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特技は土産選びです (水月+ネイ・セイカ・ミタマ・荒凪)
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以前、母親から誕生日プレゼントとして贈られたピンク色の部屋着をアキは気に入らない様子だった。だから可愛らしいものは嫌いなのかと危惧していたが、アキは今ヘアバンドを着けたままクッキーを齧っている。
「きゃらが被るのぅ……早々に外してもらわんと困るぞぃ」
なんて呟きながらミタマは背もたれに挟んだ尻尾を不機嫌そうに揺らしている。猫っぽい仕草だ。
「一応ネイさんにもあるんですけど」
「おや、嬉しいですね。ノヴェムにいただけただけで十分過ぎますのに」
「いやぁ……ちょくちょくピザもらってますし、こういう機会にちみちみ返してかないと」
ネイに借り作るの、怖いし。
「律儀ですねぇ。何故、一応なんです?」
「んー、微妙なんで……いらなかったらいらないって言ってもらえば、俺が使うんでって感じです。どうぞ」
透明なビニールで包装されたそれをネイの手のひらに置いた。
「これは、ミント……ですかね?」
「はい。ミントタブレット、食べるとスッとして気持ちいいヤツです」
「……口臭ぇんだよお前! ってことデス?」
「ち、違いますよ! お仕事とか色々大変そうですし、なんか清涼感あるヤツいいかなって。お口はいい匂いですよ多分、知りませんけど。ってかネイさんほど美人なら口臭ドブでもむしろ興奮するって言うか」
「落ち着け鳴雷、気持ち悪くなってる」
「えっ嘘マジで俺今なんて言ってた!?」
「……早口だったからノヴェムには聞こえてない、安心しろよ」
一体何を口走ったんだ俺は。ついうっかり思い付いたこと全て話していたんだろう、思考を通さず感情をそのまま口にしていると記憶にほとんど残らないんだ。
「えぇ……ネイさん、ごめんなさい。不快にさせて……」
「いえ、あなたらしくて大変好ましい内容でしたから」
《……気遣いじゃなきゃキモいぜ》
《私ロシア語話せますからね、百鬼丸ボーイ》
「うげ……忘れてた」
「セイカ? 何をだ?」
「え、あぁ、いや……」
「忘れてなんかないぞ、セイカの分もちゃんと買ってある」
「…………ありがとう」
「大したもんじゃないぞ? ほい」
渡したそれをセイカはすぐにアキに差し出した。アキは何も言わず何も聞かず、粘着テープを剥がした。言葉なく開封を肩代わりする姿に俺は強い嫉妬心を覚えた。
「ウサギ柄だ。ウサギしかないのか、その遊園地」
「そういえば私のミントもパッケージにウサギ描いてますね、可愛いデス」
「俺のは……何これ、靴下? 違うな……結露防止にペットボトルとかに被せるヤツ?」
「椅子とか机用の靴下。床傷付かないように履かせるんだってさ」
「…………え、なんで俺……これ?」
「切れてる方の手足、なんかカバーあった方がいいかなって。セイカそのまま床這いずるだろ? 風呂上がりとかに保湿してやってるけどさ、このままじゃ早々におじさんの踵みたいになるんじゃないかって」
「カチカチガサガサ、デスね……私はまだ、セーフ……セーフのはず……」
自分の踵を見つめてぶつぶつと呟いているネイを見ていると、何だか罪悪感が湧いてきた。
「そっか……うん、確かに、ちょっと痛かった。ありがとう鳴雷」
「椅子とか机用だから四枚組なんだ、洗濯中の予備にもなるだろ?」
「そうだな、ありがとう……本当に」
潤んだ目で俺を見つめ、礼を言いながら、セイカはアキに椅子用ソックスを渡し、切断された右手と左足に履かさせた。
「…………キツくないか?」
ノールックで、無言で、それでも意図を察し合う仲に、酷く嫉妬した。けれどそれを口に出したりなんてしなかった、誰か俺を偉いと褒めて欲しい。
「うん、大丈夫」
「ゴム緩めるくらい俺余裕だからな、知ってると思うけど手芸趣味なんだ。キツかったら遠慮するなよ」
「してないよ、本当に大丈夫」
こういう時のセイカはあまり信用出来ない、後でちゃんと確認しておこう。
「コンちゃんにはブラシね」
ブラシの頭部分にウサギの耳が飾りとして生えた、可愛らしいものだ。
「ワシにもあるのか! よいよい、殊勝な心がけじゃ」
「持ち手のここスイッチになっててね、押すとカシャンってなって……抜け毛が落ちるようになってるんだ」
「ほー、ええのぅ。ん……? このカラクリ、てれびで見たのぅ……猫の、ぶらっしんぐ映像だったような…………なーっ!? よう見たらぱっけーじにぺっと用とデカデカ書いとるのぉ!」
「……嫌だった? 髪以外のブラッシングも出来た方がいいかと思っただけなんだけど」
「くぬぅ……実際ワシのぶらしは動物用であるべきじゃからのぅ。みっちゃんの判断は正しい……ぐぬぬ」
何やら不満がありそうだ。次からは人間用の物を贈るようにしようかな。
「最後に……荒凪くん、どうぞ」
「きゅ! まてた。ありがとーみつき、あけてい?」
「いいよ」
荒凪は今まで、みんなに土産を渡していく俺の手をじっと見つめていた。とんでもない圧だった。箱入りで大きいからと紙袋の一番下に入れていなければ、彼への贈り物を早々に渡していただろう。
「……? きゅるる……さかな?」
荒凪の手の上にあるのは、チェーンソー片手にサメに跨っている可愛らしいウサギのオモチャだ。
「イカれた取り合わせのふゅぎあだな」
セイカ、なんで上手くフィギュアって言えないことあるんだろう。可愛い。
「バイオレンス因幡の白兎デスね」
「水に浮くんだよこれ。で、サメの尾ビレがスクリューになっててね……ここ回すと尾ビレがクルクル~ってして、ビューンと……水の中じゃないと分かんないよねぇ。プール入った時に試してみて」
「……! およぐ?」
「そうだね、荒凪くんと一緒に泳ぐよ」
「きゅ~……! みつきだいすき!」
やはり荒凪にはプールで遊べるグッズがウケた。歌見が縁日で取ってやった金魚のオモチャを大層気に入っていたから、この推理は楽だった。
「ふふふ……」
全員にピッタリのお土産を選べた気がする。流石俺、流石ハーレム主、自己肯定感うなぎ登りだ。
「きゃらが被るのぅ……早々に外してもらわんと困るぞぃ」
なんて呟きながらミタマは背もたれに挟んだ尻尾を不機嫌そうに揺らしている。猫っぽい仕草だ。
「一応ネイさんにもあるんですけど」
「おや、嬉しいですね。ノヴェムにいただけただけで十分過ぎますのに」
「いやぁ……ちょくちょくピザもらってますし、こういう機会にちみちみ返してかないと」
ネイに借り作るの、怖いし。
「律儀ですねぇ。何故、一応なんです?」
「んー、微妙なんで……いらなかったらいらないって言ってもらえば、俺が使うんでって感じです。どうぞ」
透明なビニールで包装されたそれをネイの手のひらに置いた。
「これは、ミント……ですかね?」
「はい。ミントタブレット、食べるとスッとして気持ちいいヤツです」
「……口臭ぇんだよお前! ってことデス?」
「ち、違いますよ! お仕事とか色々大変そうですし、なんか清涼感あるヤツいいかなって。お口はいい匂いですよ多分、知りませんけど。ってかネイさんほど美人なら口臭ドブでもむしろ興奮するって言うか」
「落ち着け鳴雷、気持ち悪くなってる」
「えっ嘘マジで俺今なんて言ってた!?」
「……早口だったからノヴェムには聞こえてない、安心しろよ」
一体何を口走ったんだ俺は。ついうっかり思い付いたこと全て話していたんだろう、思考を通さず感情をそのまま口にしていると記憶にほとんど残らないんだ。
「えぇ……ネイさん、ごめんなさい。不快にさせて……」
「いえ、あなたらしくて大変好ましい内容でしたから」
《……気遣いじゃなきゃキモいぜ》
《私ロシア語話せますからね、百鬼丸ボーイ》
「うげ……忘れてた」
「セイカ? 何をだ?」
「え、あぁ、いや……」
「忘れてなんかないぞ、セイカの分もちゃんと買ってある」
「…………ありがとう」
「大したもんじゃないぞ? ほい」
渡したそれをセイカはすぐにアキに差し出した。アキは何も言わず何も聞かず、粘着テープを剥がした。言葉なく開封を肩代わりする姿に俺は強い嫉妬心を覚えた。
「ウサギ柄だ。ウサギしかないのか、その遊園地」
「そういえば私のミントもパッケージにウサギ描いてますね、可愛いデス」
「俺のは……何これ、靴下? 違うな……結露防止にペットボトルとかに被せるヤツ?」
「椅子とか机用の靴下。床傷付かないように履かせるんだってさ」
「…………え、なんで俺……これ?」
「切れてる方の手足、なんかカバーあった方がいいかなって。セイカそのまま床這いずるだろ? 風呂上がりとかに保湿してやってるけどさ、このままじゃ早々におじさんの踵みたいになるんじゃないかって」
「カチカチガサガサ、デスね……私はまだ、セーフ……セーフのはず……」
自分の踵を見つめてぶつぶつと呟いているネイを見ていると、何だか罪悪感が湧いてきた。
「そっか……うん、確かに、ちょっと痛かった。ありがとう鳴雷」
「椅子とか机用だから四枚組なんだ、洗濯中の予備にもなるだろ?」
「そうだな、ありがとう……本当に」
潤んだ目で俺を見つめ、礼を言いながら、セイカはアキに椅子用ソックスを渡し、切断された右手と左足に履かさせた。
「…………キツくないか?」
ノールックで、無言で、それでも意図を察し合う仲に、酷く嫉妬した。けれどそれを口に出したりなんてしなかった、誰か俺を偉いと褒めて欲しい。
「うん、大丈夫」
「ゴム緩めるくらい俺余裕だからな、知ってると思うけど手芸趣味なんだ。キツかったら遠慮するなよ」
「してないよ、本当に大丈夫」
こういう時のセイカはあまり信用出来ない、後でちゃんと確認しておこう。
「コンちゃんにはブラシね」
ブラシの頭部分にウサギの耳が飾りとして生えた、可愛らしいものだ。
「ワシにもあるのか! よいよい、殊勝な心がけじゃ」
「持ち手のここスイッチになっててね、押すとカシャンってなって……抜け毛が落ちるようになってるんだ」
「ほー、ええのぅ。ん……? このカラクリ、てれびで見たのぅ……猫の、ぶらっしんぐ映像だったような…………なーっ!? よう見たらぱっけーじにぺっと用とデカデカ書いとるのぉ!」
「……嫌だった? 髪以外のブラッシングも出来た方がいいかと思っただけなんだけど」
「くぬぅ……実際ワシのぶらしは動物用であるべきじゃからのぅ。みっちゃんの判断は正しい……ぐぬぬ」
何やら不満がありそうだ。次からは人間用の物を贈るようにしようかな。
「最後に……荒凪くん、どうぞ」
「きゅ! まてた。ありがとーみつき、あけてい?」
「いいよ」
荒凪は今まで、みんなに土産を渡していく俺の手をじっと見つめていた。とんでもない圧だった。箱入りで大きいからと紙袋の一番下に入れていなければ、彼への贈り物を早々に渡していただろう。
「……? きゅるる……さかな?」
荒凪の手の上にあるのは、チェーンソー片手にサメに跨っている可愛らしいウサギのオモチャだ。
「イカれた取り合わせのふゅぎあだな」
セイカ、なんで上手くフィギュアって言えないことあるんだろう。可愛い。
「バイオレンス因幡の白兎デスね」
「水に浮くんだよこれ。で、サメの尾ビレがスクリューになっててね……ここ回すと尾ビレがクルクル~ってして、ビューンと……水の中じゃないと分かんないよねぇ。プール入った時に試してみて」
「……! およぐ?」
「そうだね、荒凪くんと一緒に泳ぐよ」
「きゅ~……! みつきだいすき!」
やはり荒凪にはプールで遊べるグッズがウケた。歌見が縁日で取ってやった金魚のオモチャを大層気に入っていたから、この推理は楽だった。
「ふふふ……」
全員にピッタリのお土産を選べた気がする。流石俺、流石ハーレム主、自己肯定感うなぎ登りだ。
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