冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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お祭りの終わり (水月+歌見・リュウ・荒凪・ミタマ・ハル・カンナ・セイカ・シュカ・サン)

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鈴カステラを数袋買い、彼氏達と分け合いながら花火の感想を語り合った。そのうちにノヴェムはまた寝てしまい、体感体重と体温を増加させた。

「寝ちゃった……なんで人って寝ると重くなるんでしょうね」

「力抜くからだろ?」

「力抜いたらなんで重くなるんですかね、持ってる量は同じじゃないですか」

「掴まれへんようなるからやろ。向こうからしがみつかれとったら肩やら首やらに分散すんのが、抱えとったら腕で全部支えなあかん。そら重なるわ」

流石リュウ、それらしい説明だ。

「でも膝に乗せてて寝られてもなんか重くなる気がしないか?」

「知らん、誰ぞ乗せたことなんかあらへんし」

「適当なヤツだな……」

「みつき、みつき、僕達……だっこ、したい」

荒凪が声を発した瞬間、リュウがビクッと身体を跳ねさせて怯え、黙り込んだ。

「荒凪くん? 抱っこしたいって、えっと、まさか」

「のべむくん」

「ノヴェムくん抱っこしたいの?」

「……!? ぁ……あかんっ、あかんよ?」

気の毒に感じるほど怯えた声でそう言いながら、リュウは俺の浴衣の裾を掴んで首を横に振った。

「…………コンちゃん?」

たまに創作で見かける幼子は怪異の影響を受けやすいとか、そういうのが現実にもあるのかもしれない。リュウの怯えが伝染り始めた俺はミタマに判断を託した。

「大丈夫じゃろ」

「……いいよ、荒凪くん。落としちゃダメだよ、寝てるから首痛めないように頭支えてあげてね」

ミタマが言うならきっと大丈夫だ。リュウも二度目は止めてこない、荒凪が怖かっただけで特に理由はなかったみたいだ。俺は荒凪の膝にそっとノヴェムを乗せた。

「ちったい」

「ノヴェムくんちっちゃいよねぇ。優しく触るんだよ」

「うん」

「腕を枕みたいにしてあげて……そうそう、うん、上手。楽な姿勢探して……どう? ずっと抱いてる?」

「うん。ちったい、の……かわい」

車椅子の肘置きに置いた荒凪の腕を枕にさせ、もう片方の肘置きに小さな足をかけさせ、荒凪のもう片方の腕で身体を落ちないように支えさせる。

「疲れたりして交代して欲しくなったら俺呼んでね」

「うん」

ずっと抱えているのにも疲れていたところだ。車椅子を使っている荒凪が抱いていてくれるなら長持ちしそうだし、楽でいい。

「足悪いんじゃないの? 大丈夫?」

「あぁ、足先の辺り怪我してるだけなんだ。治ったら普通に歩けるはずだし、問題ないよ」

「がぶー、された」

「……? 噛まれたってこと? え、歩けない怪我するほどの傷つけてくる動物って何……怖っ」

「あー、脱走したデカい犬、だったかな。俺も詳しくは知らない」

今後傷跡を見られてもいいように、狐に歯型が似ているだろう動物を上げてみた。

「犬っ……!」

犬と聞いたミタマが目を見開き、それから不服そうに俺を睨んだ。石像のくせに狐としての誇りが強いんだから不思議な話だ。

「みー、くん……」

「ん? どうした、カンナ」

ノヴェムを抱いていて疲れた腕を垂らしていると、その腕にカンナが抱きついてきた。

「……ゃ、と……空いた」

「やっと空いた……? あぁ、ノヴェムくんずっと抱っこしてたからなぁ。寂しかったか? ふふ……可愛いなぁ、カンナは」

もう片方の手でカンナの頬をつつく。ノヴェムの頬に勝るとも劣らぬぷにぷにほっぺだ。いつまでも触っていたい。

「皆帰って行くな。ミツキ達はいつ帰るんだ?」

「せっかくみんなと居るんだし、もう少しダラダラしてたいなぁ」

「ぅん……も、少し…………っしょに、いた……ぃ」

大人しいカンナは中々彼の方から俺に話しかけに来ない、だから祭りの最中あまり話せていない。リュウやシュカの背後に張り付いていたり、腕に抱きついていたりする姿はよく見かけた。談笑する姿はあまり見ていないけれど、夜店の料理やお菓子に顔を綻ばせる姿は見た。

「お祭りどうだった?」

「楽し、か……た」

上手く構ってやれなかったと思っていたけれど、ちゃんと楽しめたようで安心した。

「よかった。セイカ、薬飲んだか? 飯の後」

「……飲んだ。けど……薬とか、あんまり人前で話さないで欲しい」

「なんで~? いいじゃん別に」

「ええ、周りの人間に知られていた方が飲み忘れ防止のためになると思いますよ」

肯定的なハルとシュカのおかげで俺はあまり落ち込まずに済んだ。

「嫌だろ……知り合いが、薬漬けなの」

「もう薬漬けってほど飲んでないだろ。入院中はガンガン痛み止め入れられてたけど」

「痛み止めならいいけど、向精神薬とか……嫌じゃない?」

ハルとシュカは不思議そうな顔を見合わせ、気遣いでも何でもなく「別に……」と口々に言った。

「……あぁ、そう。いいヤツだな、お前ら」

「せーか、何気にしてんの~?」

「よく分からない人ですね」

歌見を始めとした大人組、そしてリュウ辺りは表情から察するに、セイカが向精神薬への偏見を気にしていることを分かっている。その上で静観を決めているようだ。

「みんなお腹いっぱいになれたか? 腹八分目でもいいけど……特にシュカ」

「腹四分目くらいです」

半分ですらない、だと……

「全然やな」

「しゅーいつもみたいに三人分くらい食べないんだも~ん、そりゃお腹膨らまないでしょ」

「……高いんですよ、祭りの夜店って。プロが作っている訳でもないのに。もったいなくって」

「分かるけどね~」

「シュカ以外はみんな満腹か?」

彼氏達からバラバラに肯定の返事が来る。

「そっか。じゃあシュカは何か買って帰るってことになるな……スーパー寄るなら付き合うよ」

「そうですねぇ……この時間なら割引シールも増えてきているでしょうし」

「シュカくんウチ来ない? このまま寝てもいいんだけど、食べたくもあるって微妙な感じなんだよね~ボク。七分目ってとこ? ちょっとだけ何か用意するのは面倒なんだけど、シュカくんの分もってんならついでに出来るし」

「……作ってくださる、ということですか?」

「うん。一昨日、買い置きのパスタの賞味期限ヤバいってヒト兄貴に教えられたんだよね~……全く、賞味期限とかは点字も付けて欲しいよ」

「その分高くなりそうだからダメです。早めに食べるよう心掛けてください」

「バリアフリーの精神とかないの~? あ、パスタソースがないんだよね。水月のアイディアもらってスーパー寄ろっか、好きなの買ってあげる」

「アイディア代として今夜の二人のイチャつきを動画、写真などに残し、後日俺に何らかの思い出話をすることを要求する!」

「ボク画面見えないから写真苦手なんだよね~。お菓子も買ってあげるからシュカくんやって」

「本気にしなくていいと思いますけど……分かりました」

「ッシャア!」

ノヴェムが眠った今、カッコイイお兄ちゃんのイメージを崩さないよう努める理由などない。俺は大きくガッツポーズを決めた。
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