冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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アイドルとグリーティング

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ウサギの着ぐるみが踊っているのを眺めながら、ヒラメを食べる。妙な組み合わせだが悪くない、ウサギの踊りよりもはしゃぐカミアに目が向いてしまう。

「カミア、飯食わないと冷めるぞ」

「うん……」

生返事だ。彼の視線は着ぐるみから離れない、少し嫉妬してしまうな。

「……お、一曲終わったな」

せめてこの隙に食べるものだと思うのだが、カミアはじーっとウサギの着ぐるみを見つめていてフォークを持とうともしていない。

「はーい、ではここでハロウサちゃんと踊りた~いっていうお友達、居るかな~?」

参加型なのか。

「ひぇーキッツ……こういうの出れるのって子供でも限られるよな、俺幼稚園児だった時でも出れないタイプだもん……人の陰陽は生まれつきなんだなぁ」

「はいはいは~い! 僕踊りた~い!」

俺のぼやきは聞いてもらえず、カミアが立ち上がって手を振った。

「……!? ちょっ、おい! 待て待て待ておいっ……! お前っ、立場考えろよ」

「え、やっぱり子供に譲るべきかな……でもハロウサの近く行きたい……」

「お前超有名アイドルだぞ……!?」

「…………あっ」

大好きなマスコットを前にした興奮のあまりド忘れしていたのか、こういうちょっと抜けたところが人気の秘訣なんだろうなぁと呆れながら後方彼氏面をしてみる。

「えへへ……」

「そちらの席の方~! どうぞ前へ!」

照れ笑いと共にカミアが席に着いた直後、司会の明るい声が響いた。そういえばカミア以外に立ち上がってまで立候補した者は居なかったような……流石に全席を確認した訳ではないけれど。

「ささ、どうぞどうぞ」

「ぁ、はいっ! みぃくんごめんマスク貸して……!」

「マスクだけで大丈夫とは思えないけどな」

カミアは俺のマスクを着けると前髪を手櫛で伸ばして目元を隠そうとしたが、すぐにくりんと巻いてしまって目元が隠れることはなかった。

「ハロウサちゃんの隣へどうぞ~……あれ? お兄さん……あの、アイドル……カミアに似てるって言われません?」

「へっ!? ぁ……た、たまに~?」

「やっぱり~! 髪型までそっくりですよ、寄せてたり……?」

「……まぁ、ちょっと?」

食事の手を止め耳を澄ませると、周囲の席から「本物じゃない?」「何かのドッキリ?」という声が聞こえてきた。バレバレじゃないか。

(人間観察バラエティとかじゃないんですよ……! このまま司会のお姉さんがそっくりさんということで通してくれれば、ドッキリ番組のようなネタばらしがなければ、周りのお客さんも「そっくりさんかぁ……」となりますよな? なれ!)

鼓動が激しく脈打っている。もう飯食ってる場合じゃない。味分かんないし水も喉を通らない。

「ミュージックスタート!」

着ぐるみとカミアが踊り出す。流石ダンスが仕事のアイドル、参加型だと知らずに見ていても何の違和感もなく楽しめるだろう高クオリティだ。



短めのダンスの後、カミアはわざとらしく可愛らしい大げさな仕草のウサギと握手したり、ハグをしたり、最後には記念撮影をして席に戻ってきた。

「えへへへ……ハロウサ可愛かったぁ。すごいよぉ、超贅沢なグリーティングって感じ」

「気が気じゃなかったよ。さっさと食べて部屋帰ろう。ショー終わって明るくなっても食ってたら……流石に顔丸出しじゃそっくりさんって誤魔化しも効かないぞ」

「……ショー最後まで見たい」

「あぁ、じゃあさっさと食べてショー終わったらすぐ帰ろう。マスク貸しとくから食べ終わったら着けろよ」

「…………ごめんね?」

「……えっ? ゃ、違う、怒ってないよ。そう聞こえた? だとしたらごめん……本当に怒ってないんだ、少しもイラついてもない、ほんとに……本当、に。信じてくれ」

怖がりながら相手の機嫌を伺う目が今俺に向けられている、セイカが頻繁にする目つきだからよく分かる。焦って饒舌になればなるほど信用は失われる。

「……ただ、カミアがバレないか心配だっただけで」

「…………うん」

「本当に怒ってないからなっ?」

「うん……」

せっかく好きなマスコットと触れ合って上機嫌になっていたのに、落ち込ませてしまった。引き続き着ぐるみが踊っている明るい音楽が心境に合わず、心地悪い。



着ぐるみの中は暑いだろうに、よく何十分も踊っていられるな……曲の合間にステージの裏側に引っ込むから、交代しているのかな? なんて考えながらステージを眺めた。

「ごちそうさま」

カミアが手を合わせ小さな声でそう呟いた。ステージが終わると同時に、電灯が元通りに明るくなるのと同時に、俺達は席を立った。

「ごちそうさまでしたー……」

電子決済を素早く済ませ、スタッフに軽く会釈してレストランを後にした。

「……みぃくん、マスク返そうか?」

「え、いいよ。部屋帰るまで着けときな」

「でも……お会計の人、みぃくん見てぼーっとしてた、見とれてたんだよきっと。みぃくんカッコイイからみんながみぃくん好きになっちゃう……今日は僕だけのみぃくんだから、見られるの嫌! みぃくん着けて」

マスクを無理矢理着けさせられた。風呂上がりに着けたばかりのマスク、カミアが先程まで着けていたマスク……興奮してきたな。

「んー、マスク程度じゃまだカッコイイなぁ。なんかもっと、目細めるとかしてくれる?」

「……こうか?」

「ダメ……微笑みかけられてる……ときめくぅ……違うよもっとこう眩しいみたいな顔! 微笑むんじゃなくてぇ……出来ない?」

「難しいなぁ」

わざわざ彼氏にブサイクな表情を見せるバカがどこに居る。俺はいつだってキメてみせるぞ。

「ま、いいや。もうエレベーター乗るし……」

「あ、あのっ、カミア……本物のカミアですよねっ!?」

エレベーターの前に立ったその時、後ろから声をかけられた。緊張した様子の女性だ。

「えー……ふふ、バレた? お忍びなんだぁ、つい手挙げちゃったけどそっくりさん扱いでラッキーって感じでさ。僕が今日ここに泊まってること、みんなには言わないでね☆」

女性はこくこくと頷いている。

「……あの、お忍び……なら、しゃ、写真とか、ダメ……ですか」

「ん~、いいよ! ちょっとだけね」

「…………おい、エレベーター着いたけど」

「もう着いた? あ、ねぇねぇお姉さん、最上階泊まってる? 違う? じゃ、乗るよね。一緒に乗ろ、エレベーターで撮ろっか、他に人居ないしちょうどいいよね」

「えっ!? い、一緒に……? いいんですかっ?」

「いいって。乗ろ☆」

「……おい待てカミア、女の人と一緒はまずいだろ。何書かれるか分かんないぞ」

「えー、みぃくん一緒だしいいじゃん。誰も居ないし」

「いいからやめとけ。その辺で撮れよ、背景にもいい感じだろ」

「うーん……うん。分かった。お姉さん、こっち来て。横並んで。あ、みぃくん撮ってよ」

カミアと女性は俺が指した可愛らしい模様の壁を背にした。俺は嫌々ながら女性からスマホを受け取り、二人を写した。
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