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みんな家まで送りたい (水月+カンナ・ハル・リュウ・シュカ・レイ・ミタマ)

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シュカとサンは二人だけでスーパーに寄り、サンの家で食事を取ると決めたらしい。

「じゃ、俺達はまっすぐ帰るか」

「そろそろ帰んないとお肌に悪いしね~」

「はぁ……色々と疲れたからすぐ寝れそうやわ」

リュウは視線を真っ直ぐに向けないようにはしているが、意識は常に荒凪に向いている。警戒、恐怖、そんな感情が見て取れる。

「みんな家まで送って行きたいところなんだけど……流石になぁ。一人送ってる間、他のみんなには待ってもらうか連れ回すことになるし……初めてハーレムの不便さ感じたよ」

「初めてってせんぱい……マジすか」

「乙女じゃあるまいし、送ってもらったりなんてしなくて大丈夫だよ~。危ないことなんか何にもないない」

乙女に見える格好をしているためにナンパなどを受けているハルが言っても説得力はない。暗い夜道では髪が長く華奢なだけで女性と間違われ襲われる可能性があるし、そもそも俺が選び抜いた美少年達なのだから並の女性よりは需要が高いのでは? 犯罪者に狙われやすいかどうかを需要って言うの嫌だけど。

「難しい顔しとんで。自分が無駄に女っぽいから」

「これが一番俺に似合うカッコなの」

「女っぽいのんには変わりないやろがい」

「前ナンパされてましたしね」

「家、駅から近いし全然大丈夫! そんな目で見ないでよぉ……犯罪者はぁ! 抵抗しなさそうな大人しそうな子狙うの。俺みたいなイケイケはセーフ! だから危ないのはしぐしぐだよ」

怪訝な顔や心配そうな視線を疎ましがったハルは、彼氏達の心配の矛先がカンナに向くよう誘導した。カンナは驚いた顔で固まっている。

「みっつんだってしぐしぐにばっかセクハラしてるじゃん。しやすいんだよ、しぐしぐ」

「なんちゅう言い草……」

「ぼく……だ、じょぶ……」

「へ~? じゃあ、知らないおっさんにさぁ……こんなことされたらどうする!?」

ハルは、俺の腕を抱き締めたまま反論したカンナの尻を撫で回した。

「……!?」

「ほらほら~、どうすんの? 撫でるだけじゃ終わんないよ、揉んじゃうよ~?」

「ゃ……」

浴衣の上からでも分かる肉付きのいいむっちりとした尻が、筋肉の少ない細い手に形を僅かに歪められる様に俺は興奮した。

「ん~?」

「ゃ、だっ……」

「そんなの全然効かないってぇ。もっと大声出して人呼ぶとか~、振り切って逃げるとかしなきゃ~……知らない人に、お尻すっごい触られちゃうよ?」

「ゃあ……みぃくん、たすけて……」

カンナは俺の腕をぎゅうぅっと抱き締める。か細い声で助けを求めることしか出来ない彼の姿に、キュンと胸が痛んだ。

「……ほら! しぐのがヤバいっしょ!?」

カンナが痴漢に抵抗出来ないのを確認するとハルはリュウやシュカに向かって叫んだ。

「ヤバいわ……」

「正直、ちょっとクるものがありますね。苛めたくなります」

「リュウせんぱいは今みたいなのを参考にするべきっす。思わず意地悪しちゃいたくなるっすよ」

「……! そうなん? 水月」

「どちたの~! うりうりうりうり、ちゅっちゅっちゅっちゅ、ってしたくなったな。俺は助けを求められた側だからさぁ……イマイチそっちから見たカンナの弄りたくなる感じが分かんない」

「みー、くん……」

俺の腕に抱きついて俯いていたカンナが顔を上げ、俺を見つめる。まぁ、完璧に固められた髪によって目元は見えないから、本当の目線は定かではないが。

「……みぃ、くん…………ちゅー、した……の?」

「チューしたいのかって? あぁもちろん! いつだってしたいよ、俺はカンナを一目見た時からそのセクシーな唇に夢中さ」

「ん……じゃ、ちゅー……」

「してもいいのかっ? ふふ、じゃあ遠慮なく」

手を広げて周りの視線から口元を隠しつつ、唇を短く重ねた。一瞬の触れ合いでもカンナのぷりんとしたセクシーな唇が見た目通り、いやそれ以上の弾力を持つ素晴らしいものだと分かる。

「……人多いから、また今度二人きりでゆっくりしような」

「ぅんっ」

少し落ち込んでいた様子だったカンナの機嫌はすっかり戻ったようだ。よかった。

「さて、コンちゃん!」

「む?」

俺は鈴カステラを頬張るミタマの前でお辞儀を二回し、手を二回叩いた。そして再びお辞儀をし、願った。

「俺の彼氏達がみんな無事に家に帰れますように!」

「んっく……その願い、承った!」

鈴カステラを飲み込んだミタマはポーズを決め、そう言った。すぐ傍で鈴の音が鳴った、どこにも鈴なんてないのに。

「これでよし」

「便利に使うてくれるのぅ。それでええ、ワシはみっちゃんの願いを聞きたくて傍に居るんじゃからの」

「いつもありがとうコンちゃん」

水月は過保護だ何だと話し合う彼氏達から視線を外し、ミタマに笑顔で礼を言う。ミタマの背後で黄金の何かが激しく揺れている。

「ん……? あっ、コンちゃんっ、コンちゃん尻尾出てる……!」

「おぉ、出てしもうとったか……」

「気を付けてよ? 減ってきたとはいえ人いっぱい居るんだから」

「面目ない」

機嫌がいいと尻尾を振るなんてまるで犬だ、とは言わない方がいいのだろう。犬のように人に甘えない孤高のイメージの元、狐であることに誇りがあるようだから。

「大丈夫だったかなぁ……」

尻尾を見られてはいないかと周囲を見回すと、異様に大きな茶髪の女性と目が合った。いや、ミタマ曰く正体は男なんだっけ?

「やっほーナルちゃん、あなたも今帰りかしら?」

「ぼちぼち帰ろうかなって感じです。スイさんはもうお帰りですか? 弟さん見つかりました?」

「見つかったわ! ありがとうね気にしてくれて。ちょっと、こっち来なさい」

スイは背後に居た少年二人を呼び付ける。

「挨拶なさい。ナルちゃんは迷子のアンタ達を探すの手伝ってくれたのよ」

「迷子じゃねぇし」

スイに瓜二つの方の少年は、優しげなタレ目に反したトゲトゲしい態度を取る。反抗期かな? もう一人の少年は黒髪で、スイに似た方の少年の背に隠れてこちらを覗いている。人見知りなのだろう。

「手伝ってませんよ。中学生なら迷子とかじゃなくてお姉さんと一緒に回るの嫌だったんじゃないか的なこと言っただけで」

「そうだったかしら。ま、いいわ。このアタシに似て可愛いのが弟の蓮、こっちの子は弟の幼馴染のおもちちゃん」

姉弟合わせて睡蓮になるんだな。

「知らねぇヤツに勝手に名前教えんなよ。アンタ姉ちゃんの何?」

「お姉さんの仕事の知り合いの彼氏だよ」

聞いておいて興味がなかったようで、スイの弟は「ふーん」と生返事を寄越した。

「えっと……あっ、そっちの君は」

「もちに話しかけんな」

気まずさに耐え切れなくなった俺は背後に隠れた人見知りの少年の方に話しかけようとしたが、防がれた。

「顔が良過ぎて胡散臭い……いいかもち、こういうのに声かけられたら逃げろよ」

「え……うん」

背に庇った黒髪の少年に何やら失礼なことを吹き込んでいやがる。

「…………スイさん、弟さんいい性格してますね」

「そうなのぉ。ごめんねナルちゃん」

「じゃ、バイバイ姉ちゃん。俺ら帰るから」

「えっちょっとぉ駅まで送るってば!」

「いらねぇよ酔っ払い未成年! もちの教育に悪い!」

「あっちょっと……ごめんねナルちゃんまたね~!」

走り出した弟達を追ってスイも走り出す。俺への挨拶を優先したとはいえ、足の長さに圧倒的な差があるからすぐに追いつくだろう。

「ふぅ……ごめん、お待たせマイスウィートハニー達」

「別に待ってはないですけど」

「おもちって本名かな~?」

「流石にあだ名だろ。多分なんか……家茂とか、そんなんだよ」

「どこの十四代将軍って感じ~!」

「どこのってそりゃ徳川さん家だよ。ってこんなふざけた話してないで、俺達も帰ろう。コンちゃんの御加護の効き目が切れないうちにな」

シュカとサンとはスーパーへの分かれ道で別れ、他の彼氏達とは一緒に駅に向かった。駅まで来ると浴衣を着ている人は途端に減る、何だか目立っている気がして恥ずかしかった。
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