冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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花火の感想様々で (水月+ノヴェム・ヒト・リュウ・カンナ・シュカ・レイ・ミタマ・サキヒコ・ハル・サン)

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長いロープから垂れ下がる無数の花火に火が付けられていく。次第に白く輝く火花が散り始める。

「ノヴェムくん、始まったよ」

腕の中の幼子を抱え直し、スマホを構える。全ての花火への点火が終わり、火花が地面に降り注ぐ。滝のようだ。横にズラっと並んでいるから、まさに世界一の大滝ナイアガラのようだ。実物見たことないけど。

《わぁ……ん? あっ、色変わった、お兄ちゃん色変わったよ!》

ノヴェムがはしゃぐ。火花の色が変わり始めたのだ、白からオレンジへ、オレンジから黄色へ……点火の順番と同じように端から波打つように色が変わる。

「花火の色変えるんはストロンチウムとかナトリウムが定番やね。キラキラさせたいんやったらマグネシウムとかアルミニウム入れるんよ、派手に光りよるからなぁ。ちなみに今の……えー、緑色か。多分バリウムか何かやと思うねんけど」

「うるさい」

「ナイスっすシュカせんぱい。風情がないっすよね」

早口で花火について語り始めたリュウはすぐにシュカに殴られ、黙らされた。

「青くなった! すごいねぇ、見てる? ノヴェムくん。色んな色の花火あるけど、何回も色変わるのはちょっと珍しいよね」

「楽しんでいただけているようで。高値で買った甲斐がありましたね」

美しい花火にはしゃいでいると、ぬっと現れたヒトが得意げな顔を見せた。やはり色が変わる花火は単色のものより高額らしい。

「ヒトさん、お仕事終わりました?」

「隙間が出来ました。一緒に見ましょう」

隣に並んだヒトは俺の腰を抱いた。

「あ……ヒトさん、嬉しいんですけど、バレちゃいません?」

「花火中に他人のことなんて見ませんよ」

花火の光で暗闇が強調されているし、この人混みで他人の腰辺りを見るのは難しいだろう。組員達は花火を近くで見ているし、まぁ、大丈夫か。

「……あなたが子供を抱いているの、いいですね。今の邪魔なだけの妻子なんてもういらない……あなたとの子供が欲しかった。どうしてもっと早く生まれて、もっと早く私を見つけてくれなかったんですか? もっとずっと早くに出会って、私だけを見つめて、雌雄の常識を覆すほど私に注いで、孕ませて欲しかった……なんて、思ったりして。ふふ」

耳元でボソボソと語られた内容は凄まじいものだった。声もだ、縋るような婀娜っぽい声、たまらない。

「ヒトさん……ダメでしょう? こんなところでそんなこと言っちゃ……俺今ノヴェムくん抱っこしてて、前屈みになれないのに」

勃ってしまった。ギンッギンだ。

「…………また今度、生でしましょ。直にあなたを感じたい……予定の調整、お願いしますね」

また煽りやがってこの妻帯者が……!

「おにーちゃ、おにぃちゃ、はなび、あかいろ」

「ん? うん、赤色だねぇ。好きなの? 赤で終わり……かな? 端っこ止まってきてるね」

「おわりー?」

「うん、終わり。最後までしっかり見なきゃ」

「私は花火よりも花火に照らされる鳴雷さんの方が綺麗で見応えがあると思います」

「俺の顔なんていつでも見れるでしょう?」

「七色にキラキラ輝く瞳はそうそう見られませんよ」

七色に輝く……花火の光の反射か?

「花火が終わったら片付けをしなければ。私はそろそろ行きますね。それでは、また後で」

緩く手を振りながらヒトが去っていく。端から消えていき幅を失っていく花火の滝に視線を戻し、これまでの勢いを失いぱらぱらと落ちる火花を愛でた。噴射するような光もいいけれど、まばらな方が俺は好きだ。個々の光が際立っている気がして。

《終わっちゃった》

最後の一粒が地面に落ち、消える。一秒たりとも地面に残ることのないその様は、まるで地面に吸い込まれたようにも見えた。

「おわったっちゃね、おにーちゃ」

「ちゃった、かな? 逆だよ。ふふっ……うん、終わっちゃったねぇ」

花火の弾ける音ばかり聞こえていた耳に喧騒が戻ってくる。祭り中の活気のあるものではなく、落ち着いた声色の「花火終わったし帰ろっか」なんて内容の言葉。寝てしまった子を抱えた大人の姿もチラホラ見られる。

「はぁー、終わった終わった。思たより派手でよかったなぁ」

「い……ぱい、色、変わ、て……きれい、だった」

「単色だと思ってました」

「ビールぶっかけられた時は来なきゃよかったとか思ったっすけど、来てよかったっす!」

彼氏達はワイワイと感想を語り合っている。

「流石ミタマ殿、花火を浴びるなんて考えつきもしませんでした。素晴らしい光景でしたね」

「霊体化しとれば当たらんし熱くもないからのぅ。ワシ花火浴びながら歩くより寝転がって見上げる派なんじゃが、さっちゃんどっちじゃ?」

「私も降り注ぐのを見る方が……花火の中を通ると目の前がただただ眩しくて、よく分からなくて」

ミタマとサキヒコは幽霊っぽい楽しみ方をしたようだ。

「あんなに色が変わるとはなぁ……面白かった。撮っときゃよかったよ」

「私撮ってたんで後でグルチャに送りますよ」

「助かる。よくノヴェムくん抱いたまま撮れたな……っと、そうだ、荒凪くん、どうだった?」

「熱い、やだ。でも、きらきらきれい。すごかた」

「結構花火の熱感じたよな。花火気に入ったか? 夏場はスーパーとかコンビニでも売ってるから、水月にねだって買ってもらえ」

言われなくともそのつもりだ。しかし場所はどうするか、俺の家の庭か? 花や草を育てている訳ではないからそれらへの悪影響は別にいいけれど、煙だとかで隣近所とトラブルになったら嫌だしなぁ。河川敷や公園も勝手に花火なんてすれば補導対象だろう。

「みっつ~ん! ただいまっ。やばかったよ花火の隙間ぁ~、すっごい暑いんだけどね、両サイド花火ですっごい綺麗だった! 光の道って感じぃ~!」

「暑いしバチバチうるさいし火薬臭いし、何がいいのかよく分かんなかったよ」

アルミブランケットを脱ぎ捨てて戻ってきたハルとサンの感想は対照的だ。もっと詳しく彼氏達の話を聞きたい、鈴カステラでも買ってつまみながら話をするとしよう。
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