
「コーヒー嫌い? ならジュースもあるぞ」
「別に嫌いって訳じゃ……んー、水で」
「遠慮してる?」
「……クッキーの味だけ味わいたい、かな」
やはり遠慮しているように思える。いるかと聞いたらいらないと答えるのがセイカなのだから、もう何も聞かずに作って渡してやればよかったかな。いや、もし本当にコーヒーが苦手なら悪いし……
《おいしい!》
《よかったですね、遊園地のお土産だそうですよ》
《遊園地……》
ニコニコ笑顔でクッキーを齧っていたノヴェムが急にキッと目付きを鋭く変え、俺を見上げた。
《誰と行ったの! ぼくという婚約者がありながら!》
「ふふっ……」
《何笑ってるのセイカお兄ちゃん!》
「な、なんだ? ノヴェムくんなんか怒ってる……よな? えっなになに、どしたの、俺? 俺悪いの?」
なんか俺さっきからずっと「?」付けて喋ってない?
「えー、なんで……あっ、ちょっと待っててノヴェムくん。お土産あるんだ、ちょっと待ってね」
手を広げて突き出す、きっとどこの国でも「待って」や「止まれ」になるだろうボディランゲージを置いてまた積んだ土産物の元へ。
「あったあった。これこれ。ほら、ノヴェムくん。お土産!」
カボチャのランタンと箒を持ち、黒い三角帽子とマントを身に付けた、ウサギのぬいぐるみ。カミア曰く最もポピュラーなハロウィンウサギの姿らしいそれをノヴェムに渡した。
《うさぎ……?》
《お土産だそうです。ノヴェム、婚約者への贈り物を浮気相手と一緒に行った場で買う者が居ますか?》
《居そう》
《余計なこと言わない百鬼丸ボーイ。居ませんよ、ノヴェム》
《……うん。お父さん、大人だもん。大人の方がうわきに詳しい》
《お父さんは浮気したことありませんからねっ?》
《お父さん、まおとこ……》
《違いますったら!》
ぬいぐるみを両手で持ち、じっと見つめながら、ノヴェムはネイと何やら話している。渡せば「おにーちゃんありがとー」なんてにぱっと笑ってくれると思っていたのだが、俺は子供を侮り過ぎているのだろうか。
《お兄ちゃん浮気してないんだね》
《そうなりますね》
《……アンタ、ノヴェムが鳴雷を婚約者とか言ってんのいいわけ?》
《誰を好きになるかはノヴェムの自由ですよ》
《…………寛容っつーか、放任》
ノヴェムがようやく顔を上げた。碧と黄の純粋な瞳はもう俺を睨んだりしていない。
「ありがと、おにーちゃ! だいすき!」
「……! それそれそれだよ俺が欲しかったのは~。急に怒るから何かと! お兄ちゃんびっくりしちゃったぞー? よしよし、ふふふ……可愛いなぁもう」
《兄貴、俺には何かないの。個別の。まさか他人ん家のガキに個別やって、てめぇの可愛い弟に何もやらねぇなんて……ねぇよなぁ?》
「鳴雷、秋風が何か欲しがってる」
「何か!? うーん……アキはぬいぐるみ喜ぶ歳じゃないしさ、文房具も使わないし……正直難しいんだよな、アキへのプレゼントって。まぁ、一応……あるけど」
アキの趣味と言えば筋トレ、ダンス、サウナ、プール、そんなところだろう。物を楽しむタイプじゃない。だから遊園地に行った時なんて土産選びが難しいんだ。
「ほら」
《何これ》
「何これ、だってさ」
「ヘアバンド……アキ前髪長いから、顔洗う時とか運動してる時とか邪魔かなって」
針金入りでピンと立ったウサ耳が特徴の白いヘアバンドだ。これを身に付けたアキは彼自身の白さと赤い瞳によって白ウサギの愛らしさを得るのだ。
《あー、前髪押さえるヤツ? こう……?》
《耳が変な方向いてる、もうちょい右に回せ。回し過ぎ、戻せ、ストップ、そこ》
アキはセイカと話しながらヘアバンドを身に付けた。前髪を上げて額を丸出しにし、頭の上にぴょこんと耳を立たせる。
「Oh……これがジャパニーズ、ケモ耳モエ」
「萌え~! 可愛いぞアキ! なんか、なんかこう、テンション上がる!」
《前髪邪魔じゃねぇし、そんなに締め付け強くねぇし、結構いいわこれ》
《よかったな。お礼言っとけよ》
「にーに、ありがとーです。ぼく、これ、嬉しいするです」
「萌ッ」
なんて可愛いんだ。
「……鳴雷の最期の言葉が「モッ」になっちゃった」
「何言おうとしてたんでしょう?」
「さぁ……ろくでもないことってのだけは確かかな」
《お兄ちゃん!? ミツキお兄ちゃん! 大丈夫? どうしたの?》
ウサ耳付き弟のあまりの可愛らしさに心臓がぎゅうっと縮み、机に突っ伏してしまっていた。呆れ返るセイカの声をかき消して、不安そうなノヴェムの英語が聞こえた。
「大丈夫だよ、ごめんごめん……」
いくら俺の英語力が低くとも、俺の名前を呼んでいたことや、大丈夫かと聞かれていたことくらいは分かる。心配してくれたノヴェムの頭を撫で、微笑みかけた。
51
お気に入りに追加
1,213
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~
雷音
BL
全12話 本編完結済み
雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ
一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。
※闇堕ち、♂♂寄りとなります※
単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。
(登場人物は全員成人済みです)
ポチは今日から社長秘書です
ムーン
BL
御曹司に性的なペットとして飼われポチと名付けられた男は、その御曹司が会社を継ぐと同時に社長秘書の役目を任された。
十代でペットになった彼には学歴も知識も経験も何一つとしてない。彼は何年も犬として過ごしており、人間の社会生活から切り離されていた。
これはそんなポチという名の男が凄腕社長秘書になるまでの物語──などではなく、性的にもてあそばれる場所が豪邸からオフィスへと変わったペットの日常を綴ったものである。
サディスト若社長の椅子となりマットとなり昼夜を問わず性的なご奉仕!
仕事の合間を縫って一途な先代社長との甘い恋人生活を堪能!
先々代様からの無茶振り、知り合いからの恋愛相談、従弟の問題もサラッと解決!
社長のスケジュール・体調・機嫌・性欲などの管理、全てポチのお仕事です!
※「俺の名前は今日からポチです」の続編ですが、前作を知らなくても楽しめる作りになっています。
※前作にはほぼ皆無のオカルト要素が加わっています、ホラー演出はありませんのでご安心ください。
※主人公は社長に対しては受け、先代社長に対しては攻めになります。
※一話目だけ三人称、それ以降は主人公の一人称となります。
※ぷろろーぐの後は過去回想が始まり、ゆっくりとぷろろーぐの時間に戻っていきます。
※タイトルがひらがな以外の話は主人公以外のキャラの視点です。
※拙作「俺の名前は今日からポチです」「ストーカー気質な青年の恋は実るのか」「とある大学生の遅過ぎた初恋」「いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました」の世界の未来となっており、その作品のキャラも一部出ますが、もちろんこれ単体でお楽しみいただけます。
含まれる要素
※主人公以外のカプ描写
※攻めの女装、コスプレ。
※義弟、義父との円満二股。3Pも稀に。
※鞭、蝋燭、尿道ブジー、その他諸々の玩具を使ったSMプレイ。
※野外、人前、見せつけ諸々の恥辱プレイ。
※暴力的なプレイを口でしか嫌がらない真性ドM。
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる
海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる